香月夕花のレビュー一覧

  • やわらかな足で人魚は

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    前話から何かしらモチーフが引き継がれていく構成で、直接登場人物たちに面識はなくても、同じ哀しみを持った人々の物語だとわかる構成が綺麗だと感じた。

    『彼女の海に沈む』は、教師の「余計なことかもしれない」という過去の失敗からくる躊躇いに「わかる」と頷いていたら、思わぬ方に話が転がって驚いた。

    一番ぐっと来たのは、『水に立つ人』。
    「誰にも傷つけられないかわりに誰もすきになれなくなった」という一説には、身につまされるものがあった。

    どのお話も主人公の心理描写が繊細で、それが正負どちらの感情でも深い共感を覚えた。

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    2024年09月23日
  • あの光

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    よくこんな設定の物語が思いつくよね。面白いとも違う泣けるとも違う元気になるとも違う。大変考えさせられる物語でした。今年最高な物語かも…

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    2024年08月31日
  • あの光

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    小説には相性があるのだな。そう思わせてくれた一冊。自分にとっては示唆に富むエンターテイメント性に溢れた読書体験だった。

    テレビで紹介されていて興味を持ち、著者の名前を初めて知った。

    ストーリーとしては、清掃業を生業にする生真面目な女性が、ひょんなことから開運セミナー講師として有名になり、最後は事業に失敗して…、という栄枯盛衰の物語。
    ストーリーにメリハリがあり、登場人物たちの奇妙な選択にも説得力がある。文章も癖が無く、疲れた頭にもスルスルと入って来る。モチーフもオンラインサロンや、自己啓発セミナーといった現代的な材料だ。
    一気読みした読後感は、質の高い邦画を観た後のような感覚だった。

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    2024年07月17日
  • あの光

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    読みごたえがあった1冊だった。開運とお掃除と聞いたら、私もはまるかもと思った。脚光を浴びてやめられなくなる様子や、自己啓発セミナーに、はまっていく感じが巧みに描かれていた。高岡紅が本当に求めていたものが手に入ったときに、後戻りができなくなっていたのは、なんとも言えない気持ちになった。全てを失くしても、母親に求めていたものを歓心なく人に与えられる日がいつかくることを願った。

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    2024年01月14日
  • あの光

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    現代人は、日常的に生存そのものを脅かされることがおよそなくなった。一方で、自身の生に意味を与えようと「承認欲求」を日々増殖させている。

    本作は、この厄介な「承認欲求」を鍵に、信じる側、信じさせる側双方の思いの相乗効果が作り上げた小さな虚構の王国の盛衰記である。

    ハウスクリーニング会社から独立をはたした主人公高岡紅は、ある日、汚部屋のクライアントから悩みの相談を受け、掃除と開運を結び付けたアドバイスをする。
    それがたまたま功を奏したことから、彼女は、クライアントたちから奉られ、あれよあれよと新興宗教まがいのオンラインサロンの巫女に祭り上げられる。
    しかし、嘘を重ねて固められた砂の城は、一部の

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    2023年10月20日
  • やわらかな足で人魚は

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    5つの短編から構成された本。
    どの話も良かったが、自分は特に4話目の水に立つ人がお気に入り。
    来るはずのない人を、全国各地の聖堂を巡りながら待つという、一見めちゃくちゃな女性教師の心境に強く共感した。
    香月夕花さんの本は、時に社会が抱える闇に鋭く切り込み、時に人間の心情を深く考察し、時に心を揺さぶる物語を書き。
    とても好きな作家さんの一人。
    これからも香月夕花さんの本を読んでいきたい。

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    2023年10月18日
  • 昨日壊れはじめた世界で

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    凄くいい。優しくて悲しくて切なくてあったかくて。少しずつ溶けていく。人は色んな面がある多面体なんだなぁ

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    2023年03月08日
  • 昨日壊れはじめた世界で

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    この現実でしかありえなかった5人の現実。それは耐え忍ぶには痛すぎて、忘れるには近すぎた。

    どちらも、どれも道なのだ。

    最後の一文は、あまりに痛切。

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    2023年02月19日
  • やわらかな足で人魚は

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    主人公の絶望に勝手にフタをしない書き手。つづられた物語は容赦がない。血の温もりで、硬直した心を溶かすように。

    「傷つけられたことへの補償はないのだ。たぶん、永遠に。悲しみは悲しみのまま残り、それでも人は生きていく。」

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    2023年02月19日
  • やわらかな足で人魚は

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    初読みの香月さん♬とても良かった〜!
    5編の短編集です。
    なんとなく柔らかくて優しいイメージを勝手に抱いてたけど、描いてたイメージとはちょっと違ってわりとビターな印象でした。
    それぞれの主人公の「悲しみ」を描いた作品。
    香月さんの描く文章が凄く好きでした。
    直接的に感情に訴えかけてくる様な感じではなく、むしろ穏やかなんだけどじんわり心に残るというか、、。
    うまく言えないけれど、静かに余韻が残る感じが絶妙に好きでした!

    どの話も良かったけど、私は表題作の「やわらかな足で人魚は」が1番良かったな♡♡

    あ〜、また1人好きな作家さんが増えてしまった〜\♡/"

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    2022年12月15日
  • 見えない星に耳を澄ませて

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    セラピーに来た人々の隠した感情に共鳴してしまう主人公が、感情に引っ張られすぎてしまうのでは?という危うさが感じられてしまった。
    陰のある三上先生よりカフェの七海さんのほうがセラピストっぽい。

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    2021年01月31日
  • 昨日壊れはじめた世界で

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    マンションの最上階での小さな冒険の過去を共有するクラスメート5人の生きざまを、5つの短編の中で、美しい情景描写を交えて、繊細な筆致で色鮮やかに描き出している。
    ロスジェネ世代の彼・彼女らの人生は、決して平坦な道のりではなく、今も、離婚、子供との別居、離職、依存症、介護など様々な問題に直面し、自分との折り合いもつかず傷つき続けている。
    過去のどこかで道を間違え、その後の小さな積みかさねから、思ってもみなかった今の場所にやってきてしまったとしても、正しい道に戻る術に気づくことができれば、もう傷つかなくて済むのではないか。誰か導いてくれないだろうか。と、登場人物も含めみな思うだろう。しかし、作者は、

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    2020年07月11日
  • 昨日壊れはじめた世界で

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    ネタバレ

    5人それぞれの人物の思いや考えの描写が鋭い。
    5人の子供達はそれぞれが,辛い経験をしながら大人になっていく。その1つ1つが重く,性格もみんな違うのだけど,その5人の経験のどこかしらが自分の経験の断片に重なる部分があり,とても考えさせられた。
    誰かにとって最良の人が、他の誰かにとっては最悪の人であることは,世の中に無い事ではないかもしれないが,これは切なすぎた。
    どこかでこうしてれば何かが変わったのかもしれないと思うことは誰しもあると思うけど,どうしても変えられない事もある気がする。

    情景がしっくりくると思ったら作者の香月さんとは同い年でした。きっと主人公達とも同じ時代を自分も生きてきたから,

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    2020年07月04日
  • あの光

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    ネタバレ

    地道にハウスクリーニングの仕事をしていた主人公が、自分の発した言葉をきっかけに、新たなビジネスに巻き込まれていく。

    体を使って片付け作業をする仕事から実体のないある種の虚業とも言える開運ビジネス。

    虚業だとわかっていても、誰かの言葉を信じたい心の弱さ、藁をもすがりたい辛いことが起きる不条理、誰もが人生で直面するもの。

    私自身も心が揺れたときに、街の占いをやってみたくなることもあった。誰かの言葉に背中を押されたい心理がわかるだけに、何かに頼りすぎる怖さが身に染みました。

    一方で、自分の言葉を信じ切れない心をごまかしながら、後戻りできなくなっていく主人公が、破綻していく過程の怖さにもぞわぞ

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    2024年10月29日
  • あの光

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    ネタバレ

    風水をベースに掃除をする事により開運を期待するサロンを運営していく物語。

    序盤は、自己啓発本の様な感じでストーリーが進む。
    この小説では、根拠が無いが掃除すると良い事が訪れる事をネタとして起業する。
    でも、少しは根拠となるものがある様な気がしている。
    掃除に集中する事でネガティブな思考を抑制し、考え方をポジティブにさせ、小さな良い事に気づける様になる。
    掃除→開運はあり得ると思う。
    ただ、掃除でなくても、何かに集中できるものがあれば、開運は可能だと思う。

    物語はトントン拍子にサロンは拡大していくが、何か事件が起きそうな雰囲気に。
    サロンでトラブルが発生し、母譲りの屁理屈上手で相手をコントロ

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    2024年02月28日
  • 昨日壊れはじめた世界で

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    美しい言葉に綴られた
    切なさ、後悔、喜びといった
    幾多の感情が心にすっと収まる感覚。

    本や小説は登場人物や物語を通して
    非日常を体験し、自らとは異なる世界に
    連れていってくれる。

    一方で、この小説は
    これまで表現できなかった
    感情の機微を捉え、
    「自分の想いを言葉にしてくれている」
    という安心感、肯定感を与えてくれた。

    もちろん全てが当てはまるわけではない。
    それでもこういう小説に出会えたことを
    素直に嬉しいと思える作品でした。

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    2024年01月12日
  • 昨日壊れはじめた世界で

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    ジャケ買いしたと言っていた夫の積読が妙に気になり、本によばれて読みはじめました。

    半歩くらい不思議な雰囲気が漂う世界。
    回収されなく、正直残念な部分もありますが、
    それをも感じさせない程の
    美しい言葉たちが散りばめられています。


    【細工箱の奥に隠した宝石を取り出すような】
    思いをよせる相手のことを話す時に使われているこの表現が
    読み終わった後でも強く心に残っています。


    他の作品も読んでみたいと思う作家さんです。

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    2024年01月08日
  • あの光

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    「開運お掃除サービスの栄光と転落」というきな臭さに惹かれて一気読み。ハウスクリーニング業者で地道に働いていた女性が独立を決意。掃除すればもれなく開運すると銘打ちオンラインサロンも開設。徐々に話題になりやがてカリスマ化するものの栄光は長く続かなかった。案の定、という展開だが面白かった。詭弁だらけだが掃除すれば心もスッキリするのは一理あるな、と多少は説得力がある所がよかった。最終的にはペテン師まがいの弁舌に苦笑い。それでも主人公は嫌いになれなかった。人に喜んでもらいたい、という思いに嘘は感じられなかったから。

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    2023年12月31日
  • あの光

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    ネタバレ

    お掃除の達人としてオンラインセミナーを開き、会員の共感と承認欲求を煽る啓発活動を行い徐々に強大化してく組織。
    いつしか教祖様的なポジションとなり、運気があがると噂される様々なメソッドという名の屁理屈のジャングルジムを構築。
    その先に待っているものは・・・。膨れ上がる組織が暴走したら後はもう滅びる一方で、立て直しも上手く行かず、起死回生の一手は嘘で嘘をどんどん上塗りしていくという愚策の中の愚策。
    そしてその嘘も露見された事ですべてが終わってしまった。
    その中でも本当に掬われた人もいるのが紅にとって何を思ったのだろう。
    現代社会に蔓延る闇について勉強出来る一冊

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    2023年12月15日
  • あの光

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    掃除をする事が開運につながるというサロンとセミナーの栄枯盛衰物語。

    人が何かを祈り縋る事は、簡単にバカにできることではない。周りから見て胡散臭くとも、救われている本人にとっては大切な居場所だと思う。認められたい、何かと繋がっていたいと誰しもが思う。
    しかし、嘘が大きくなり、その事を詐欺に近い商売にし、人や社会を攻撃する力にまでなると話は全く違う。信じ祈る事に純化した宗教のようなものでも時に陥るこのような状況は、やはり人には欲があるからだと思う。欲はある意味人を人たらしめるもの。だからこそ、救いを標榜するときは、指導するものの人としてのあり方が問われる。

    抗えない光に導かれてたどり着いた自分

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    2023年12月04日