香月夕花のレビュー一覧
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小説には相性があるのだな。そう思わせてくれた一冊。自分にとっては示唆に富むエンターテイメント性に溢れた読書体験だった。
テレビで紹介されていて興味を持ち、著者の名前を初めて知った。
ストーリーとしては、清掃業を生業にする生真面目な女性が、ひょんなことから開運セミナー講師として有名になり、最後は事業に失敗して…、という栄枯盛衰の物語。
ストーリーにメリハリがあり、登場人物たちの奇妙な選択にも説得力がある。文章も癖が無く、疲れた頭にもスルスルと入って来る。モチーフもオンラインサロンや、自己啓発セミナーといった現代的な材料だ。
一気読みした読後感は、質の高い邦画を観た後のような感覚だった。
な -
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現代人は、日常的に生存そのものを脅かされることがおよそなくなった。一方で、自身の生に意味を与えようと「承認欲求」を日々増殖させている。
本作は、この厄介な「承認欲求」を鍵に、信じる側、信じさせる側双方の思いの相乗効果が作り上げた小さな虚構の王国の盛衰記である。
ハウスクリーニング会社から独立をはたした主人公高岡紅は、ある日、汚部屋のクライアントから悩みの相談を受け、掃除と開運を結び付けたアドバイスをする。
それがたまたま功を奏したことから、彼女は、クライアントたちから奉られ、あれよあれよと新興宗教まがいのオンラインサロンの巫女に祭り上げられる。
しかし、嘘を重ねて固められた砂の城は、一部の -
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初読みの香月さん♬とても良かった〜!
5編の短編集です。
なんとなく柔らかくて優しいイメージを勝手に抱いてたけど、描いてたイメージとはちょっと違ってわりとビターな印象でした。
それぞれの主人公の「悲しみ」を描いた作品。
香月さんの描く文章が凄く好きでした。
直接的に感情に訴えかけてくる様な感じではなく、むしろ穏やかなんだけどじんわり心に残るというか、、。
うまく言えないけれど、静かに余韻が残る感じが絶妙に好きでした!
どの話も良かったけど、私は表題作の「やわらかな足で人魚は」が1番良かったな♡♡
あ〜、また1人好きな作家さんが増えてしまった〜\♡/" -
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マンションの最上階での小さな冒険の過去を共有するクラスメート5人の生きざまを、5つの短編の中で、美しい情景描写を交えて、繊細な筆致で色鮮やかに描き出している。
ロスジェネ世代の彼・彼女らの人生は、決して平坦な道のりではなく、今も、離婚、子供との別居、離職、依存症、介護など様々な問題に直面し、自分との折り合いもつかず傷つき続けている。
過去のどこかで道を間違え、その後の小さな積みかさねから、思ってもみなかった今の場所にやってきてしまったとしても、正しい道に戻る術に気づくことができれば、もう傷つかなくて済むのではないか。誰か導いてくれないだろうか。と、登場人物も含めみな思うだろう。しかし、作者は、 -
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ネタバレ5人それぞれの人物の思いや考えの描写が鋭い。
5人の子供達はそれぞれが,辛い経験をしながら大人になっていく。その1つ1つが重く,性格もみんな違うのだけど,その5人の経験のどこかしらが自分の経験の断片に重なる部分があり,とても考えさせられた。
誰かにとって最良の人が、他の誰かにとっては最悪の人であることは,世の中に無い事ではないかもしれないが,これは切なすぎた。
どこかでこうしてれば何かが変わったのかもしれないと思うことは誰しもあると思うけど,どうしても変えられない事もある気がする。
情景がしっくりくると思ったら作者の香月さんとは同い年でした。きっと主人公達とも同じ時代を自分も生きてきたから, -
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ネタバレ地道にハウスクリーニングの仕事をしていた主人公が、自分の発した言葉をきっかけに、新たなビジネスに巻き込まれていく。
体を使って片付け作業をする仕事から実体のないある種の虚業とも言える開運ビジネス。
虚業だとわかっていても、誰かの言葉を信じたい心の弱さ、藁をもすがりたい辛いことが起きる不条理、誰もが人生で直面するもの。
私自身も心が揺れたときに、街の占いをやってみたくなることもあった。誰かの言葉に背中を押されたい心理がわかるだけに、何かに頼りすぎる怖さが身に染みました。
一方で、自分の言葉を信じ切れない心をごまかしながら、後戻りできなくなっていく主人公が、破綻していく過程の怖さにもぞわぞ -
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ネタバレ風水をベースに掃除をする事により開運を期待するサロンを運営していく物語。
序盤は、自己啓発本の様な感じでストーリーが進む。
この小説では、根拠が無いが掃除すると良い事が訪れる事をネタとして起業する。
でも、少しは根拠となるものがある様な気がしている。
掃除に集中する事でネガティブな思考を抑制し、考え方をポジティブにさせ、小さな良い事に気づける様になる。
掃除→開運はあり得ると思う。
ただ、掃除でなくても、何かに集中できるものがあれば、開運は可能だと思う。
物語はトントン拍子にサロンは拡大していくが、何か事件が起きそうな雰囲気に。
サロンでトラブルが発生し、母譲りの屁理屈上手で相手をコントロ -
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ネタバレお掃除の達人としてオンラインセミナーを開き、会員の共感と承認欲求を煽る啓発活動を行い徐々に強大化してく組織。
いつしか教祖様的なポジションとなり、運気があがると噂される様々なメソッドという名の屁理屈のジャングルジムを構築。
その先に待っているものは・・・。膨れ上がる組織が暴走したら後はもう滅びる一方で、立て直しも上手く行かず、起死回生の一手は嘘で嘘をどんどん上塗りしていくという愚策の中の愚策。
そしてその嘘も露見された事ですべてが終わってしまった。
その中でも本当に掬われた人もいるのが紅にとって何を思ったのだろう。
現代社会に蔓延る闇について勉強出来る一冊
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掃除をする事が開運につながるというサロンとセミナーの栄枯盛衰物語。
人が何かを祈り縋る事は、簡単にバカにできることではない。周りから見て胡散臭くとも、救われている本人にとっては大切な居場所だと思う。認められたい、何かと繋がっていたいと誰しもが思う。
しかし、嘘が大きくなり、その事を詐欺に近い商売にし、人や社会を攻撃する力にまでなると話は全く違う。信じ祈る事に純化した宗教のようなものでも時に陥るこのような状況は、やはり人には欲があるからだと思う。欲はある意味人を人たらしめるもの。だからこそ、救いを標榜するときは、指導するものの人としてのあり方が問われる。
抗えない光に導かれてたどり着いた自分