あらすじ
ハウスクリーニングサービスで働く高岡紅は、丁寧な仕事と気配りで依頼人からリピート指名が入るほど信頼を得ていた。だが、入社当時からさほど変わらぬ待遇や問題の多い部下に腐心する日々に疑問を抱いていた。
そんな折、母・奈津子から独立を後押しされ起業を決意する。仕事は軌道に乗り、リピート客である船場薫の強い勧めで新事業「開運お掃除サービス」を立ち上げる。薫の仕掛けで紅のブログがインフルエンサーの目に留まり、書籍化も決定。初セミナーも大成功を納め、カリスマ指導者として一躍時の人となった。
そんなある日、紅のメソッドを曲解した一部の会員の行動がSNSで批判され大炎上。窮地に追い込まれた紅は起死回生を試みるのだが……。
承認欲求と自己啓発の闇を撃つ問題作。
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Posted by ブクログ
小説には相性があるのだな。そう思わせてくれた一冊。自分にとっては示唆に富むエンターテイメント性に溢れた読書体験だった。
テレビで紹介されていて興味を持ち、著者の名前を初めて知った。
ストーリーとしては、清掃業を生業にする生真面目な女性が、ひょんなことから開運セミナー講師として有名になり、最後は事業に失敗して…、という栄枯盛衰の物語。
ストーリーにメリハリがあり、登場人物たちの奇妙な選択にも説得力がある。文章も癖が無く、疲れた頭にもスルスルと入って来る。モチーフもオンラインサロンや、自己啓発セミナーといった現代的な材料だ。
一気読みした読後感は、質の高い邦画を観た後のような感覚だった。
なぜこの著者が無名なのだろう。何かのきっかけで一気に人気作家になると思う。例えば映画化、とか。
こういう作品に出逢えるから他人のお勧めは読んでみるべきだ。
Posted by ブクログ
読みごたえがあった1冊だった。開運とお掃除と聞いたら、私もはまるかもと思った。脚光を浴びてやめられなくなる様子や、自己啓発セミナーに、はまっていく感じが巧みに描かれていた。高岡紅が本当に求めていたものが手に入ったときに、後戻りができなくなっていたのは、なんとも言えない気持ちになった。全てを失くしても、母親に求めていたものを歓心なく人に与えられる日がいつかくることを願った。
Posted by ブクログ
現代人は、日常的に生存そのものを脅かされることがおよそなくなった。一方で、自身の生に意味を与えようと「承認欲求」を日々増殖させている。
本作は、この厄介な「承認欲求」を鍵に、信じる側、信じさせる側双方の思いの相乗効果が作り上げた小さな虚構の王国の盛衰記である。
ハウスクリーニング会社から独立をはたした主人公高岡紅は、ある日、汚部屋のクライアントから悩みの相談を受け、掃除と開運を結び付けたアドバイスをする。
それがたまたま功を奏したことから、彼女は、クライアントたちから奉られ、あれよあれよと新興宗教まがいのオンラインサロンの巫女に祭り上げられる。
しかし、嘘を重ねて固められた砂の城は、一部の信者の暴走であえなく崩壊する。廃墟の中から主人公が見つけた「あの光」とは何だったのか。
心に闇を抱える登場人物たちの移ろいゆく心理や、一度、流れができると教祖すら神輿につかまり続け、偽りを演じ続けざるを得ない集団心理の恐ろしさを巧みな描写し、クライマックスに向けて、息もつかせぬドラマ展開を見せる筆致は、まさに見事の一言に尽きる。
300ページを超える大作だが、ページをめくる手を全く止めさせない。
私たちは、スマホと対峙しながら、主体的に情報を取得しているつもりだが、実はいつの間にか秒刻みで与えられる情報の洪水に翻弄され、考えることを放棄させられている。
本作は、誰かが道を示し、手を引いて、心の空白を満たしてくれることを待ち望みながら立ちすくむだけで、自分で歩く力を失いがちな私たちの鏡に映された本当の姿をまざまざと見せてくれると感じた。
Posted by ブクログ
地道にハウスクリーニングの仕事をしていた主人公が、自分の発した言葉をきっかけに、新たなビジネスに巻き込まれていく。
体を使って片付け作業をする仕事から実体のないある種の虚業とも言える開運ビジネス。
虚業だとわかっていても、誰かの言葉を信じたい心の弱さ、藁をもすがりたい辛いことが起きる不条理、誰もが人生で直面するもの。
私自身も心が揺れたときに、街の占いをやってみたくなることもあった。誰かの言葉に背中を押されたい心理がわかるだけに、何かに頼りすぎる怖さが身に染みました。
一方で、自分の言葉を信じ切れない心をごまかしながら、後戻りできなくなっていく主人公が、破綻していく過程の怖さにもぞわぞわし、終盤は自分がその場にいるような気持ちで凍りつきそうに。
言葉が掬い上げられ、良いことも炎上もあっという間に拡大していくSNSの怖さも。
脆くて弱い人の心を様々な角度から見させられ、自分を信じることの難しさ、人生の責任を自分で取ることの重さを感じ。。
母に愛されたかった、見返したかった、自分を愛したかった主人公が最後に自分を信じ光を感じられたことで救われた思いがしました。
Posted by ブクログ
風水をベースに掃除をする事により開運を期待するサロンを運営していく物語。
序盤は、自己啓発本の様な感じでストーリーが進む。
この小説では、根拠が無いが掃除すると良い事が訪れる事をネタとして起業する。
でも、少しは根拠となるものがある様な気がしている。
掃除に集中する事でネガティブな思考を抑制し、考え方をポジティブにさせ、小さな良い事に気づける様になる。
掃除→開運はあり得ると思う。
ただ、掃除でなくても、何かに集中できるものがあれば、開運は可能だと思う。
物語はトントン拍子にサロンは拡大していくが、何か事件が起きそうな雰囲気に。
サロンでトラブルが発生し、母譲りの屁理屈上手で相手をコントロールする能力に長けた主人公の紅が謝罪する事になる。
でも謝罪は失敗しサロンも無くなる。
話上手なのに、『私は悪く無い』と言ってしまうところに危機管理の意識の無さを感じた。
それでも日々不安を感じていたのは、紅以外居なかった。
幸村?の様な人が近くに居たら状況は変わっていたはず。
栄枯盛衰。
自分を絶対に裏切らないと思っていた人は離れ、馬鹿正直な対応でサロンを潰す原因となった人が最後には紅の理解者となる大どんでん返し。
振り出しに戻ったが、次へのステップを予感させる。
奥深さを感じる小節でした。
Posted by ブクログ
「開運お掃除サービスの栄光と転落」というきな臭さに惹かれて一気読み。ハウスクリーニング業者で地道に働いていた女性が独立を決意。掃除すればもれなく開運すると銘打ちオンラインサロンも開設。徐々に話題になりやがてカリスマ化するものの栄光は長く続かなかった。案の定、という展開だが面白かった。詭弁だらけだが掃除すれば心もスッキリするのは一理あるな、と多少は説得力がある所がよかった。最終的にはペテン師まがいの弁舌に苦笑い。それでも主人公は嫌いになれなかった。人に喜んでもらいたい、という思いに嘘は感じられなかったから。
Posted by ブクログ
お掃除の達人としてオンラインセミナーを開き、会員の共感と承認欲求を煽る啓発活動を行い徐々に強大化してく組織。
いつしか教祖様的なポジションとなり、運気があがると噂される様々なメソッドという名の屁理屈のジャングルジムを構築。
その先に待っているものは・・・。膨れ上がる組織が暴走したら後はもう滅びる一方で、立て直しも上手く行かず、起死回生の一手は嘘で嘘をどんどん上塗りしていくという愚策の中の愚策。
そしてその嘘も露見された事ですべてが終わってしまった。
その中でも本当に掬われた人もいるのが紅にとって何を思ったのだろう。
現代社会に蔓延る闇について勉強出来る一冊
Posted by ブクログ
掃除をする事が開運につながるというサロンとセミナーの栄枯盛衰物語。
人が何かを祈り縋る事は、簡単にバカにできることではない。周りから見て胡散臭くとも、救われている本人にとっては大切な居場所だと思う。認められたい、何かと繋がっていたいと誰しもが思う。
しかし、嘘が大きくなり、その事を詐欺に近い商売にし、人や社会を攻撃する力にまでなると話は全く違う。信じ祈る事に純化した宗教のようなものでも時に陥るこのような状況は、やはり人には欲があるからだと思う。欲はある意味人を人たらしめるもの。だからこそ、救いを標榜するときは、指導するものの人としてのあり方が問われる。
抗えない光に導かれてたどり着いた自分の状況の中で、
「光は私の中にある。それは多分、誰にも奪えないものだ。」
と思えた事が救いだった。
Posted by ブクログ
自業自得とも思える転落劇に終始胸がざわついた。
主人公はハウスクリーニング会社を辞め「開運お掃除サービス」を立ち上げた高岡紅。
母親からの愛情欠乏を埋めるかのように居場所を求め、承認欲求はエスカレートしていく。
事業が成功していくに連れ、当初抱いていた「誰かの為に」という志は消え去り、縋って来る会員達を根拠のない言葉で操るさまはニセ宗教の教祖にしか見えない。
脳内で、洗脳・詐欺の言葉が渦巻いて今後訪れる未来に悪い予感しかしなかった。
成功も破滅も経験し、人の痛みに気付けた彼女であれば再び光を感じる事が出来るはずだ。
Posted by ブクログ
随分前に、鈴木保奈美さん司会の「あの本読みました?」で紹介されていた本です。掃除することで開運するというセミナーを開きカリスマ的な支持を持った主人公がある事をきっかけにそこに真実がないことが世間に知らしめられ、あっという間に奈落の底に堕ちていく。でも、それでも微かな救いの光が…
虚構と分かりながらそれでもカリスマと振る舞う主人公。それに対して信じ切って縋る人々。どこかの信仰宗教もそんな関係なんでしょうね。それに縋る人々にとっては、それでも一時の安寧が得られれば価値があることなのかも知れません。
Posted by ブクログ
語り上手な女性が、始めは相手のためを思って使っていたその能力を、いつの間にか自分のために使うようになって、引き返せないところまで行ってしまうお話。
最近思うのは話の真偽と説得力って比例しないということ。ゆえに語りが上手い人はどこまでも行けちゃう。
主人公の自己肯定感の低さに嫌気を感じながらも、共感できたのはこのセリフ。”愛情の薄さってね、一緒にいる時間が長いほど効いてくるの。おろし金でずーっと心を削られてるみたいな感じ”
Posted by ブクログ
お掃除をすると開運につながる
っていうのは
もうだいぶ前から信じられている
トイレの神様とか流行ったり
徳を積むみたいなものだと
ただそれをビジネスにしちゃうとは!
某片付けアドバイザーを思い出したりしつつ
最初の方は
まあ掃除っていいことだし
体動かして心身ともにスッキリするのはたしか
うん、掃除しよ!
とさえ思ったくらいで
面白くよんでたけど
お金取り出したのがな〜
どんどん調子に乗っちゃったもんな〜
そりゃ何様かってなるよな〜
あと母親の彼氏?が
イマイチなんなのかつかめなかった
ため口でしゃべってるけど
いくつくらい?
なんかこの男のこと
よくわからなかった
Posted by ブクログ
誰の人生にも起こりうる愛への飢えから生じる虚構
自分に向き合うことの大切さ、弱くてダメな特別なんかじゃない自分を受け入れる強さを教えてくれました
Posted by ブクログ
この本も暗闇に落ちそうで危ういところを渡っていく。主人公が周囲に祭り上げられて、お掃除と開運というキーワードで、心の傷を持っている人たちが救われそうな仕組みを作っていく。掃除と開運?どこかで聞いたような。あまりにもしっくりきて読み進めた。主人公が囚われていたものから解放されて、再度自分の人生を生き直すだろうな。と想像できるところで終わったので読後感は悪くない。でも、掃除をトキメキと結びつけていた実在の人物はどうなったんだろうとちょっと心配になってしまった。
Posted by ブクログ
とある界隈で話題になっていた本。
高岡紅は開運お掃除サービスとして起業し、オンラインサロンや書籍出版・SNS・セミナーなどキラキラのポエムを発して会員を募ったものの、会員のトラブルが発端となり全てを失ってしまう。実際に無形商材を売ってポエムを発しているインフルエンサーも数知れず。主催者側の側面や、それを信じるユーザー側の側面で色々考えさせられます。本著の内容では極端だったが、お掃除×開運はあながち間違ってない気もします。
Posted by ブクログ
結末はなんとなく想像がついたが
徐々に話が盛り上がり最後まで読めました
掃除は大事と昔から言われているので
自分も定期的にしようかなと思います
Posted by ブクログ
できれば嘘なんてつかないで生きていきたいけど、
そんなお行儀良く世の中は出来上がっていないし
相手の為につく嘘だって確かにある。
この小説、まぼろしの様な嘘と夢の様な妄想で溢れていて
後半は膨らみ過ぎた嘘で
読んでいるこちらが窒息してしまいそうになる。
愛が欲しくて嘘をつくのも、自分を特別に見せたくてつく嘘もわかる。
しかし、どう考えても嘘八百としか思えない言葉を安々と信じてしまう人たちって何なんだろうと
ずっと不思議に思っていた。
そうか、自分の思考を停止して誰かの言葉を丸ごと信じてしまえば自分の荷物は軽くなるのか。
たくさんの嘘をついてしまった主人公の女性の言葉の中にも、
ちゃんと愛があったことが一筋の光のように
心に残りました。