元自衛隊の将官がロシア・ウクライナ戦を分析している書です
2014年のロシアによるクリミア併合と、2022年7月時点で戦闘中のウクライナ戦について状況分析、解説、そして日本にとっての教訓を語られています。
クリミア併合は、ハイブリッド戦の成功例、オールドメイン(全領域)での戦争と位置付けています。
...続きを読む陸・海・空・宇宙・サイバー戦・電磁波に加えて、情報・認知・心理・経済・外交・エネルギー・法律・歴史・文化・宗教などでのドメインの戦いが重要であるといっています。
現代戦も、孫子がかたるように国と国とを挙げた総力戦なのです。
(理由:なぜ、ウクライナに侵攻)
・ロシアvsNATO 緩衝地帯がないとロシアの安全保障に重大な危機が
・もともと、ロシアは平坦で、容易に攻めやすい国、そのためにロシアは「力の信奉者」として武力を解決手段として用いてきた
・プーチンはパーキンソン病?思考力の低下
(開戦前)
・国境付近で大規模な軍事演習
・ニセ情報をばらまいて、ウクライナの油断させようとした
・大隊戦術群(BTG)の多量編成と投入
・DDOS攻撃を開始
・他にもマルウエア、DNSキャッシュポインズニングによるサイバー攻撃を実施
・クリミア併合時には効果的であった、サイバー攻撃は、西側の支援を受けたウクライナに対してはあまり効果がなかったようだ。
・ウクライナは前回の学習で、ITの先進国となっている(同様エストニアも同様の国であると紹介されています)
(開戦後)
・ロシアの誤算、数日で終わるとおもったキエフ陥落どころか、頑強なウクライナの抵抗にあった
・短期戦を想定していたため、兵站が確保できなかった。
・BTGは規模が小さく、しかも兵としての練度が足りていなかった
・部隊との通信が妨害されたために、携帯をつかったところ、位置を特定されて指揮官クラスが多量に狙撃され、戦死した。
・ぬかるみのために、道に伸びきった戦線を横からウクライナに攻撃、部隊が膠着・分断された。
・ロシア人とウクライナ人とは、兄弟家族のような間がら、同胞を攻撃することでモチベーションが低下
・黒海にいた、ロシアの旗艦がウクライナの攻撃で沈没。心理的なダメージで、士気低下
・西側の対戦車砲など、近代兵器で応戦。ロシアの戦車、航空機に対抗。
・プーチンの思惑とは別に、ウクライナ軍は善戦しており、ロシア軍の意図は実現されないままにいます。(2022年7月現在)
(考察)
・ロシアに政変が起きる可能性があり
・アメリカ(西側)は、再び復権につながりつつあり。ロシアの経済的制裁などで、ドイツ(ロシアからエネルギーを購入していた)などとも連携をおこなっている。
・中国は、苦しい立場に。台湾は陸続きではないので、電撃的に20万の兵力を投入できるわけではない。
・インドは伸長か。ロシアのエネルギーを優先的に購入しており、アメリカとも中国とも距離を保っている。
・国際政治の基本原則「永遠の友もなく、永遠の敵もない。あるのは永遠の国益だけ」
(日本へのメッセージ)
・先の大戦いらい、オール・ドメイン戦を経験しておらず、オール・ドメイン戦を前提として日本の安全保障を再考すべき時期
・防衛力整備は最優先の課題である。
・日本は「各省庁でやるべき戦略」があるだけ、全領域を融合する総合的な戦略を持つべき
・加えて国家閃絡構築の必要性。
・軍事科学技術は驚くほどの速度で進化している。日本も国内に独自の防衛作業を育成し、他国に依存しない防衛体制を整備するべき
結論は、以下かと。
我が国の安全保障体制は国際標準と大きく乖離した極めていびつなものになっているが、それを抜本的に改善するチャンスです。
そのためには、今回の戦争をオール・ドメイン戦の観点から徹底的に分析して、教訓事項を具体的に生産に反映すべきである
目次は次のとおりです。
はじめに
第1章 なぜロシア・ウクライナ戦争は発生したのか
第2章 開戦日以前に何が行われたのか
第3章 2月24日以降に何が起こったのか
第4章 これからの世界を展望する
第5章 日本にとっての教訓
おわりに