あらすじ
ハウスクリーニングサービスで働く高岡紅は、丁寧な仕事と気配りで依頼人からリピート指名が入るほど信頼を得ていた。だが、入社当時からさほど変わらぬ待遇や問題の多い部下に腐心する日々に疑問を抱いていた。
そんな折、母・奈津子から独立を後押しされ起業を決意する。仕事は軌道に乗り、リピート客である船場薫の強い勧めで新事業「開運お掃除サービス」を立ち上げる。薫の仕掛けで紅のブログがインフルエンサーの目に留まり、書籍化も決定。初セミナーも大成功を納め、カリスマ指導者として一躍時の人となった。
そんなある日、紅のメソッドを曲解した一部の会員の行動がSNSで批判され大炎上。窮地に追い込まれた紅は起死回生を試みるのだが……。
承認欲求と自己啓発の闇を撃つ問題作。
感情タグBEST3
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Posted by ブクログ
地道にハウスクリーニングの仕事をしていた主人公が、自分の発した言葉をきっかけに、新たなビジネスに巻き込まれていく。
体を使って片付け作業をする仕事から実体のないある種の虚業とも言える開運ビジネス。
虚業だとわかっていても、誰かの言葉を信じたい心の弱さ、藁をもすがりたい辛いことが起きる不条理、誰もが人生で直面するもの。
私自身も心が揺れたときに、街の占いをやってみたくなることもあった。誰かの言葉に背中を押されたい心理がわかるだけに、何かに頼りすぎる怖さが身に染みました。
一方で、自分の言葉を信じ切れない心をごまかしながら、後戻りできなくなっていく主人公が、破綻していく過程の怖さにもぞわぞわし、終盤は自分がその場にいるような気持ちで凍りつきそうに。
言葉が掬い上げられ、良いことも炎上もあっという間に拡大していくSNSの怖さも。
脆くて弱い人の心を様々な角度から見させられ、自分を信じることの難しさ、人生の責任を自分で取ることの重さを感じ。。
母に愛されたかった、見返したかった、自分を愛したかった主人公が最後に自分を信じ光を感じられたことで救われた思いがしました。
Posted by ブクログ
風水をベースに掃除をする事により開運を期待するサロンを運営していく物語。
序盤は、自己啓発本の様な感じでストーリーが進む。
この小説では、根拠が無いが掃除すると良い事が訪れる事をネタとして起業する。
でも、少しは根拠となるものがある様な気がしている。
掃除に集中する事でネガティブな思考を抑制し、考え方をポジティブにさせ、小さな良い事に気づける様になる。
掃除→開運はあり得ると思う。
ただ、掃除でなくても、何かに集中できるものがあれば、開運は可能だと思う。
物語はトントン拍子にサロンは拡大していくが、何か事件が起きそうな雰囲気に。
サロンでトラブルが発生し、母譲りの屁理屈上手で相手をコントロールする能力に長けた主人公の紅が謝罪する事になる。
でも謝罪は失敗しサロンも無くなる。
話上手なのに、『私は悪く無い』と言ってしまうところに危機管理の意識の無さを感じた。
それでも日々不安を感じていたのは、紅以外居なかった。
幸村?の様な人が近くに居たら状況は変わっていたはず。
栄枯盛衰。
自分を絶対に裏切らないと思っていた人は離れ、馬鹿正直な対応でサロンを潰す原因となった人が最後には紅の理解者となる大どんでん返し。
振り出しに戻ったが、次へのステップを予感させる。
奥深さを感じる小節でした。
Posted by ブクログ
お掃除の達人としてオンラインセミナーを開き、会員の共感と承認欲求を煽る啓発活動を行い徐々に強大化してく組織。
いつしか教祖様的なポジションとなり、運気があがると噂される様々なメソッドという名の屁理屈のジャングルジムを構築。
その先に待っているものは・・・。膨れ上がる組織が暴走したら後はもう滅びる一方で、立て直しも上手く行かず、起死回生の一手は嘘で嘘をどんどん上塗りしていくという愚策の中の愚策。
そしてその嘘も露見された事ですべてが終わってしまった。
その中でも本当に掬われた人もいるのが紅にとって何を思ったのだろう。
現代社会に蔓延る闇について勉強出来る一冊