牧久のレビュー一覧
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【歴史とは物語である、といわれるが、溥儀、溥傑を取り巻く人間ドラマは、虚構の物語の世界をはるかに超えている】(文中より引用)
清朝最後の皇帝であるとともに、満州国の初代にして唯一の皇帝として担ぎ上げられた愛新覚羅・溥儀とその弟の溥傑。壮絶な人生を歩んだこの2人を軸としながら、戦前・戦中・戦後の日中関係、そして満州国の存在を振り返った歴史ノンフィクション大作です。著者は、『昭和解体』、『暴君』などで知られる牧久。
現代日本にとっては遠い存在となり、なんともすれば忘却の彼方に追いやられようとしている満州国の歴史を、愛新覚羅家という内側から活写することに成功した傑作。あまりに深く折り重なる歴史の -
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マングローブ枯れたり。という一言に尽きる。
思い返せば松崎氏死後のこの手の文献に触れたことはなかった気がするけれど、大塚社長以来、着実に革マルの「牙を抜く」労政が実行されていたのだなあと認識。他方で共産革命にはスリーパーが不可欠なのかしら、とも思ったり。
思想の是非はともかくとして、松崎氏は個人として相当魅力的な人物だったのでしょう。これを歴史として捉える時代に生きているのが幸運なのかどうなのか。
かつて駒場の学友会に切り込もうと冗談交じりで語りながら結局果たせなかったアマチュアジャーナリストとしては、嫉妬とともに最大限の敬意を表する次第です。 -
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国鉄栄枯の歴史を国鉄内部の目線で描いたルポ。
鉄道ファン向けに描かれるような東海道新幹線開通や世間の様子ではなく、国鉄がJRへ解体されるまでの組織と政治の話に特化していて、その人間の織り成すドラマはあまりにも金と欲にまみれて重苦しい。
変わり続ける政治家、利権をむさぼる労働者、不明瞭な責任の中で愛されなかった国鉄という組織が、国鉄三羽ガラスと言われる井出、松田、葛西の三人の官僚を中心に終息を迎える。
筆者はベテランなだけあり、(ドラマ的な描き方をしている部分もあったが)可能な限り事実を書こうとしていたように思われる。
心底悔やまれるのが、福知山線事故の責任を感じた井出が国鉄改革回想録200 -
購入済み
国鉄のことを知りたくて
生まれた時からずっーとJRだった世代です。
今でも時々JR東日本の労働組合がニュースになり、折角なら国鉄時代の労働組合からその問題を紐解いていこうと購入を決めました。
国鉄と労働組合の関係が丁寧にまとめられていて、問題の根幹を良く理解できました。
次はJRの労働組合についての本を読み進めていく予定です!
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長らく日経新聞において、国鉄及びJRを担当する社会部記者として前作「昭和解体ー国鉄分割・民営化30年目の真実」で国鉄民営化の歴史をまとめあげた著者が次に選んだ対象は、JR東日本の労働組合を長年実行支配し、かつ自らも核マル派のイデオローグであった松崎明である。
本書は、平成最大のタブーとも呼べるJR東日本と核マル派の悪しき蜜月を首謀した松崎明という人間にスポットを当て、どのようにその支配が完成し、ついには破綻に至ったのかが丹念に描かれる。
松崎明の死により労組の力が弱体化し、ついには3.5万人の組合員脱退によりJR東日本は核マル派の呪縛から逃れられるわけだが、一方ではJR東日本はまだその影響 -
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【”妖怪”と呼ばれた男・松崎明の”呪縛”からJR東日本が「完全に解放される日」は、”日本の失われた二十年”どころか平成まるまる三十年間をかけて、ようやく近づいてきたということなのだろう】(文中より引用)
旧国鉄において「鬼の動労」と恐れられた労働組合を率い、民営化後もその絶対的な影響力を保持し続けた松崎明。その半生を丹念に記しながら、JRに彼が深く遺した影響について考察した作品です。著者は、日本経済新聞社で社会部長などを歴任した牧久。
読んだ前と後とで同じ事象に対する見方が変わる一冊というのがたまにあるのですが、本作がまさにそれ。長年に渡って地道に、そして真摯に取材活動を続けてきたからこそ -
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これは本当にすごい本、というか凄すぎる内容の本だった。
明治国家の西洋化の象徴として新橋ー横浜間の鉄道が最初に通され、終戦直後には復員兵を数十万単位で引き受け、64年の東京五輪では新幹線を通したが為に赤字転落をした国鉄は最終的には、職員27万人、累積赤字37兆円(!)となり、複雑な労使関係、より複雑な労労関係、そして半国家組織であるが故の絶え間ない政治の介入により1980年代初頭には瀕死の重体となっていた。この国鉄を「分割民営化」して再生させるという1点に執念を燃やした国鉄キャリヤ組の井出、松田、葛西の"改革3人組"と脆弱な党内基盤ながらも抜群の政治センスを発揮して&quo -
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1987年4月1日は国鉄が民営化され、JR各社が発足した日にあたり、今年は民営化から30年という節目となる。30年が経過したものの、民営化の際に議論された問題は全てが解決したわけではなく、むしろJR北海道の経営問題のように、深刻さを増すものもある中、日経新聞の記者であった著者が、民営化時の首相であった中曽根康弘をはじめとする政治家、国鉄職員として民営化をリードした若手職員、日本最大の労働組合として強い影響力を持ちながらも、その闘争戦術の拙さから崩壊の一途を辿った労働組合幹部らなどへのインタビュー、膨大な一次資料に基づき、民営化に至った歴史をまとめた一冊。
読み終えて思うのは、この国鉄民営化と -
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ネタバレ二人の人物を中心にベトナム独立運動が語られています。
15歳で仏領インドシナに渡り、「大南公司」を興して成功した実業家・松下光廣。
ベトナム王国初代嘉隆帝の長男で皇太子だったものの早世したグエン・カイン(阮景)の末裔で、日本に亡命して独立運動を推進した畿外侯クォン・デ(彊柢)。
フランスの植民地であったベトナム独立のために奔走したこの二人の事跡を中心に、第二次大戦前の知られざる日越交流史が述べられています。
ベトナム側では、独立運動のオピニオン・リーダー、ファン・ボイ・チャウ(潘佩珠)や、南ベトナム初代大統領となったゴ・ディン・ジェム(呉廷琰)、その他の独立運動家たち。
日本側では、犬養毅や大 -
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東日本旅客鉄道株式会社。
日本国有鉄道から分割民営化され、会社名の通り東日本一帯を管轄する巨大企業だ。
子会社は70社あり、事業の中身は多岐に渡る。
これだけの大きな会社なので、当然従業員も多くなる。
しかし組合は一枚岩ではなく、いくつも分裂して増えていった。
その組合を仕切っていたのが、本書で書かれた松崎明氏である。
若い世代にはピンとこないだろう。
そもそも、ストライキ、だの革マル派・中核派、セクト・アジトなどと言う言葉からしてもはや歴史教科書の「現代史」に出てきた単語だけれども、ほんの30年前まではリアルな言葉として、企業や上層部には響いていた。
しかし数年前にJR東日本の最大労組 -
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国鉄、そしてJRの労働組合の指導者であり、革マル派の中心人物である松崎明。本書はその人物伝であったが、民営化後のJRの実像というところに興味が向く。国鉄分割民営化はかなりの荒療治。当然、大きな副作用が出るはず。そう思っていたが、実際にそれが何なのか長らく知ることはなかった。「国鉄の現況は態度の悪い国労であり、その組合員さえ切ってしまえば、真面目な職員だけになる。民営化後は競争原理も働きすべてがうまくいく」そんなイメージ世間に抱かせ、分割民営化を成功と思わせる演出。もちろん実態はそんな単純ではない。そこに当局側、経営側に弱みができる。
それをうまく利用したのが松崎であり、結果的に革マル派という前 -
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先日読んだ同著者の「暴君:新左翼・松崎明に支配されたJR秘史」が裏の歴史だとすると、先に書かれた本書は国鉄改革の表の歴史である。
国鉄分割最後まで分割・民営化に反対した国労の歴史は戦後まで遡る。
シベリア抑留から帰国した、田中角栄の戦友、細井宗一から国労の歴史が語られる。
機関助士廃止反対運動、マル生粉砕、スト権スト。
国鉄当局と国労との泥仕合の中で分離した動労など、労使関係は累積赤字とともに悪化の一途をたどる。
そして国鉄再建の道として示されたのが分割・民営化案だった。
しかし、審議される頃には国鉄総裁はレームダック、運輸省と国鉄上層部は分割・民営化案を潰しにかかる。