東野さやかのレビュー一覧
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知能の高い水族館のミズダコと、そこで夜間清掃に従事する70歳老婦人。心温まる物語でした。
次々と身内を亡くし孤独な老女のトーヴァ、家族愛を知らず自暴自棄なバンドマンのキャメロン、そしてミズダコのマーセラスを主に、物語はマーセラスとトーヴァの章に、キャメロンの章が加わり、三者の章が繰り返し進みます。
構成の妙で、トーヴァとキャメロンの章が3人称、マーセラスの章だけ1人称で語られています。マーセラスの知能の高さは、(最初は)読み手のみぞ知る、なんですね。
章が進むごとにマーセラスの行動が意味をもち、マーセラスの思考が徐々に伝わり、驚くべき秘密が明かされていく過程が面白いです。
また、タコと人間の友情という、ファンタジー寄りな設定ですが、一方で登場人物たちはそれぞれ孤独・虚しさ・寂しさを抱えており、十分過ぎるほどリアルに描かれています。さらにタコも自らの寿命を心得ているので、類は友を呼ぶ? 両者の交流が深まるほど胸に迫るものがあります。
それにしても、マーセラスの観察眼が凄く、思考があまりにも道義的(あ、これは人に使う言葉か?)で…必見!じゃなく必読です。タコとの友情を背景に、孤独からの恢復と家族の再生を描く癒しの物語でした。 -
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アメリカの作家ブレイク・クラウチのSFスリラー作品『ダーク・マター(原題:Dark Matter)』を読みました。
ブレイク・クラウチの作品は7年くらい前に読んだ『パインズ―美しい地獄―』以来なので久し振りですね。
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問題作『パインズ』著者の最新刊!
見知らぬ男に殴り倒され、気を失ったジェイソン・デッセン。
目覚めると、彼の人生は一変していた……。
ソニ・ピクチャーズ映画化
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2016年(平成28年)に刊行された作品です。
大学教授のジェイソン・デッセンは、若い頃、物理学者として将来を期待されていたが、結婚して家庭を持つことを選び、研究の道は諦めて二流大学で教えていた……愛する妻ダニエラと息子チャーリーとともに幸せに暮らしており、自らの決断に後悔はしていないけれど、別の道を選んでいたらと 考えることはあった、、、
ところがある日、何者かに拉致され薬を注射されて気を失い、目が覚めるとそこでは自分は結婚しておらず、画期的な装置を発明して物理学者として成功を収めている世界だった……そして、妻ダニエラも独身で、新進気鋭の芸術家として活躍していた。
”もう一つの人生"に連れ去られたジェイソンは、本当の家族の元に戻り、最も恐ろしい敵……つまり自分自身から家族を救うため、苦難の旅に出る……。
パラレルワールドを流離うことになった男ジェイソンの物語であり、ジェイソンとその妻ダニエラ、息子チャーリーの愛の物語でもありましたね……パラレルワールドの自分が別のパラレルワールドへ行く装置を造り、その世界の自分と入れ替わり、人生そのものを入れ替えようとする、、、
怖いなー そして、もっと怖いのは様々なパラレルワールドから集まってきた数十人の自分が同時に存在するシーン……絶対、経験したいくないですよねー 過去の自分の判断により分岐した別の世界なんて、見たくもないし、知りたくもないけど、SF作品のテーマとしては面白かったですね。 -
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アメリカの作家「ジョン・ハート」の長篇ミステリ作品『川は静かに流れ(原題:Down River)』を読みました。
「エラリー・クイーン」、「ヘンリー・スレッサー」の作品に続き、アメリカのミステリ作品です… 「ジョン・ハート」の作品は3年近く前に読んだ『キングの死』以来ですね。
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「僕という人間を形作った出来事はすべてその川の近くで起こった。
川が見える場所で母を失い、川のほとりで恋に落ちた。
父に家から追い出された日の、川のにおいすら覚えている」殺人の濡れ衣を着せられ故郷を追われた「アダム」。
苦境に陥った親友のために数年ぶりに川辺の町に戻ったが、待ち受けていたのは自分を勘当した父、不機嫌な昔の恋人、そして新たなる殺人事件だった。
アメリカ探偵作家クラブ賞最優秀長篇賞受賞作。
解説:「北上次郎」。
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2007年(平成19年)に発表された「ジョン・ハート」の第2作で、同年のアメリカ探偵作家クラブ賞(エドガー賞)最優秀長篇賞を受賞した作品です。
アメリカ・ノースカロライナ州… 「アダム・チェイス」は5年ぶりに故郷に戻ってきた、、、
「アダム」が故郷から出た理由は、5年前に発生した殺人事件の犯人として告訴され裁判の結果無罪(濡衣だが)となったものの、目撃証言をしたのが自分の継母「ジャニス」であり、継母の証言を信じた父親「ジェイコブ」との間にも溝ができたことが原因だった… 親友「ダニー・フェイス」からの助けを乞う電話で故郷に帰るが、原子力発電所の建設計画から土地が高騰し、建設推進派と反対派で町は緊迫している。
大農園主である「アダム」の父「ジェイコブ」は土地を売ろうとしないため様々な嫌がらせや事件が起こっていた… そんな中、ついに殺人事件が、、、
父親・継母・双子の義弟妹「ジェイミー」と「ミリアム」、兄妹同然に育った「グレイス」、5年前故郷を去る時に分かれた元恋人「ロビン・アレグザンダー」、親友「ダニー」… 犯人は誰なのか、警察の捜査とは別に「アダム」は動く。
しかし、事件は意外な方向に展開する… 愛情、友情、信頼、裏切り、嘘、憎しみ、信頼、赦し、、、
5年の歳月を経て次々と直面する複雑な人間関係… 「アダム」は事件を解決に導くことはできるのか、そして家族を守ることはできるのか……。
殺人事件の謎を追うミステリなのですが… 事件とあわせて「グレイス」の出生の謎も解きながら、家族の在り方や絆を問いかけてくるヒューマンドラマでもありましたね、、、
結局、血を分けた者同士しか理解し合えないのかなぁ… 考えさせられましたね。
主人公の性格にはやや感情移入し難い部分もありましたが… 翻訳も良いのか、600ページ近いボリュームにしては読みやすかったです。 -
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『川は静かに流れ』以来のファンで見つけると読んでいるジョン・ハートの作品。主人公は犯人を射殺し少女チャニングを救出したものの、弾倉の18発をすべて二人の犯人に発砲しており拷問や処刑の疑いを持たれ、犯人が黒人の兄弟だったために連邦警察の捜査対象となって停職中の白人刑事エリザベス。相棒の刑事にも心は許さず、仲間より事件の被害者や遺族に共感し寄り添うタイプ。エリザベスには少女時代の命の恩人で憧れの刑事がいるのですがその刑事エイドリアンは殺人の罪で有罪となり服役中、状況証拠だけでなく物証もあるなかエリザベスだけは無罪を頑なに信じておりそのことでも警察内で孤立しています。読み始めてしばらくぶりだったのもあり、冒頭から複雑な事情を抱えた女性刑事が登場して、もしかしてシリーズものの途中から読んでしまったか?と不安になってしまいました。エイドリアンが殺人犯として収監されていた刑務所から13年ぶりに釈放されたその日に、遺児であるギデオンが母の仇を討とうと父親の拳銃を盗みエイドリアンを襲おうとして逆に大けがを負います。自分の問題だけでも手に負えない問題を抱えながらエリザベスはチャニングとギデオンを守ろうとします。。。と、概要を書こうとしても無理な複雑な設定を、ぐいぐい読ませる筆致の力強さは健在でした。冒頭はいきなりの展開にとまどいながらも中盤までくればいったいどうなるのかと読むのがもどかしい感じに。とはいえ終盤には犯人はこの人かもね、と推測が出来てしまい、推測は出来るものの納得するには至らず、それでも設定や構成はしっかり考えられており流石なのですが、これはもしや海外版の辻村深月さんなのではないか、と思いついてしまって、ちょっと残念な気持ちになりました。もう一作品くらい読んでみて、今後も追いかけたいかどうか決めようと思います。
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あ~、やっぱりジェームズ・ディーンだ~。
頭の中で、主人公アダムが「エデンの東」「ジャイアント」などのジェームズ・ディーンとして映像化されてしまう。
神の存在を問うような運命、大土地所有に絡む名家と住民の根暗な物語は、アメリカ人がホント好きそう。
家族への疑心暗鬼と、青春の苛立ち、煮え切らない、カッコつけ
金持ちの坊ちゃんの中途半端な自暴自棄
人の話を聞かない、人にうまく伝えられない頑固で弱い父
ネガティブで暗い後妻とその子供たち
金と名誉とやっかみの入り混じる住民たち
川を題名とした小説はどうしてこうも暗いのか
「ミスティックリバー」デニス・ルヘイン
「クリムゾン・リバー」ジャン・クリフトフ・グランデ
「深い河」遠藤周作
後半は打って変わってアダムが探偵役として活躍するが、相変わらず危なっかしい。
不必要とも思えてしまうほど込み入った人間関係が徐々に明らかになっていき、最後の最後に悲劇とともにくっつく。
アダムが最初から知ってることを刑事に話していたら……物語にならないか。
一人称の小説たけど、ちょっと主人公の言ってること疑ってたし。
やっぱり、この人の小説は、最後まで読んで初めて報われるな~。
……気合、要るよ。