香月夕花のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
できれば嘘なんてつかないで生きていきたいけど、
そんなお行儀良く世の中は出来上がっていないし
相手の為につく嘘だって確かにある。
この小説、まぼろしの様な嘘と夢の様な妄想で溢れていて
後半は膨らみ過ぎた嘘で
読んでいるこちらが窒息してしまいそうになる。
愛が欲しくて嘘をつくのも、自分を特別に見せたくてつく嘘もわかる。
しかし、どう考えても嘘八百としか思えない言葉を安々と信じてしまう人たちって何なんだろうと
ずっと不思議に思っていた。
そうか、自分の思考を停止して誰かの言葉を丸ごと信じてしまえば自分の荷物は軽くなるのか。
たくさんの嘘をついてしまった主人公の女性の言葉の中にも、
ちゃんと愛があっ -
Posted by ブクログ
ネタバレ他人に触れてほしくない心の暗い部分を描いた内容が多く、個人的には読んでいて苦しかった。
特に「水風船が壊れる朝に」は、何の苦労もなく生きてきたように見える天海に対し、深く傷ついている澪の八つ当たりのようなシーンは読んでいて澪の気持ちも天海の気持ちも考えるととても苦しかった。
「水に立つ人」も、アルバムを置いていなくなった葛城の死を認めることができず、一瞬葛城の幻を見る。やっと本当に他者を愛することができるとわかった矢先のことで、主人公の気持ちを想像すると本当に辛いと思った。あまりに幻を見るシーンがリアルなので、小説によくあるあり得ない展開なのか、と思ったがそうはならないあたり、現実味を感じられ -
Posted by ブクログ
『病みついた誰かを魔法のように癒やすことなんて出来ない』
『あんたは話題が少ないわね。なんて言うか、特徴がないのよ』
『本当に向いてることも、本当にやりたいことも、大概の人にはないんだって』
『星はいいよ…決まった時間に必ず決まった場所にいるわけだし』
『生きている人間を支えてくれるのなら、幻にだって意味があるはずです。現実に影響を与えているんだから、むしろ本当に生きていると言ってもいい』
音楽療法士を目指す音大生の真尋。実習先の診療所にやってくるクライエントを様々な楽器を用いて治療する。楽器を奏で幻を作り、心を闇から救い出そうとする。だが、本当に治療が必要なのは…
登場人物はみな心に闇を -
Posted by ブクログ
小学生4人が、30年前にマンションの最上階で出会った悲しい目をした男性の、不吉な世界の終りの予言。大人になった彼らの世界は少しづつ何かが欠けていて、30年前の予言が妙に気に掛かってしまう。またあの男に会えば何かが分かるのではないか・・・。
登場人物4人の連作集で、誰も彼も人生少しづつ上手くいっていないです。破綻している訳ではないけれど、首の皮一枚で転落していきそうな危うさがあります。
小さな綻びから大事な何かが抜け落ちていく感覚。こんなはずではなかったという悔恨。
そんな中からも何とか自分の人生を良いものにしようと足掻く勇気。それがこの本の中にはあります。
いい年になってしまったかつての子供 -
Posted by ブクログ
タイトルに引かれて購入した。現在の世を言い当てているようなタイトルだ…
世界は昨日壊れはじめた。でも、私たちはこの世界で最後まで生き続けなければならない。他に生きる場所はなく、生き抜くことが私たちに与えられた役割だから。
著者の作品は初めて読んだ。
読み始めの数ページは、文章が凝り過ぎているように感じてなかなか入り込めなかったが、その後は話の展開に引き込まれていった。ただ、全体にやや意図的過ぎる展開なので、もう少し自然なもののほうが味わい深くなると思った。
「けれども私の小さな悲しみは、語られることのないまま闇に葬られてしまった。私の痛みは些細なことだから、なるべく黙っていなければならない -
Posted by ブクログ
父親の再婚相手、継母の毒牙にかかって思い悩む男子高校生の話。生まれたばかりの弟がもしかしたら自分の息子かもしれない、だなんてとんでもない展開に仰天しました。
これは間違った愛だと、家を飛び出して雨宮というガラス工芸師のところに住み込みで働くようになった元基。継母であるスミレを遠ざけるのに、反面抗いようもなく求め彼女の来訪を待ち続けてしまう姿は可哀想でしかたなかった。
スミレという女は、とことんミステリアスで幻想めいていた。退屈な日常に惓んでトラブルが起こりはしないかと舌舐めずりしながら男を誑かしまくっている悪女。
行くあてのない元基を保護してやっていたカフェ・ヘイナのマスターとの関係が明らかに