小川敏子のレビュー一覧
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ドイツは第二次大戦後、東西に分かれて別々の社会となり、西ドイツは当座は旧ナチス政権の者を追放せずに活用するしかなかったが、次第に自らナチスの罪を糾弾する自浄作用を発揮し、ブラント政権でポーランドで跪いての謝罪などをしたことで近隣国からの信頼を回復し、東ドイツとの交流も復活し、生活格差に気づいた東での願望の高まりによってドイツ統一が実現した。
オーストラリアはかつては白豪主義をとりイギリス連邦の一員であることに強烈な自負を持っていたが、第二次大戦でシンガポールが陥落し日本からの攻撃からイギリスが守ってくれなかったことを恨めしく引きずり、イギリスがヨーロッパ共同体に組み込まれていくことにイラつきつつ、ついには受け入れて、アジアの移民を大量に受け入れ始めた。
現代の日本については手厳しく、女性の社会進出、国債残高、少子高齢化、移民への抵抗、過去の歴史の贖罪の不足による近隣諸国とのトラブル等の危機に対して有効な自覚と対策が取れていないとする。
現代のアメリカもまた、分断による政治的危機と政治的妥協が許されない風土になってきていることによる民主主義の強靭性の欠如が進んでいる。そして、自らの参考になるべき他の国の成功例に習う意志がなく、自分達は特別だと思い続けている。
最後に世界。核兵器、気候変動、化石燃料の枯渇、人口増による資源の逼迫などの危機に対して、世界のアイデンティティのようなものの醸成がなく、参考にできる前例もないままに、これまでの部分的成功(天然痘、オゾンホール)を参考に進んでいくしかない。
全編にわたり面白く(現代日本の否定には、やや短絡的な決めつけも多く、少しフラストレーションを感じたが)、各国の危機の歴史も面白くしれたことと、選択的変化という戦略的な要素がフューチャーされていたことが非常に腹落ちしたため、星4つ。 -
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国家が危機に直面した時に、それを超克できるかどうかについての要素として、公正に自国を評価し危機にあることを認識できるか、国民のアイデンティティのあり方、他国の支援、そして選択的に変化を起こせるか、等があるという。
フィンランドはソ連との戦争で他国からの支援を得られない中、圧倒的な敢闘精神と、ソ連に脅威を与えないという柔軟で難易度の高い外交で危機を乗りきった。
明治日本は欧米列強に叶わないことを冷静に受け止め力をつけるまでは欧米を見習うこととしたが、神道や漢字等の日本的なものは変えず、政治制度や軍事、教育、産業などは大胆に変革する選択的変化を見事に成し遂げた。
チリは西欧のような国民性を持つ穏やかな国だったが、アジェンデ政権の杜撰な左派政治が経済や外交で大混乱をもたらし、これへの反発として生じたクーデターで政権を奪取したピノチェトが独裁恐怖政治を敷くこととなり、遂にこれが倒された後、穏健左派政権が誕生したが、ここではピノチェトの経済政策は残すなど是々非々の選択的変化により安定を取り戻した。
インドネシアは国民的一体性が醸成されないままにオランダからの独立を勝ち取り、バラバラになりそうな範囲の国家を戒厳令をもってスカルノが統治し、これをクーデターで倒したスハルトが経済発展と汚職と独立弾圧の虐殺という功罪まみれる統治を行った。スハルトが倒されてから、インドネシアは急速に国民的アイデンティティを強め、汚職もなくなっている。
それぞれ危機に対してうまく選択的変化を起こせたタイミングで立ち直り発展し安定しているということか。
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第二次世界大戦中のアメリカを舞台にした物語。戦時中の人との繋がりや人間性に訴えてくる心に響く良書である。
現代(2025)においても、残念ながら戦争は起きている。ニュースやネットでは戦争の様子が直ぐに状況が反映され、それらの情報の正否や偏りは正確にはわからならいが、現地で起きている凄惨なことが起きていることは想像に難く無い。
この作品においては、戦争中には人と人との繋がりを強調している。そして、多様な価値観だろうが、人種、宗教関係なく、困難な時代を生き残るために、皆で支え合う姿がとても心にくるものがある。
この作品で好きな言葉がある。「悲しいときほど、人に優しく」だ。この言葉は戦時中でも現代の私たちにも活かせる言葉だと私は思うのだ。 -
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この本は近年台頭してきているポピュリストが何故大きな影響力を持ち始めたのか民主主義と資本主義が危機に見舞われていることについて書かれている。近年トランプなどのポピュリストが指示を伸ばしているが、それは経済の不安定化により、貧富の差が広がり低・中所得者が既存の政党、政治体制、政治を行なうエリート層に対して懐疑的な目を向けているからだ。貧困に陥っている、陥ろうとしているそれは近年増加している移民や女性などの少数弱者のせいであるとする論調が広まり、右寄りで地主などのお金持ちや保守的な政治指導者とこの主張は受け入れやすく、これらの人々は右寄りは資本家などに有利な政策をとることが多いのに、低・中所得者も支持している。しかし、特にアメリカなどでは企業は安い労働費で働いてくれる移民を重宝し共和党は積極的には移民を追い出すという政策は取らなかった。さらに移民の安い労働力で成り立っているアメリカ社会が移民を排斥することが正解かは疑問が残る。そしてなぜ、このように貧富の差が拡大したのか、これは一部の資本家などに利益が集中しているからだ。近年のテクノロジーの発達によりGoogleやAppleなどのGAFAが市場を独占しその株式を持つ投資家や役員に多大な利益が流れていく。企業というものは、競争ではコストがかかるため、合併や吸収を行ったり、企業間で合意形成を行ったりすることで競争を行なくなり市場が独占・寡占化してしまう。そして金融業界において政府は景気回復などのために積極的に手助けをするためである❓そして、テクノロジーの発達、産業の空洞化により製造業は衰退し中道左派などの支持基盤である労働組合の力が弱まったため、左派はマイノリティーへの支持や男女平等などの少数弱者への指示を求め画策した。 -
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つぎの一〇年において、これらの問題は日本にどのような結果をもたらすだろうか? 現実的にみて、日本が現在直面している問題は、一八五三年の唐突な鎖国政策の廃止や、一九四五年八月の敗戦による打撃に比べれば大したものではない。これらのトラウマから日本がみごとに回復したことを思えば、今日、もう一度日本が時代に合わなくなった価値観を捨て、意味のあるものだけを維持し、新しい時代状況に合わせて新しい価値観を取り入れること、つまり基本的価値観を選択的に再評価することは可能だという希望を私は持っている。
――本書の出版が2019年。さて10年後、本書で取り上げられた、日本、アメリカ、世界の問題はどうなっているのか。答え合わせが楽しみなような、怖いような。 -
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表題ほど明るいわけでは無いけど、希望を感じることができるお話しだった。
日本が太平洋戦争で世相が暗くなる一方の中、太平洋の向こうの「敵国」で生きる、貧しき市井の人が、どういう生き方をしていたのかを感じることができた。
民主主義に対する絶大な信頼とか、健気に生きるホーマー少年に対する電報局長の優しさとか、兵士が敵兵を恨まない姿勢とか、アメリカ人のアメリカ人たる所以とも言えるような美点を感じることができたのは良かった。
P276
「名前は両親にではなく施設でつけられ、両親がどんな人物なのかも知らず、どこの国の人かも知らず、自分が何人の血を引くのかも知らないのだからね。(中略)」
「きみはアメリカ人だ」マーカスがいう。 -
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本書は「機械との競争」「セカンド・マシン・エイジ」などの著者として有名なMITのアンドリュー・マカフィー氏による最新の本です。一貫して読みやすく、データも豊富に提示されているのであっと言う間に読めました。本書の主張したいことは明白です。資本主義とテクノロジー進化は、(少なくともアメリカにおいては)脱物質化を進めている。ここでの脱物質化とは、資源消費量を少なくしながら経済成長をしているという意味です。しかし資本主義とテクノロジー進化だけでは、公害などの外部不経済に対処できない。そこで必要になるのが「反応する政府」「市民の自覚」。これによって公害がいろいろな意味で高くつきますので、企業は外部不経済の削減にも取り組むということです。マカフィーは、「資本主義」「テクノロジーの進歩」「反応する政府」「市民の自覚」を希望の4騎士と名付けています(これは明らかにスコット・ギャロウェイの『The Four GAFA:四騎士が創り変えた世界』を意識していると思います)。
本書ではアメリカについてかなり詳細なデータ分析をしていることから、少なくともアメリカでは著者が主張するような「モア・フロム・レス(少ないインプットでより多くのアウトプットを生み出している)」が達成できていることは間違いないと思うのですが、果たしてこれは地球全体としても言えるのでしょうか。本書の最後までこの疑問は消えませんでした。つまりどういうことかというと、グローバリゼーションの進展で、資源をたくさん使う製造過程がアメリカなどの先進国から、中国やメキシコ、東南アジアなどに移転されていることがこの背景にあるのでは、という疑問です。アメリカやイギリスは経済のサービス化が進みました。つまり経済に占める情報通信や金融、サービス業の比率が高まりましたが、裏を返せば、資源を消費し公害も生み出しやすい製造過程を新興国に押し付けている、という見方もできるわけです。いいかえれば、欧米先進国の脱物質化は、新興国のより一層の物質化(資源消費)のコインの裏側でしかないのでは、と感じるわけです。
ただ、たしかにデジタル技術は色々な意味で資源消費を抑制する方向にある気もします。無駄をなくす、最適化する、また本書にもありますように、以前は複数の家電製品を購入しないとできなかったことが、いまはスマートフォン1台でできてしまいます。またこれまではハードウェアが担っていた機能が、ソフトウェアで担えるようになっている面も多々あります。ですので、本書はデジタル革命が「モア・フロム・レス」に寄与すること、それはアメリカだけでなく世界の工場としての中国や他の新興国でも、その傾向が見え始めている、といった感じで分析をしてもらえると、きわめて説得力があったのに、と感じました。 -
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「数字は嘘をつかない」のではなく「嘘つきは数字を使う」ことを見にしみて理解できる本でした。よくある宣伝広告に書かれた数字の嘘から話は始まりますが、そこまではまあわかる話です。でも本書がすごいのは、そこから機械学習などの最新テクノロジーや、科学論文という「さすがに信じてよいのでは?」と思えるものにまで話が進むことです。普段、専門家の見せる研究結果や「学術論文によると・・」などといった言葉を見てある程度盲目的に数字を信じてしまうことがありましたが、実はその科学というものがいかに怪しいかを教えられました。
論文を読んで内容をまとめる系のYouTuberがよく「科学的に正しい」なんてことをサムネイルに載せたりしていますが、全くもって眉唾です。本書を読んでP値ハッキングの実情を知れば、特定の論文に依拠して科学的に正しいと言い切ることがいかに間違っているかが分かります。正確には「科学的に正しい可能性がある結果が出ている」くらいに捉えるべきだということが分かります。
本書には数字のデタラメを見抜くテクニックがいくつか紹介されていて、すぐ実生活に応用できます。でも個人的に最も響いたのは、「科学」というものは1つの成果で判断するのではなく、その分野の数多くの研究の総体として蓋然的に理解しないといけない、という科学に対する見方を教えてくれるところです。 -
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農業が余剰食糧を生み出すことで、全員が農業に従事する必要がなくなり、文字や青銅器、耕作など近代科学が発展した。なるほど今まであまり考えたこと無かったが、そりゃそうだと思い、引き込まれていきました。
そして定住生活に移行して人口が増加し、食糧の確保が必要となり、人類の叡智でそれに対応してきた経緯を詳しく学べる本。
解決したら新たな問題が出て、それを解決したらまた新たな問題が出て、まさにイタチごっこを辿ったが、上手く人口の増加、豊かな社会を実現してきた。
しかし今後これが続くかはわからない。
この本を読んで改めて、地球の歴史の中で絶滅した動物は無限とあり、人間も自然には逆らえず今の落ち着いた気候の上でしか成り立たないことを思い知った。