藤井省三のレビュー一覧
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中学(高校かも?)の国語の授業で登場した魯迅の「故郷」。
まさかこうしてここでめぐり合うなんて・・・。
新訳とあって、こうも変化するとは思わなかった。イイ意味で。
読んだことのない小説を読む如く、みずみずしさが残る。
本書はその「故郷」を含んだ魯迅の短篇集。
有名ところの阿Q正伝、狂人日記なども収録されており、当時の中国の背景、日本との関係も踏まえて、小説を通して垣間見ることができる。
革命だのなんのと時代が揺れうごめく中に、筆者が感じた痛烈な批判的な要素も含んでおり、救いがないような作品の中にも、今後の「良い未来」として変えていかなければいけないといった思いも託された作品が多い気がした -
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本書の後半は、中国、日本、韓国での魯迅受容について紹介されており、それがやはり貴重で、面白かった。
中国では魯迅は革命の精神を体現する作家として神格化されている。
これは個人的には既に聞いたことがあること。
「故郷」は、「こんなに人民を考えてくれた作家がいたとは」と、感動的な作品として読まれている、と。
本書から知ったのは、そういう中国では、特に若い女性の魯迅離れが進んでいるということ。
思想教育的な要素が敬遠されているとの由。
中国の表の顔と裏の顔を見た気分である。
現在では「個性的読み」の試みが始まっているという話も紹介されていて、今後、中国でのスタンダードな読みはどう変わっていくか、興味 -
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[ 内容 ]
高杉晋作から大江健三郎まで、中国に深い関心を抱いて現地を訪れた日本人は少なくない。
幕末からの一五〇年間、日本人は中国とどうつき合ってきたか―。
今、ビジネスパートナーとして注目を集める中国の近代史を、現地に足跡を残した日本人約二〇人の見聞を通して読み解く、まったく新しい中国理解のための入門書。
[ 目次 ]
高杉晋作―「租界都市」上海の繁栄と外夷の影
血脇守之助―天津、有力者の胸襟を開かせた歯科治療
後藤新平―「生物学の原理」にもとづいた植民地台湾経営
夏目漱石―列強に追随する日本への疑心
清水安三―北京、魯迅との交友
吉田茂―張作霖との会談、満州特殊権益を拡大せん
川喜多長 -
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ネタバレ☆つけるのは烏滸がましい気がするから3にしておく。
故郷が好き。故郷で貧困にあえぎつまらない大人になってしまった閏土と、故郷を離れ役人となった自身の対比。かつて友人だった彼らは彼らを取り巻く問題によってもはや友人ではなくなってしまった。閏土は私に対して畏れともとれるような感情を抱くようになってしまった。私は役人の地位に慣れてしまったのか親しく付き合うことの許可を出しもしない。当時の中国の片田舎ではそれが当たり前なのかもしれないが、私の立場に立たされたとしたら自分だったらそうすると感じた。私は閏土の現在の姿をみてあきらめてしまったのだろうか。それでも息子たちはかつての閏土と私のように親友となった -
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最近ハヤカワ文庫から出た『半生の絆』の内容が少し気になっていたので、その前に本書を手にとってみた。中華圏ではとても有名な作家(魯迅と並ぶとも)だけど、日本ではほぼ知られていないとのこと。舞台は約80年前の戦中の上海や香港。表題作の傾城の恋/封鎖どちらとも戦時下での恋愛結婚の話で、それらに対する価値観も出てくる。そこで交流のあった中華圏の友人の顔が浮かんだ。今現在の中華圏でも女性から男性に求められる結婚の条件として「家はある?車はある?お金はある?」が多いと言っていたのを思い出した。" 西洋式婚姻の愛情は自分で創り出すものだが、中国式婚姻の愛情は身分が創り出すものである。"と
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過日、川端康成が描いた『眠れる美女』のオマージュとして、高齢女性の性を描く意欲作と書かれれば、それは読みたい気もしてしまう。ただ、2020年の作品とはいえ、どことなくストーリーの古臭さや、手垢のついたテーマだと感じてしまうのは、慣れない翻訳文体だからなのか、台湾というお国柄の違いなのか、または時代の移り変わりの目まぐるしさからなのか。
作中ヒロインの殷殷夫人が思い悩むあれこれというのは、現代日本では(個人的な差はもちろんあるが)もっと能動的に、あるいはもっとあっけらかんと、乗り越えられている現状があるのではないか、なんてことを思ったりもした。
(もしや、文学だけがこの分野から取り残されてき -
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ネタバレ中学校の国語教科書で『故郷』を読まれた方も多いだろう。日本で広く親しまれている魯迅であるが、中国はもちろんのこと、東アジア各国において様々な「読み」がなされてきた。本書では、前半で豊富な資料に基づいて魯迅の生涯を語り、後半で彼の作品が東アジア共通の「モダンクラシック」として受容されてきた歴史を明らかにする。
1章から7章は、正直なところ、『故郷/阿Q正伝』(藤井省三訳、光文社古典新訳文庫)の解説を少し詳しく書き改めたバージョンという感じがする(尤も、これは寧ろ古典新訳文庫の解説が、そのような印象を抱かせるぐらい充実しているのだと評価するべきだろう)。とはいえ、多くの資料・文献を引きながら