香月夕花のレビュー一覧

  • あの光

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    自業自得とも思える転落劇に終始胸がざわついた。

    主人公はハウスクリーニング会社を辞め「開運お掃除サービス」を立ち上げた高岡紅。
    母親からの愛情欠乏を埋めるかのように居場所を求め、承認欲求はエスカレートしていく。

    事業が成功していくに連れ、当初抱いていた「誰かの為に」という志は消え去り、縋って来る会員達を根拠のない言葉で操るさまはニセ宗教の教祖にしか見えない。

    脳内で、洗脳・詐欺の言葉が渦巻いて今後訪れる未来に悪い予感しかしなかった。

    成功も破滅も経験し、人の痛みに気付けた彼女であれば再び光を感じる事が出来るはずだ。

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    2023年10月30日
  • やわらかな足で人魚は

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    切ない短編集。

    人魚姫が王子を刺せなかったなんて、やっぱりウソだ。いつの間に引っ張り出したのか、赤い万能ナイフは陽の手の中にあったー「やわらかな足で人魚は」

    文章・言葉使いが好き。

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    2022年11月06日
  • 昨日壊れはじめた世界で

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    “世界が壊れる”と言うとなんだかんだ大掛かりなことに聞こえるけど、実際は些細な行動や言動で簡単に自分の世界が壊れてしまったり、元々壊れていたりするんだな……って思ったよ。
    ちなみに私は律子が好きですね。

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    2022年05月22日
  • やわらかな足で人魚は

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    "はじめまして"の香月夕花さんは、とても印象深かった。 この文章、好みです。

    離婚・貧困・不登校・犯罪など、愛不在の悲しい子どもたち・大人たち。心やすらげる居場所がない。
    そんな哀しみをまとった人々の物語。

    でも、哀しいだけの物語ではない。温かさがある。
    だが、物語は、憐れみなどいらないとばかりに、淡々と進んで行く。
    そこに、わたしの感情は無く、物語を淡々と追う。
    そして、ラスト、"あぁそうくるか"と、納得、わたしの心は息を吹き返し、鮮やかな色に染まる。淡い淡いピンクに、明るいブルーに、といった具合に。 

    そんな風に感じさせてくれる香月夕花さんの文

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    2021年10月31日
  • 昨日壊れはじめた世界で

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    5名の中学生、園辺大介、仰木翔子、武元律子、小菅稔、皆川恵が、新築のマンションの最上階で痩せこけた男に会った話をベースに各人のその後の人生を描写した物語だが、このような構成の5連作は意外性があり楽しめた.大介と妻の間に微妙な風を送り込んだ翔子の行動、全盲の日渡絵麻をサポートする窃盗症の稔の葛藤、父の破産で苦労の末税理士として生きている律子、貧しい生活の中でうごめく恵に寄り添う美作神父.「春の断崖」で形ばかりの同窓会で恵の"空の青"の話が飛び出した場面がなぜか印象的だった.

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    2021年03月07日
  • 見えない星に耳を澄ませて

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    人は誰しもこころのどこかに影があるのかなと感じた作品。一人一人が持っている闇が重くて、心がそちらへつられていきます。重いものを抱えている人が多く登場するので、喫茶店のマスターの言葉や主人公の友人に少し癒されます。
    最後の数ページでさらに心に重くなりました。でも気になって一気に読んでしまった。

    音楽や楽器のことを全くわからなかったので、どんな形か想像しながら、気になったら調べて読み進めていくのが楽しかった

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    2021年02月21日
  • 見えない星に耳を澄ませて

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    人を癒したり元気にしたり…偉大な力をもっている音楽。物語のように共感してくれる音楽療法士がいたらいいなあ、と思いました。

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    2021年02月08日
  • 昨日壊れはじめた世界で

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    ネタバレ

    なにか悲しい感じがじんわりとどこかに残る感じの内容。
    確かに小さな過ちを犯した登場人物もいたが、「自分が選んだことだろう」と責められるようなことではなく。親が子供に与える影響の大きさを改めて感じた。
    あと、善人のような顔をした教会のおばさんたち、結局自分たちと同種の人以外には拒絶反応があって、自分たちが「助けよう」と思っている対象ではないと本当に今切実に困っている子供がいても平気で切り捨てていて。でも、そういう人いるよなぁと思ったり。
    最上階で出会った男は、結局何者だったのだろう....

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    2020年10月23日
  • 昨日壊れはじめた世界で

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    街の再開発で書店閉店を余儀なくされた書店店主の大介が、幼馴染の翔子と出会うことで、30年前の小学生時代に街の大きなマンションへ同級生4人で忍び込んだ「忘れかけていた記憶」が蘇る。そのマンションの最上階にいた男は「世界の終わり」を予言していた… 読んでいるうちにいろいろと既視感的なものもあり、(少しホラーっぽい要素もあるので)ゾクゾクしながら読めた。幼少時代の記憶が呼び覚まされ、過去に仲の良かった友人に会いたくなる気持ちにさせてくれる作品。

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    2020年08月19日
  • 永遠の詩

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    初出 2017年「オール讀物」

    高校生だった元基が20代の継母希帆との肉体関係を持ち、生まれた弟が自分の子供だと仄めかされ、苦しんで家を出る。
    雇ってくれたガラス工房の雨宮もまた、自分が兄の子であろうことを、母が兄を愛していたことを知って鬱屈を抱えてきていた。
    信頼していたバイト先のカフェの優しいマスター倫夫が事故死し、裏でたくさんの女性関係があって、希帆もその中にいて事故死のきっかけを作ったことに衝撃を受け、希帆への思慕を断ち切って溶けたガラスに向かう。

    十代の義理の息子の子を産む二人の母親が登場し、雨宮の方は純愛っぽく描かれるがおかしくないか?
    他方の希帆は、子供の頃から男の弱みを見抜

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    2018年11月22日
  • やわらかな足で人魚は

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    ネタバレ

    短編集だけど、どれも寂しかったり悲しかったり。
    ここ最近自分が穏やかに過ごせているので、あまりいい気分ではなかったかな。解説で他者の悲しみを知ることが時に大きな重荷になるという話があったけど、それだったな。

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    2025年09月29日
  • あの光

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    随分前に、鈴木保奈美さん司会の「あの本読みました?」で紹介されていた本です。掃除することで開運するというセミナーを開きカリスマ的な支持を持った主人公がある事をきっかけにそこに真実がないことが世間に知らしめられ、あっという間に奈落の底に堕ちていく。でも、それでも微かな救いの光が…
    虚構と分かりながらそれでもカリスマと振る舞う主人公。それに対して信じ切って縋る人々。どこかの信仰宗教もそんな関係なんでしょうね。それに縋る人々にとっては、それでも一時の安寧が得られれば価値があることなのかも知れません。

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    2025年09月12日
  • 見えない星に耳を澄ませて

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    治療の一環として音楽を用いて訪れる人達の心に安らぎを与える。自身も家族との関係性についてモヤモヤを抱える。クライアントのやり取りの中で自省を深めていく。
    綺麗な作品でした。

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    2025年09月08日
  • やわらかな足で人魚は

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    *一体どうしたら自分は人間になれるのだろう。当たり前に愛される人間の子供に。
    タワマンを舞台に電話詐欺の嘘によって結びつく偽物の母と息子。“前科”のある中学教師と孤独な少女。悲しみを抱えた二人が出会うとき、世界は色を変える。
    『昨日壊れはじめた世界で』が話題沸騰のオール讀物新人賞作家の、痛々しいほど危うく美しい傑作短編集*

    初めて読む作家さん。
    哀しみをふわふわと漂うように描くのが上手だなあと言うのが第一印象です。
    繊細で掴みどころのない空気感が独特。
    感性が合う方には心に響くんだろうなあ…

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    2025年01月15日
  • あの光

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    語り上手な女性が、始めは相手のためを思って使っていたその能力を、いつの間にか自分のために使うようになって、引き返せないところまで行ってしまうお話。
    最近思うのは話の真偽と説得力って比例しないということ。ゆえに語りが上手い人はどこまでも行けちゃう。
    主人公の自己肯定感の低さに嫌気を感じながらも、共感できたのはこのセリフ。”愛情の薄さってね、一緒にいる時間が長いほど効いてくるの。おろし金でずーっと心を削られてるみたいな感じ”

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    2024年11月17日
  • あの光

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    お掃除をすると開運につながる
    っていうのは
    もうだいぶ前から信じられている

    トイレの神様とか流行ったり

    徳を積むみたいなものだと

    ただそれをビジネスにしちゃうとは!

    某片付けアドバイザーを思い出したりしつつ
    最初の方は
    まあ掃除っていいことだし
    体動かして心身ともにスッキリするのはたしか

    うん、掃除しよ!
    とさえ思ったくらいで
    面白くよんでたけど

    お金取り出したのがな〜
    どんどん調子に乗っちゃったもんな〜
    そりゃ何様かってなるよな〜

    あと母親の彼氏?が
    イマイチなんなのかつかめなかった
    ため口でしゃべってるけど
    いくつくらい?
    なんかこの男のこと
    よくわからなかった

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    2024年09月15日
  • あの光

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    誰の人生にも起こりうる愛への飢えから生じる虚構
    自分に向き合うことの大切さ、弱くてダメな特別なんかじゃない自分を受け入れる強さを教えてくれました

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    2024年08月31日
  • あの光

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    最初は騙してやろうと思ってないのに、最後には大きなことになる。
    でも作者の言いたいことと違うと思うが、掃除は大事だと思った。

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    2024年07月30日
  • あの光

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    この本も暗闇に落ちそうで危ういところを渡っていく。主人公が周囲に祭り上げられて、お掃除と開運というキーワードで、心の傷を持っている人たちが救われそうな仕組みを作っていく。掃除と開運?どこかで聞いたような。あまりにもしっくりきて読み進めた。主人公が囚われていたものから解放されて、再度自分の人生を生き直すだろうな。と想像できるところで終わったので読後感は悪くない。でも、掃除をトキメキと結びつけていた実在の人物はどうなったんだろうとちょっと心配になってしまった。

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    2024年07月17日
  • あの光

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    とある界隈で話題になっていた本。
    高岡紅は開運お掃除サービスとして起業し、オンラインサロンや書籍出版・SNS・セミナーなどキラキラのポエムを発して会員を募ったものの、会員のトラブルが発端となり全てを失ってしまう。実際に無形商材を売ってポエムを発しているインフルエンサーも数知れず。主催者側の側面や、それを信じるユーザー側の側面で色々考えさせられます。本著の内容では極端だったが、お掃除×開運はあながち間違ってない気もします。

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    2024年06月18日