【感想・ネタバレ】特務機関長 許斐氏利――風淅瀝として流水寒しのレビュー

あらすじ

■戦時下は特務機関の頭領、戦後は実業人として、昭和を駆け抜けた男の軌跡。歴史の「闇」に埋もれた“怪物”がいま浮上する。保阪正康氏推薦!
日本一の柔道家をめざして福岡から上京するが、嘉納治五郎に講道館を破門され、右翼学生活動家として2・26事件で北一輝のボディガードを務める。軍人・長勇と義兄弟の契りを結び、戦時下の上海・ハノイで100名の特務機関員を率いて地下活動に携わる。戦後は、銀座で一大歓楽郷「東京温泉」を開業、クレー射撃でメルボルン・オリンピックにも出場した、昭和の“怪物”がいま、歴史の闇から浮上する。

[目次]
序 章 「許斐機関」との遭遇
第一章 許斐氏利の終戦
第ニ章 博多の暴れん坊
第三章 テロとクーデターの時代
第四章 大化会と二・二六事件
第五章 中国大陸へ
第六章 上海許斐機関
第七章 日本陸軍の阿片工作
第八章 「大東亜戦争」とハノイ許斐機関
第九章 大歓楽郷「東京温泉」
終 章 風淅瀝として流水寒し


<著者略歴>
牧 久(まき・ひさし)
ジャーナリスト。一九四一年、大分県生れ。六四年、早稲田大学第一政治経済学部政治学科卒業。同年、日本経済新聞社に入社。東京本社編集局社会部に配属。サイゴン・シンガポール特派員。名古屋支社報道部次長、東京本社社会部次長を経て、八九年、東京・社会部長。その後、人事局長、取締役総務局長、常務労務・総務・製作担当。専務取締役、代表取締役副社長を経て二〇〇五年、テレビ大阪会長。〇七~〇九年、日本経済新聞社顧問。著書に『サイゴンの火焰樹――もうひとつのベトナム戦争』(小社刊)がある。


※この電子書籍は株式会社ウェッジが刊行した『特務機関長 許斐氏利――風淅瀝として流水寒し』(2010年10月28日 第1刷)に基づいて制作されました。
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Posted by ブクログ

丸の内の三菱UFJ信託銀行の地下1階のレストランのレジに飾ってあったので手に取った。独特の苗字と「氏」の字が入った人物の伝記。

「許斐先輩のご先祖様は破天荒な方だったらしい」という話はチラホラ聞いていたが、その通りの本だった。

著者は日経の記者。ボリュームある文章だが、新聞記者ならではの整理された文体なので読みやすい。

昭和初期の動乱期の物語。226事件の首謀者の北一輝のボディガードを経て、満州にわたり民兵組織の隊長になる、さらに上海で帝国陸軍の別働隊である特務機関をつくる。終戦後は政治活動とは袂を分かち、実業の世界に。現在のペニンスラある日比谷の土地(堀を瓦礫で埋め立てた土地)に日本最初のトルコ風呂「東京温泉」を設立する。

当時の政治情勢の背景説明に加えて、日本軍が中国大陸での活動資金を捻出するための麻薬取引の実態も詳述。公文書や極東軍事裁判の証拠文書には三井物産などの実在の企業名や、後の政治家が登場し驚愕する。例えば、大平正芳が課長を務めていた昭和14ー16年の「興亜院」という役所が作った「支那阿片受給計画表」など。

読み始めてから1年以上かかった。

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2018年05月08日

Posted by ブクログ

昭和前半、動乱時代の日本の巨悪や巨怪のノンフィクションを好んでよく読む。正力松太郎、里見甫、児玉誉士夫、笹川良一等々。この本もこの係累に属するものだが、なにせ知人の実父の話だからますます興味深く読めた。

本の主題は上海やハノイで陸軍の長勇から依頼を受けて特務機関を作った許斐氏利の生涯を描くものだが、資料的に乏しい為か許斐氏利以外の昭和前半の特務機関がなぜ生まれどういう機関が存在したか、またその特務機関と密接な関係を持った日本軍による中国大陸での麻薬取引の実態、許斐氏利と関係の深かった大川周明のこと、長勇と皇道派、統制派との関係などなど、日本陸軍末期の実態を深く知れる内容になっているのが非常によかった。

福岡で武術を極め、東京でテロを起こし、大陸に渡って馬賊の隊長、そして特務機関長として謀略の限りを尽くし、沖縄戦で九死に一生を得、戦後派はトルコ風呂経営者になる、、こんな波乱万丈な人生、いまの時代に後れるものだろうか。。実話なはずだが、ある種のファンタジーを感じてしまう一作である。

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2013年06月21日

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