現在は化学系の会社で勤めているので、物理を扱うことは無いのですが、高校時代に物理を学習していた時には、身の回りの現象が数式で表現できることに興味を覚えたものです。ある現象の結果が多くの変数で表されることがわかると、その変数を変更するだけで他の物質や環境での結果を予測できる魔法のツールのように思えました。
さて、この本は左巻氏が、様々なトピックを物理で説明するとどうなるかを解説しています。多くの人が毛嫌いしないようにわざと数式を削除して結果だけを述べたようですが、欄外や付録でも良いのですが数式もあれば私としては楽しかったのになと思いました。
以下は気になったポイントです。
・真っ暗闇の部屋にいた場合、目が慣れてきて周りが見えることはない、光のないところでは見えない。目が慣れてくると見えるようになるのは、わずかだが光があるため(p14)
・透明人間になるとは、体が全部、空気と同じ屈折率になること(p18)
・虫眼鏡で太陽の光を集めた時の小さな丸い点は、実は太陽の像である(p28)
・真皮深部まで達してコラーゲンに影響を与えて深い「しわ」等の光老化の原因になるのは紫外線A波、後に皮がむけるのは紫外線B波によりサンバーンが起きた証拠(p36)
・皮膚がんリスクは、紫外線B波が皮膚の細胞のDNAを損傷するため、この損傷は殆ど修復されるが、紫外線が強いとリスクは大きくなる(p36)
・発泡スチロールと鉄が同じ温度でも、触った時の感じが異なるのは、1)室温は体温より低いこと、2)熱伝導率が金属の方が大きく短時間に熱が金属に移るため(p40)
・金属が熱を伝えやすいのは、軽くて勝手に動きやすい自由電子が熱を運ぶから(p42)
・マイナス273.15度が低温の限界なのは、すべての原子・分子が静止している温度だから(p48)
・冷蔵室の役割は食品を冷やして細菌やカビ(7度くらいから増殖盛ん、12度から急激)の繁殖を防ぐことなので、4度程度にすると良い(p50)
・ふたが取れなくなったときに熱すると取れやすくなるのは、ガラスよりも金属が膨張して(金属ふたの穴が大きくなる)取れるようになるから(p65)
・息の「ハー」は体温で温められた息が出る、フー(口をすぼめる)の場合は、口からの息だけではなく口の周りの空気(体温よりも低い)を巻き込むため(p67)
・かつては「kg重」を使っていたが、現在は力の大きさの単位は「ニュートン:N」を使う(p83)
・もし氷が4℃の水よりも重かったら、湖水や川でも底から凍ることになる、そうならないので、水中生物は氷のカバーに保護されて気温が低くても暮らしていける(p103)
・氷が固体において液体よりも重くならない理由は、水から氷になるときには「すき間」が多くなるような構造をとるため、氷が水になると構造が部分的に壊れて隙間が小さくなり、固体のほうが液体より軽くなる(p103)
・息を大きく吸った時の密度は0.951、吐いたときは1.006であり、これが人間が水に浮くかどうかのポイント(p109)
・綿1キロと鉄1キロは、綿が鉄よりも密度が小さく(体積が大きく)空気中に置いたときの空気を押しのける能力(浮力)が大きいので、綿の方が軽い(p117)
・地球の時速(東京の場合1周3.3万kmとして)は自転スピードから計算すると、1400キロ/時である(p122)
・地球が何十億年もの間、自転・公転をエンジンなしで続けてこられたのは、慣性という性質から(p125)
・人間が落下する場合、573m落下すると等速度運動になる、頭を下にしての姿勢が最も速く時速298キロ、他の姿勢で188-201キロ、雪の斜面はクッション効果が大きいが、水の場合は弱いのでまず助からない(p134)
・象とOLのハイヒールの圧力を計算する(象の体重:3トンは4つの足、OL:40kgは2足で支える)と、ハイヒールの場合(4 MPa vs 0.075MPa)が大きい(p141)
・電流は静電気では一瞬、電圧は数千ボルトでも、電流は数ミリアンペア(p158)
・雷が落ちても車の中にいれば安全、雷電流は車体やゴムの表面を流れるため、これを静電遮蔽という(p160)
・1944年秋から45年春にかけて放たれた9000個の風船爆弾は、1割ほどがアメリカ本土に着いた(p194)
・砂のおもり(バラスト砂)の分析をすることで砂の製造地を5か所に絞り、偵察機を飛ばして放流地を特定し、末期には風船の上昇中に殆ど米国機に撃ち落された(p196)
2012年4月8日作成