あらすじ
成長したアーチーの娘・アイリーとサマードの双子の息子・ミラトとマジドは、遺伝子工学者のチャルフェン一家と関わり、生命倫理にふれる研究をめぐる問題の渦中へ……。
移民家族が直面する悲喜劇を知的でユーモラスに描く、ジャマイカ系イギリス人作家の衝撃作。カリブ海やインド亜大陸からヨーロッパにわたる壮大な家族の物語を背景に、歴史、信条、遺伝子などさまざまな差異を抱えて混沌の街ロンドンで生きる人々を描く。分断と混沌の深まる時代に希望の光を放つ、21世紀の必読書。全2巻
ブレイディみかこさん推薦!
「この本、いちおう社会派で、すでに古典と呼ばれているんです。
こんなにヤバくて笑えてぶっ飛んでるのに。
繚乱と咲く、移民たちのサーガ! ストリートの歴史はなんと猥雑でカオスなことか。
多文化共生の諸問題をごった煮にしておおらかに笑い飛ばす、才気煥発な本である。」
西加奈子さん推薦!
「これはすべての呪われた、そして祝福された人間の物語だ。
きっと100年後も、200年後も読み継がれるだろう。
人間がどうしようもなく、抗い難く、救い難く、人間でしかないことを、こんなに面白おかしく、鮮やかに、完璧に書かれた小説がこの世界に存在することに感謝したい。
20年前に誕生したこの傑作を、これから初めて読むことが出来る人に嫉妬する。そう思っていたけれど、何度目だって衝撃は変わらなかった。いや、増した。著者が描いたこの世界に、私たちは近づけているのだろうか。」
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
下巻になると上巻の二人の娘や息子が主人公になる。ジャマイカやベンガルの文化的背景だけでなくイギリスの文化の影響、青春の迷いや欲望、麻薬やアルコールなど様々な小道具で話が進む。何に向かって進むかというかより、どのように物事は展開するのかという微分に重きが置かれているように思えた。20代前半に色んな文化的背景を持つ様々な登場人物の心理をこれほどまでに巧みに描いた筆力に脱帽。
Posted by ブクログ
下巻では、上巻で活躍したアーチー、サマードの子供たちが、誰一人親の望むようには成長せず、関係し合い、主張して、対立する。
本書のキャストが全員そろってもつれこむラストまで、それぞれ全く歩み寄らない。全員とんでもなく生きづらそうではあるものの、人間臭さが魅力的で、多様性について考えさせられる。
最終章のアーチーに、結局人を繋ぐのは、理屈を超えた本能的な、あるいは偶然の結果による、人を助ける行動なのかなあと思う。上巻の冒頭で命を救われたアーチーが、下巻の最後に人の命を救う展開が美しい。
Posted by ブクログ
恐らく世界的な名作。現代をこれほどうまく捉えた小説は少ないだろう。話の内容は若干付いていけないほど混乱しているが、作者の主題がハッキリしているので読んでいて迷わない。読後の印象はサルマンラシュデイの真夜中の子供たちと、かなり似ている。それだけの傑作だと思う。
Posted by ブクログ
バングラデシュ系移民とロンドン下町育ちの2人のオッサンの数十年にわたる友情を軸に,それぞれの妻(ヒンズー系とジャマイカ系)と息子,娘たち,白人(ユダヤ系)とその家族,イスラム系過激派,過激動物愛護団体が絡み合い,最後に1992年の大晦日に臨界点に達する.
様々なルーツを持つ人達は決して理解し合っていないのだが,それでも友情が続いて,「わかり合わなくてもわかり合える」ということがテーマになっているように思う.
同じインド系でもバングラデシュ系(イスラム)とデリー生まれ(ヒンズー)は違っており,そのあたりの微妙なすれ違いも描かれているようなのだが,残念ながら自分はそれほど深く理解していないので,作者の表現したことを100%理解しているとはいいがたい.
Posted by ブクログ
ここ数年読んだ本の中で、最も置いてけぼりを喰らってしまった作品となりました(苦笑)
様々な宗教や、科学主義、動物愛護主義などのイデオロギーが話の中に入りまじり、さらには登場人物たちの人種間の断絶、移民、移民2世の人々たちのアイデンティティの揺らぎや、寄る辺なさが登場人物の行動や思考に影響し、物語はさらに混沌とした中に突き進んでいきます。
いうなれば闇鍋に近い感覚。著者はものすごく頭がいいのか、上記したようなテーマが、物語や登場人物たちの思考や生き方にどんどんと注ぎ込まれていくので、鍋の色も味も混ざり合い、気が付けば理解しきれないものになってしまった、そんな気持ちです。
話としては文化や宗教といった教養や、小説の舞台であるイギリスの雰囲気を知っていれば、もっと読み解けたし、たぶんところどころで笑えたのではないかなと思います。そういう意味で、自分にはちょっと難しい小説でした。
ただこの小説が現代を反映しているように感じられることも確か。
宗教や人種、移民と移民の受け入れ国の国民の間での対立は、時代を経てもなお燻り続け時に爆発します。
さらにコロナによってワクチンと反ワクチンというような科学をめぐっての対立も、より鮮明に映し出されるようになりました。
理解できたとはとても言えないけれど、これほどまでに、異文化が混ざり合った小説が世界に必要とされているということは、ひしひしと感じました。