ハコヅメ読むなら読んだ方がいい、というコメントや作者への取材記事を読んで購入しましたが、うん、間違いなく読んだほうがいいです。
まさか源の実父がなくなった土砂崩れ事故の原因となった避難しなかったおばあさんがカナの曾祖母で、源サイドから見ると「なんですぐに避難しなかったんだ!それがなければ皆が苦しまずに済んだのに‥!」と感じるけど、それを原因にカナの実家が営んでいた建設会社は村八分にあい祖父は自殺、父母はそれぞれ別の人と消えてしまい、カナは祖母との暮らしに。ここでカナを置いていく感情がよく理解できないけど、そのおばあさんの血が流れてる存在をもう近くに置いておきたくなかったのかな‥
そしてグレてしまうカナを救ったのは防犯パトロールのおじいさん‥そう、源実父のお父さん。様々な話をしてくれるなかで警察官を志した‥が、その裏には「原因となったおばあさんの家族を責める世間の正義」というマジョリティに傷ついたカナが警察という絶対的な正義の立場に立ってみたかった‥という悲しい理由が。
そして警察学校に入るも、優しさで差し出される手には仲間を感じられなかった‥という。これは肩を並べて走ることもできない劣等感から対等な関係を築けなかった、ということなのかもしれない。でも秘匿捜査官として才能を開花させたはずなのに隣の芝生は青かったまま‥だったのか、劣等感と仲間ではない認識は変わらなかったんだね。
そして起きてしまう殺人事件。これは本編を見続けている人なら言葉を失うと思う‥あれだけ繰り返し登場させておいて、モブキャラに身近さを持たせた上でこれは、登場人物の心情に読者を近づけたテクニックだなぁと。
事件を追う番記者は事前にトラブルがあった二人への警察対応に問題があったのでは、という正義をかざして取材を行い、近隣住民は自分たちの街を守るという正義で役に立たない警察を排他的に扱い、警察は必ず事件を解明するという正義で操作を続ける。自分の対応に過ちがあったのでは、と責め続けるカナ。フォローに入る西川、しかしすでに西川の限界は超えていた‥
難航する捜査、世間の正義に押し潰されそうになるカナはついに警察官としての裏切りである「拳銃自殺」を図る‥そうか、これが本編で描かれた「ユダの裏切り」だったのか‥想像していなかった裏切りの形で驚いた。山田のおかげでなんとか未遂に留まったが、そこまで追い詰められていたんだね。
その後、カナは自らがかけた言葉から被害者の足取りを予測し犯人逮捕につながることとなった‥が、西川の死や警察官としての裏切りを経てカナは警察官を辞めることを決意。カナを秘匿捜査に任命した係長(?)あっさり認めたのは優しさか、それとも使い捨てとしてもう価値がないと感じたからか。意外と冷酷な人が多いハコヅメだとどちらだかわからない‥
そして警察を飛び出したカナは、防犯パトロールのおじいさんから教えてもらった選択肢の中から海外の人々の選択肢を広げることにつながるような活動を始めた‥
結局警察官のときは仲間という絆という鎖に縛り付けられていたけど、ハコを出て(=アンボックス?)その絆と繋がっているんだろうなぁと思いました。
しかし表紙のカナと山田、あくまで推測ですが背を向けるかつ山田は17巻の表紙と繋がって藤や源の方へ向かっていて、かつその集団とは背を向けている=秘匿捜査、仲間に感じられない、警察との別れといろいろな意味を持たせていたのね。
この漫画、本当にすごいしどの回の何気ないやり取りが先々に繋がっているかわからないのがすごすぎる‥