小竹由美子のレビュー一覧
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帯で西加奈子さんとブレイディみかこさんが激賞していたので読んでみた。
宗教と世俗との折り合いや人種の違いといった本書のテーマとなる問題はなじみがないが、悩みの果てにトリッキーな行動を取り、自分を曲げないのでちっとも成長しない登場人物たちは、面倒ながらも愛せる。
歴史上は「馬鹿者」「臆病者」と思われているマンガル・パンデーをサマードはものすごく信じていて、一冊だけども彼を「独立への基盤」と記載した本もあることが、どんな人間でも誰かは受け入れてくれるということを象徴してるのかな?と思った。
「アーチー、アーチー、アーチー、アーチー」
「ミスター・ヒーロー」
「君はどうもわからん男だなあ、アーチー」
「ミスター・ヒーロー」
といったやり取りや、
「ここで費やされた時間÷ほかの場所で有意義に過ごせたかもしれない時間×楽しさ×マゾヒズム=自分が常連である理由」
などの言い回しが、ザ・海外文学のユーモアという感じでとても好き。
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Posted by ブクログ
登場人物は33歳の母・マリゴールドと、13歳の長女・スター、10歳の次女・ドル。3人は生活保護をもらいながら、安い木造アパートに暮らしている。
恋多き無職のアル中である母の奔放っぷりに、しょっちゅう振り回される娘たち。
聡明で美人なスターはほとんどの家事と、マリゴールドのことをただ無邪気に慕うドルのお世話を担ってくれていて、酷い生活環境でも姉妹仲良く寄り添って過ごしていた。
ところがあるとき、マリゴールドがスターの実父であるミッキーを連れ帰ってくる。優しく、お金持ちで、自分の存在を大いに喜んでくれる父親の登場に舞い上がるスター。そんな姉を、羨望とやっかみと寂しさの眼差しでみつめるドル。そして、ようやく再会できた最愛のミッキーを二度と失うまいと、必死さを空回りさせどんどん精神を病んでいくマリゴールド。
やがてスターは、ミッキーのもとで暮らすために家を去ってしまい——。
読みやすい児童書ながらも非常に重たいテーマを扱っていて、全員の行先を、最後の最後までハラハラして見届けることとなった。
「あんな人、大っきらい」スターは小声でいった。まるで、はきだすように。
「そんなことないでしょ」わたしはあわてていった。
「ううん、きらいだよ」
「大好きなんでしょ」
今で言うヤングケアラーであるスターと、まだ子供のままでいられるドルのこのやり取りの対比に、胸がずっと苦しい。
子供騙しの安易な解決は用意されない。さまざまな困難や不安に直面しつつも、登場人物たちはどこまでも生き生きとしていて、切なくあたたかい物語だった。
ちなみに私はマリゴールドと同い歳なうえに、娘たちの年齢までほぼ一緒なのもあって、まったく他人事とは思えず本書を手に取った。
ジャクリーン・ウィルソンさんの描く世界に夢中になっていた頃より二十年以上が経ち、いっぱしの大人になってから読んでもとても素晴らしい作品だった。いま読めてよかった。
ずいぶん昔に刊行されたものの復刊であるが、訳者あとがきによれば、なんと昨年この続編が出版されたらしい。ドルが成長して33歳となり、相変わらずのマリゴールドに尚も手を焼きつつ、タトゥーデザイナーとして働いているのだそう。
日本語訳がでることを望むが、それでもおそらく当分先のはずなので、いっそ原書で読んでみたいと思う。 -
Posted by ブクログ
アップル島(マラガ島)に住む少数の住民が一定の秩序を保ちコミュニティを形成して平和に暮らしていたが、所属のメイン州政府より強制的に退去させられる過程が表現されている。
本土に迷惑をかけている訳でもなく自由が尊重されるコミュニティを、本人達が納得いく説明もなく消滅させられる抗えない不条理、エデンと称される園の行く末が住民に寄り添う視点で書かれている。
著者が出身のアメリカのマサチューセッツ州の隣の隣、メイン州キャスコ湾にあるマラガ島(Malaga Island)が舞台、史実に沿うストーリー。
20世紀後半からはこのコミュニティの強制消滅は、間違った政策だったと認識され、後に州政府自身が公式誤りを表明したらしい。
アメリカの読者はこの本により過去の誤ちを認識する機会となり、フィクションだが良心の呵責の念を覚える事になり、それが評価されたのではないか。
マラガ島の最初の住民はアメリカ独立間もない頃、その住民のルーツはアイルランドのゴールウェイ、また分中に登場する女中の出身も同じアイルランドの南西沿岸、ディングル半島沖合のグレート・ブラケット島出身。移民の歴史上、メイン州にアイルランドからの移民が多かったのだろう。
アイルランドの子守り唄の「ショヒーン・ショ・ホー」(Seoithín, seo ho)をYouTubeで聴くと歌詞は分からないが何か癒される思いがする。 -
Posted by ブクログ
短編の名手。著者近影から、優しげで快活そうなおばあさんのイメージがある作家。この方の短編集は、なぜか癖になる。起伏の少ないストーリーだが、繊細な文章をしっかり読んでいかないと、物語はいつのまにか大きな転換を迎える。その瞬間を見逃さないように、注意深く読む。ヒタヒタとした読書感が、癖になる。
いくつも気になる話はある。どれも心が少しだけきゅっとなる、居心地の悪さがある。なのに次の話も読みたくなる。癖になる。好き。
ただ…読書の合間に、作家のことを調べていたら、再婚後の次女への、いまでいうネグレクト?のトラブルがどうやらあったらしい、ということを知ってしまった。夫にも依存気質だったか。良い作品を生み出す裏に、不安定な感性やパーソナリティがあったのかもしれない。少しだけ、続きを読み進めるのを躊躇するようになってしまった。
作家の実像なんて、調べるべきではないな。物語は物語で、一人歩きすべきだな。