小竹由美子のレビュー一覧
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社会問題を扱った作品は興味があってよく読むものの、なんとなくリズム感が合わなくて、しっくりくる本ではなかったというのが正直なところではあるが、まざまざと苦悩や不条理を訴える内容ではないけれど、確実に存在するそれらが持つ重いものが詰め込まれている本だと感じた。
「懸命に努力するものだけが成功する」 ー 若い女性が権力を持つ役職のある男性に、能力ではなく恋愛対象の女と見られるか、それに加えてマイノリティではないかが出世が決まる世界を再認識し、やるせない気持ちになった。
「わたしたちはかつてシリア人だった」 ー 「難民が国家にとってどれだけの負担になるか、利益になるかという研究はおかしい。手を差 -
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ネタバレシリアから子供の頃アメリカへ移住してきた著者による、シリア系移民を書く短編集。アメリカ社会において白人でも黒人でもないアラブ人の寄る辺なさが印象的だが、単純な構造の差別を書くのではない(ので出版社がなかなか見つからなかったらしい)のが面白いと思った。
静かな文章の中に静電気のように漂う怒りを感じるが、それはいったい何に向けての怒りなのかはあいまいだ。シリア系移民たち自身がイスラム文化にも帰属できず不信仰なふるまいをしていたり、シリアのアサド政権下でいい思いをしていた過去があったり、自らも差別をする姿もありと複雑な内容で、彼らの出自は文章中でも隠すように回りくどく示される程度だったりする。自分た -
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バングラデシュ系移民とロンドン下町育ちの2人のオッサンの数十年にわたる友情を軸に,それぞれの妻(ヒンズー系とジャマイカ系)と息子,娘たち,白人(ユダヤ系)とその家族,イスラム系過激派,過激動物愛護団体が絡み合い,最後に1992年の大晦日に臨界点に達する.
様々なルーツを持つ人達は決して理解し合っていないのだが,それでも友情が続いて,「わかり合わなくてもわかり合える」ということがテーマになっているように思う.
同じインド系でもバングラデシュ系(イスラム)とデリー生まれ(ヒンズー)は違っており,そのあたりの微妙なすれ違いも描かれているようなのだが,残念ながら自分はそれほど深く理解していないので,作 -
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ここ数年読んだ本の中で、最も置いてけぼりを喰らってしまった作品となりました(苦笑)
様々な宗教や、科学主義、動物愛護主義などのイデオロギーが話の中に入りまじり、さらには登場人物たちの人種間の断絶、移民、移民2世の人々たちのアイデンティティの揺らぎや、寄る辺なさが登場人物の行動や思考に影響し、物語はさらに混沌とした中に突き進んでいきます。
いうなれば闇鍋に近い感覚。著者はものすごく頭がいいのか、上記したようなテーマが、物語や登場人物たちの思考や生き方にどんどんと注ぎ込まれていくので、鍋の色も味も混ざり合い、気が付けば理解しきれないものになってしまった、そんな気持ちです。
話としては文化や宗 -
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なんというか……、とにかくカオスだなあ、という印象の強い上巻でした。宗教観や異文化が登場人物の背景にあるのですが、その背景ゆえの思考や行動がなかなかこちらの理解が及ばないというか、ぶっ飛んでいるというか……。
ただ、それゆえに物語の展開が予想できない上、登場人物の異様な行動にも一種のシュールさが生まれて、なんだか上手く説明できないけれど面白いし、何より日本の小説では味わえないような読み心地が味わえます。
特に面白かったのがバングラデシュ出身でムスリスのサマード。イギリスにやってきて家族を養いながらウエイターをする彼ですが、敬虔なムスリスゆえの気苦労が多く、特に女性関係で悩む姿はなんだか可笑 -
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メキシカン文学者の人生を描くアメリカ小説。
久しぶりだったので、いきなりアーヴィングワールドの洗礼を浴びました。
主人公フワン・ディエゴの呼称がダンプ・キッド、少年、ダンプ・リーダーと最初の10ページ足らずで多岐にわたり、父親的存在のリベラもダンプ・ボス、エル・ヘフェなどと呼ばれることから、何が誰を指すかに神経を使いました。
その上、聞きなれない地名と人名がごっちゃになってしまって、何度も読み返す羽目になりました。
物語はアーヴィングらしく、現在と過去が入り混じりつつも核心に迫っていきそうな感じは衰えなしです。
執筆はその前だと思いますがメキシコ大地震に言及するところがあったり、心臓病に関す