渡部悦和のレビュー一覧
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陸上自衛隊東部方面総監であった渡部悦和氏と
陸上自衛隊衛生学校心理教官であった下園壮太氏との共著。
それぞれ立場は違うものの、メンタルケアを重視し、
自衛隊員の心の健康を維持するための対策に
取り組んでこられた方です。
自衛隊員のメンタルケアのために、どのようなことを考え、
どのようなことを実践されていたか語られています。
お二人がそろぞれ執筆した章のほかに、
お二人の対談で構成された章もあり、
大変読みやすい内容になっています。
自衛隊での経験に基づいた内容にはなっていますが、
自衛隊員に特化されたものではなく、
万人のメンタルケアに通じるものだと思います。
メンタル不調に陥るとき、どのように進んでいってしまうのか、
そうならないために、どのような対策をすればよいのか。
その対策もハードルの高いものではなく、
日常に取り込みやすいものが多いです。
自分のメンタルケアのためだけではなく、
組織のメンタルケアのために、味方になる1冊です。 -
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戦争は、まさに最先端技術の戦いであることを証する書籍
韓非子、孫子、三国志の話があり、もはや、目的のためには手段を選ばない、制限を加えず、あらゆる可能な手段を採用して目的を達成するのが現代戦と言い切っている。
孫子曰く、戦わずして勝つ。米軍が戦場に到達する前に、全てを決する、中国の見えない戦いが紹介されています。
かって、陸海空の3軍といっていたものは、陸・海・空・宇宙・サイバー空間・電磁波・認知領域(誤情報、偽情報、悪意ある事実)の7領域について、全領域にわたっての総合戦争と位置付けています。さらに、政治戦、外交戦、経済戦、文化戦、宗教戦、貿易戦、心理戦、メディア戦、歴史戦、技術戦、デジタル戦、ネットワーク戦が挙げられている。
世界は、米中の戦いとなっています。湾岸戦争以来、米国の独断場であった情報戦については、いまや、中露の得意とするところとなっている。
中国の技術的なねらいは、①半導体、②5G,③デジタル工作機械、④ロボット、⑤航空宇宙、⑥海洋エンジニアリング、⑦ハイテク船舶、⑧先端的鉄道、⑨省エネ自動車(MaaS?)、⑩電力、⑪大型トラクター、⑫新素材、⑬バイオ、⑭高性能医療機器の14分野である。
中国、人民解放軍(PLA)には、サイバー部隊が15あり。有名なのは、①61398:上海北米担当、②61419:青島日韓担当、③61565:北京ロシア担当、④61726:武漢台湾、南アジア担当、⑤61486:上海宇宙通信傍受班である。
最先端の兵器
・AIをつかった自立型兵器、無人攻撃機、無人ビークル
・ドローンスオーム 小さなドローンを多量に制御する、防ぎようがない
・ミサイル(超音速、長距離、衛星破壊)
・量子レーダー(ステルス、潜水艦を無効化)
・妨害(ドローン、電波)
・レーザ兵器
・原子力魚雷
目次
はじめに
第1章 現代戦とは
1 「超限戦」の本質
2 現代戦の特質
3 現代戦と最先端技術
4 情報戦(政治戦、影響工作、プロパガンダ戦など)とは
5 宇宙戦とは
6 サイバー戦とは
7 電磁波戦(電子戦)とは
8 AIの軍事利用・アルゴリズム戦
第2章 中国の現代戦
1 中国が考える現代戦
2 情報戦
3 宇宙戦
4 サイバー戦
5 電磁波領域の戦い(電子戦など)
6 AIの軍事利用:アルゴリズム戦
7 最新兵器
第3章 米国の現代戦
1 米国が考える現代戦
2 情報戦
3 宇宙戦
4 サイバー戦
5 電磁波戦(電子戦など)
6 AIの軍事利用
7 最新兵器
第4章 ロシアの現代戦
1 ロシアが考える現代戦:ハイブリッド戦
2 情報戦:中核となる影響工作
3 宇宙戦:他領域の戦いを無力化
4 サイバー戦:戦わずして勝つ戦い
5 電磁波領域の戦い(電子戦など):他領域での戦いを支援
6 AIの軍事利用:ロシアの戦いを根本的に変革
7 最新兵器
第5章 現代戦の総括と日本の現代戦
1 現代戦の総括
2 日本の現代戦
おわりに 「超限戦」の煌きと闇 -
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元自衛隊の将官がロシア・ウクライナ戦を分析している書です
2014年のロシアによるクリミア併合と、2022年7月時点で戦闘中のウクライナ戦について状況分析、解説、そして日本にとっての教訓を語られています。
クリミア併合は、ハイブリッド戦の成功例、オールドメイン(全領域)での戦争と位置付けています。陸・海・空・宇宙・サイバー戦・電磁波に加えて、情報・認知・心理・経済・外交・エネルギー・法律・歴史・文化・宗教などでのドメインの戦いが重要であるといっています。
現代戦も、孫子がかたるように国と国とを挙げた総力戦なのです。
(理由:なぜ、ウクライナに侵攻)
・ロシアvsNATO 緩衝地帯がないとロシアの安全保障に重大な危機が
・もともと、ロシアは平坦で、容易に攻めやすい国、そのためにロシアは「力の信奉者」として武力を解決手段として用いてきた
・プーチンはパーキンソン病?思考力の低下
(開戦前)
・国境付近で大規模な軍事演習
・ニセ情報をばらまいて、ウクライナの油断させようとした
・大隊戦術群(BTG)の多量編成と投入
・DDOS攻撃を開始
・他にもマルウエア、DNSキャッシュポインズニングによるサイバー攻撃を実施
・クリミア併合時には効果的であった、サイバー攻撃は、西側の支援を受けたウクライナに対してはあまり効果がなかったようだ。
・ウクライナは前回の学習で、ITの先進国となっている(同様エストニアも同様の国であると紹介されています)
(開戦後)
・ロシアの誤算、数日で終わるとおもったキエフ陥落どころか、頑強なウクライナの抵抗にあった
・短期戦を想定していたため、兵站が確保できなかった。
・BTGは規模が小さく、しかも兵としての練度が足りていなかった
・部隊との通信が妨害されたために、携帯をつかったところ、位置を特定されて指揮官クラスが多量に狙撃され、戦死した。
・ぬかるみのために、道に伸びきった戦線を横からウクライナに攻撃、部隊が膠着・分断された。
・ロシア人とウクライナ人とは、兄弟家族のような間がら、同胞を攻撃することでモチベーションが低下
・黒海にいた、ロシアの旗艦がウクライナの攻撃で沈没。心理的なダメージで、士気低下
・西側の対戦車砲など、近代兵器で応戦。ロシアの戦車、航空機に対抗。
・プーチンの思惑とは別に、ウクライナ軍は善戦しており、ロシア軍の意図は実現されないままにいます。(2022年7月現在)
(考察)
・ロシアに政変が起きる可能性があり
・アメリカ(西側)は、再び復権につながりつつあり。ロシアの経済的制裁などで、ドイツ(ロシアからエネルギーを購入していた)などとも連携をおこなっている。
・中国は、苦しい立場に。台湾は陸続きではないので、電撃的に20万の兵力を投入できるわけではない。
・インドは伸長か。ロシアのエネルギーを優先的に購入しており、アメリカとも中国とも距離を保っている。
・国際政治の基本原則「永遠の友もなく、永遠の敵もない。あるのは永遠の国益だけ」
(日本へのメッセージ)
・先の大戦いらい、オール・ドメイン戦を経験しておらず、オール・ドメイン戦を前提として日本の安全保障を再考すべき時期
・防衛力整備は最優先の課題である。
・日本は「各省庁でやるべき戦略」があるだけ、全領域を融合する総合的な戦略を持つべき
・加えて国家閃絡構築の必要性。
・軍事科学技術は驚くほどの速度で進化している。日本も国内に独自の防衛作業を育成し、他国に依存しない防衛体制を整備するべき
結論は、以下かと。
我が国の安全保障体制は国際標準と大きく乖離した極めていびつなものになっているが、それを抜本的に改善するチャンスです。
そのためには、今回の戦争をオール・ドメイン戦の観点から徹底的に分析して、教訓事項を具体的に生産に反映すべきである
目次は次のとおりです。
はじめに
第1章 なぜロシア・ウクライナ戦争は発生したのか
第2章 開戦日以前に何が行われたのか
第3章 2月24日以降に何が起こったのか
第4章 これからの世界を展望する
第5章 日本にとっての教訓
おわりに -
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現ハーバード大学アジアセンター・シニアフェローであり、東方総監も務めた元陸将が、戦略・予算評価センター(CSBA)のエアシーバトル構想(ASB)とその発展系であるJAM-GC、ランド研究所による米中武力衝突のシミュレーションを元に、起こりうる米中戦争と、その時の日本の立場、果たすべき役割を説く。
この方は、以前からweb上のニュースサイトや学会誌みたいなのでランド研究所のシミュレーションの分析とかをしてたので、その成果を本にしたということなのだろう。著作物としては本書が初めてのようだが、従来より論文等で同様のテーマを防衛関係者に問うてきたこともあり、その内容はかなり信頼の置けるものになっているだろう。
ASBの基礎から、米中の戦力など、起こりうる米中武力衝突に関する基礎知識はこれを読めば間違いはないと断言出来る。
エアシーバトル構想は、第一段階として中国の第一撃から始まる防勢作戦を想定しており、中国軍によるサイバー宇宙戦から始まり、続く米軍の前方展開勢力へのミサイル攻撃をいかに確実に察知するかが重要となる。この点、中国監視にも用いることができるという韓国THAAD配備はASB構想の一環とも言えるのだろう。
ASBは当初の、中国本土に対する攻撃的なものから、懲罰的抑止と拒否的抑止のバランスを考慮したもの、さらにJAM-GCへと洗練されていき、ASBと一口に言っても当初構想と後のASBには違いもあることに注意が必要であると感じた。
ASBにおいて日本は、初期段階において米軍が退避した後、再度来援するまで持ちこたえること、そして、その後の逆A2ADにおいて陸自を中心とした島嶼部の対艦、対空ミサイル戦力、海自による水中優勢が期待されている。陸自の対艦ミサイル戦力といったクロスドメインな形態が対中国という点では陸という単一領域(ドメイン)に拘る米陸軍と比しても先進的であり、ASBにも影響を与えたというのは初めて知った。似た内容の論文は以前フォーリンアフェアーズ誌で読んだことがあったが。
米軍のASB、JAM-GCは、日本の防衛戦略、防衛政策にも大きな影響を及ぼす。米中衝突の際、初期段階で米軍は日本周辺から退避してしまうこと、また、米国は、中国本土侵攻による核戦争へのエスカレートを避け、かつ、中国に対するA2ADを実施するため、日本の南西諸島周辺を戦場とすること、一般の日本人にとっては耳を疑うこれらの事実は、実は米軍の戦略として公然と公開されている。このような構想への賛否はともあれ、日本の防衛を考える上で、必ず理解しておかなければならないものの一つであり、その点で本書は手軽に読めて取っ掛かりとしては最良といえる。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ米中戦争 そのとき日本は
刺激的な内容を煽ることなく論理的に分析している良書だと思います。
基本的には米国のランド研究所のシミュレーション結果に基づいて書かれていますが、今まで知らなかったことも多く、勉強になりました。
中国が海洋進出しようとすると日本列島を含む第一列島線を突破しなければならない現状を踏まえるとともに、覇権国家を争い近い将来米中が合対峙する可能性を上げながら、現状での戦力分析をスコアカード形式でわかりやすく解説してくれています。
シミュレーションとして、南沙諸島、台湾、尖閣などの結果が挙げられており、現在でも台湾有事の際には米国は不利であることが示されています。
それよりももっと衝撃的なのは、米国は中国のミサイル攻撃の第一撃を避けるため、第一列島線から退避するのが、基本戦略であることです。
米国が反転攻勢に出るまでは自力で持ちこたえなければならない・・・
憲法議論が賑やかしくなってきましたが、こういった分析結果を基に、日本も対応を冷静に検討する時期に来ているのかもしれません。
竹蔵 -
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アメリカ、中国、ロシア、日本、それぞれの国での特に宇宙安全保障に関する政策の方向性や、組織構造について説明されている。
各国の宇宙政策の方向性や主要組織の要点は以下。
# アメリカ
- 宇宙政策は一貫して、「宇宙におけるリーダーシップの維持」
- 主要組織は、民生分野は米航空宇宙局(NASA)、軍事・安全保障分野は米宇宙軍(USSF)
- NASAの任務は「すべての人々の利益のために宇宙の秘密を探究すること」
- 宇宙軍の任務は「宇宙軍は、統合軍と連合軍の戦いを強化するグローバルな宇宙作戦を実施するためにガーディアンを組織化、訓練、装備の責任を負い、同時に国家目標を達成するための軍事的選択肢を意識決定者に提供する」
# 中国
- 中国共産党の権力独占を維持することが最優先の目標
- 一部の民生分野や科学研究を除き、ほとんどが軍の統制化にある
- 宇宙を制するものは地球を制するという信念があり、宇宙における覇権の阻止を狙っている
- 主要組織は、中国人民解放軍。特に、戦略支援部隊の役割が大きい。戦略支援部隊は、宇宙、サイバー、電磁波領域の情報を統合する責任を持つ。
- 戦略支援部隊は2024年4月に解体され、情報支援部隊、サイバー空間部隊、軍事宇宙部隊が編成
# ロシア
- 自国の宇宙開発を国際舞台においてリーダシップを発揮する貴重な手段であると考えている
- 軍事ドクトリンによると「宇宙は戦闘領域であり、宇宙における覇権を獲得することが将来の紛争に勝利するための決定的な要因になる」
- 衛星や有人宇宙船を破壊できる地上発射の対衛星ミサイルを開発している
- 軍事と民間の宇宙組織はほぼ分離しており、民生分野をロスコスモス、軍事分野をロシア航空宇宙軍(VKS)が主導
# 日本
- 憲法第九条に起因して「宇宙の平和利用」に重きを置いている
- 国際的には「平和目的の宇宙利用とは、防衛目的の軍事利用を含む」であるため宇宙戦の面では遅れている
- 2008年の宇宙基本法により、宇宙開発利用は宇宙条約等の国際約束に従い日本国憲法の平和主義の理念に則り行われるものとする、となった。宇宙条約は防衛目的の軍事利用を禁止していないため、これにより宇宙により防衛目的の兵器を配備できるようになった
- 宇宙安全保障の目標は「我が国が、宇宙空間を通じて国の平和と繁栄、国民の安全と安心を増進すること。同盟国・同志国等とともに、宇宙空間の安定的利用と宇宙空間への自由なアクセスを維持すること」 -
Posted by ブクログ
著者である渡部さんの「保守とは、日本の国益は何かを考え、そのために何だってするという考え方」との意見に、大変共感した。最近、右翼・左翼・保守・リベラルって何なのだろうとよくわからなくなっていた、というか今もよくわかっていないが、新たな見方が一つ加わったことは確かだ。あと上記4つのイデオロギーに加えて、ミアシャイマーたちのリアリズムというものがあることも知った。奥山さんが翻訳している本があるそうなので読んでみたい。
政治・経済・外交・アカデミア・軍事はすべて関連するものであるのだということを念頭にニュースを見たり、選挙権を行使するためにも、もっと広い視野を持って様々な知見を蓄えていきたいと思う。