牧久のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
丸の内の三菱UFJ信託銀行の地下1階のレストランのレジに飾ってあったので手に取った。独特の苗字と「氏」の字が入った人物の伝記。
「許斐先輩のご先祖様は破天荒な方だったらしい」という話はチラホラ聞いていたが、その通りの本だった。
著者は日経の記者。ボリュームある文章だが、新聞記者ならではの整理された文体なので読みやすい。
昭和初期の動乱期の物語。226事件の首謀者の北一輝のボディガードを経て、満州にわたり民兵組織の隊長になる、さらに上海で帝国陸軍の別働隊である特務機関をつくる。終戦後は政治活動とは袂を分かち、実業の世界に。現在のペニンスラある日比谷の土地(堀を瓦礫で埋め立てた土地)に日本最初のトルコ風呂「東京温泉」を設立する。
当時の政治情勢の背景説明に加えて、日本軍が中国大陸での活動資金を捻出するための麻薬取引の実態も詳述。公文書や極東軍事裁判の証拠文書には三井物産などの実在の企業名や、後の政治家が登場し驚愕する。例えば、大平正芳が課長を務めていた昭和14ー16年の「興亜院」という役所が作った「支那阿片受給計画表」など。
読み始めてから1年以上かかった。 -
Posted by ブクログ
昭和前半、動乱時代の日本の巨悪や巨怪のノンフィクションを好んでよく読む。正力松太郎、里見甫、児玉誉士夫、笹川良一等々。この本もこの係累に属するものだが、なにせ知人の実父の話だからますます興味深く読めた。
本の主題は上海やハノイで陸軍の長勇から依頼を受けて特務機関を作った許斐氏利の生涯を描くものだが、資料的に乏しい為か許斐氏利以外の昭和前半の特務機関がなぜ生まれどういう機関が存在したか、またその特務機関と密接な関係を持った日本軍による中国大陸での麻薬取引の実態、許斐氏利と関係の深かった大川周明のこと、長勇と皇道派、統制派との関係などなど、日本陸軍末期の実態を深く知れる内容になっているのが非常によかった。
福岡で武術を極め、東京でテロを起こし、大陸に渡って馬賊の隊長、そして特務機関長として謀略の限りを尽くし、沖縄戦で九死に一生を得、戦後派はトルコ風呂経営者になる、、こんな波乱万丈な人生、いまの時代に後れるものだろうか。。実話なはずだが、ある種のファンタジーを感じてしまう一作である。 -
Posted by ブクログ
ベトナム独立にこんなにも深く日本人が関わっていたとは、あまり知られていないのかも。ベトナム好きとしては知っておきたい歴史。
革命家ファン・ボイ・チャウに担ぎあげられて日本に渡り、元首として帰国することを待望されながら、歴史に翻弄され失意のうちに東京で息を引き取った王族クォン・デ。天草から15歳でハノイに渡り、政商となり大きな影響力を持ち、民間からベトナム独立を支援した松下光廣。些細な行き違いで、歴史は大きく変わっていたのかも。
二人の人物を中心に物語が進むけど、内容が複雑とはいえ、ドラマチックさを持たせるためか、話が行ったり来たりしすぎてややこしかった。「後述するが、~~」「前述したように、~~」が多過ぎて、時系列でわかりにくい(+o+) 誰が何歳の時に、というのがイメージしづらかった。 -
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ネタバレ暴君
新左翼・松崎明に支配されたJR秘史
著者:牧 久
発行:2019年4月28日
小学館
松崎明という人物は、その世界では有名人というかかなりの“大物”だそうだ。僕は名前ぐらいしか知らなかった。
国鉄の労働組合と言えば、最大組織の国労(社会党)、鉄労(民社党)、動労(革マル派)、千葉動労(中核派)に大別され、JRへの分割民営化に際し、「闘う動労」を標榜していた動労が、もともと労使協調路線だった鉄労とともに賛成に回ったという知識ぐらいはあった。なぜ急にマスメディアが「過激派」と紹介し、警察が「極左暴力集団」と呼ぶ革マル系の動労が賛成に回ったのか、僕には理解できていなかった。その裏事情が450ページ以上にわたって詳しく紹介されている。著者は日経新聞出身のフリージャーナリスト。松崎明が死ぬまで、彼に関する報道はタブーとされ、あの週刊文春でさえもキオスクで販売拒否されるなど容易に手が出せなかったという。
動労の大転換は、松崎の方針によりなされた。労働争議で国鉄を解雇された彼は、動労の専従となり、委員長にまでのし上がっていたが、国鉄民営化前年に敵対してきた鉄労の全国大会に招かれ、解体を叫んでいた鉄労とともに民営化に際して「労使共同」を訴えた “コペルニクス転換”の演説を行った。彼は哲学者・黒田寛一とともに革マル派を創設したメンバーで、いうまでもなく共産主義革命を掲げる。それなのに、この頃には自民党機関誌「自由新報」や反共団体統一教会の「世界日報」などにもしばしば登場して、共産党や国労の批判を繰り広げた。
なぜコペ転をしたのか?
それは黒田寛一が説く「形勢不利な時には敵の組織に潜り込む」という戦略を踏襲したのだと著者は分析している。
国鉄改革において、改革3人組と呼ばれた者がいた。後のJR東海社長となる葛西、JR西日本社長となる井出(福知山線脱線事故で全国的な有名人となった)、そして、JR東日本社長となる松田。葛西と井出は松崎とは袂を分かったが、松田は以後もべったり。上司の住田とともに、住田―松田体制(JR東日本)と松崎との癒着が始まる。松崎は気に入らない幹部社員がいると、住田―松田ルートで平気で左遷させる、あるいは辞めざるを得なくしてしまう、そんな経営者をもあやつるドンとなった。
車はボルボやベンツ。ボディーガードをつかせ、ハワイに別荘2軒、国内にもマンション、別荘、別宅を持つ。しかし、体が弱まるとともに、徐々にその勢いは衰え、JR東日本側も彼を切りにかかる。そして、その死とともに彼の力は影も形も消え失せる。
北朝鮮の金正恩はちょっと別として、シリアのアサドや以前のスペインのフランコなど、やればできるのにどうしてずっと独裁させたままにするのか?やってみれば意外と簡単なのに、という気もするが、どうなんだろう。ましてや松崎明という軍事力を持たない独裁者。なぜ彼の死を待たなければ終わりにならなかったのか。ちょっと不思議でもある。