竹宮ゆゆこのレビュー一覧
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「お前の全てが燃え上がる。」
表紙の透明感あふれるイラストに惹かれて
きっと繊細な家族愛や恋を綴った作品なのだろうと
購入しました。
内容を読み進めてまず思ったこと、
「表紙詐欺!!」
冒頭で不倫相手の妻に刃物で襲われ
命からがら逃げながらもギャグ調。
絶縁した初恋の男性、
醍醐と偶然再開をする場面でさえギャグ調。
主人公は口を開けばおまえ、うんこ、きもいなど
お世辞にも言葉遣いはよくありません。
いい意味で期待を裏切られ、
主人公のあまりの歯に衣着せぬ物言いに
小説の帯では電車で泣いたとありましたが、
私は電車で笑ってしました。
面白いけれど、
ずっとこの調子だったら疲れるなと思いつつ
物語の終盤。
ようやく語られる主人公の生い立ちと、
ずっとそばで寄り添ってくれていた弟睦月。
表紙詐欺だと思っていた気持ちが
ひっくり返りました。
物語の登場人物達は
順風満帆な人生を送ることはできませんでした。
人生は一筋縄ではいかない、
辛い思いをして何度も出会いと別れを繰り返す。
何が起こるかはわからないけれど、
それでも生きる、生きなきゃ!
そんな気持ちになれた不思議な作品でした。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ派手な要素はないのに、ダメダメな人間しか出てこないのに、
なんだか分からないけれど、
妙に惹かれる。
人に説明しようとするとうまく言葉にできなくてもどかしいけれど、
なぜか、読み終わってもずっと忘れられず胸に残る一冊というのが
年に数回ある。
それは本読みには幸福な出会いであり、
読書の醍醐味と言えるだろう。
僕にとってのそんな一冊がコレ。
まず、センス抜群の表紙のイラストとPopなレイアウトに一目ボレ。
手に取らずにはいられないその表紙の素晴しさよ。
CDならジャケ買い間違いなしだろう。
そして『知らない映画のサントラを聴く』という
吸引力に優れインパクトあるタイトルをひとたび読んでしまえば最後。
いったい中身はどんな話が書かれているんだろうと気になって仕方がない。
(ハートを射抜く小説タイトルに送られるネーミング大賞なるものがあれば、大賞候補筆頭に挙げたいくらいの秀逸なタイトルだと思う)
ストーリーは幼馴染みの親友、清瀬朝野(きよせ・あさの)を亡くした引きこもりニートな23歳の女性、錦戸枇杷(にしきど・びわ)が
朝野の元カレであるセーラー服を着た変態男の昴(すばる)に出会い、
もがき苦しみながら
なんとか再生し自立していく物語。
独特な感性が光る軽妙な文体と突き刺さる巧みな心理描写、
映像喚起力に優れたキャラたちが織り成す
生き生きとした会話劇を武器にテンポ良く描いていく。
冒頭にも書いたようにこの小説、
劇的な展開はないにも関わらず、
全編まるで韓国映画のような
ワケの分からないパワーに満ち溢れていて、
なぜか読んでるうちにどんどん引き込まれていく不思議(笑)
親友の不可解な死を発端に、
立ち止まり回転することを止めた枇杷が
この世の理である『回転力』に気付き、もう一度走り出すシーンは
小難しい理屈なんかぬきに
ストレートに胸を熱くする。
(そうそう、このワケの分からない疾走感にうち震える感覚こそが竹宮作品の特徴であり、小説という表現がもたらしてくれる魔法なのだ)
たとえ目的地から真逆の方角へ
走っていたとしても、
力一杯の逆走ぶりが、
その愚直で不器用なまでの生き方こそが、
結局最後には人の心を打ち、突き動かしていく。
(そう、読む者に魔法を見せてくれる)
思春期のある期間、本当は誰もが中二病だったのだ。
近所のワルガキも先生も、
父や母や政治家もあいつもあいつもみんな。
強くなくてもいい。挫折を繰り返してもいい。
ダメダメな枇杷や昴が主人公だからこそ、同じ苦しみに立ちすくむ多くの読者を救えるのではないのか。
ラノベであっても漫画的であろうとも無問題だ。
わけの分からない物語に救われる気持ち、
なんだか分からないけれど読めば惹かれるその感覚。
それこそが本来の読書の醍醐味ではなかったか。
読むことで、読者がほんの一歩だけでも、前に進んでみようと思えるような、そんな作品なので、
誰かを亡くした人、ニートの人、引きこもりの人、後悔をずっと引き摺ったままの人、
すべての諦めの悪い挑戦者たちへ
強くおすすめしたい。
追記。
僕自身、偶然にも枇杷と同じ23歳の頃、
ボクサー仲間で高校時代からの無二の親友を事故で亡くしているので、
枇杷が苦悩するシーンは本当に切なくて胸が痛くて読み進めるのが大変だったのだけれど、
23歳のあの頃にこの小説があれば
僕にとって永久不変のバイブル本となったのは間違いない。
それでも大人になった今、この作品と巡りあえることができて本当に良かった。
朝顔を美しく咲かせるのは、
朝の光ではなく、夜の闇なのです。
世界はいつでも変わりうる。
そう信じきれた時、すべてのマイナスがプラスへと変わり、
人生は初めて動きだすのです。
ダメダメな先輩を代表して
昔、どこかの校長先生が言っていた言葉を
枇杷と昴に贈ろうと思う。 -
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クリスマスに実乃梨に告白することさえもしりぞけられた竜児は、新しい年を迎えてまもないうちに、2年生最後の一大イヴェントである修学旅行がはじまります。
大河は、実乃梨が竜児を拒んだのは、実乃梨が親友である自分と竜児との仲を誤解しているためだと考え、あくまでも竜児の恋を応援しようとします。一方、北村に想いを寄せていた木原摩耶(きはら・まや)と、そんな彼女の行動を茶化した能登久光(のと・ひさみつ)とのあいだでケンカがはじまってしまい、そのことがきっかけで竜児や大河を中心とする、これまで危ういバランスをとってきた人間関係が、一気に崩壊の危機に直面することになります。
そんななか、大河が遭難するという事件が起こります。竜児たちは彼女の救出に向かい、無事に大河をつれて帰ることになりますが、その途上で竜児は意識が朦朧としている大河の口から決定的なことばを聞かされることになります。
本編も残すところあと2巻となり、ここからフラグ回収へと向かっていくような展開となっています。どのようなかたちで結末を迎えることになるのかたのしみです。 -
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「俺はそんなことでおまえに対する見方を変えたりしねえよ。おまえは誰かの奥さんにとっちゃ殺したいほど憎い相手だったんだろうが、それは俺には関係ねえ。俺とお前の関係には、他の誰も関係ねえ。」
『そんな私を誰がどう思ってるいるかなんてことも、心の底からどうでもよかった。なにを言われたって相手にしなけりゃ無音と同じだ。利用されてる? 使用している? あわれ? あばずれ? 汚らわしい? いずれ刺される? そんなのお互い様なんだよ。』
『酸素を使って、電気を使って、ガスを使って、水を使って、インフラに寄生して。倫理を破壊して人を傷つけて、食い扶持すら人から盗んでる。それが私という人間だ。生み出せるのは排泄物と二酸化炭素と迷惑のみ。』
『私をこの世に産んだ人の記憶は、今も私に深々と突き刺さり、打ち込まれた釘みたいに貫いて、もう変えようもない過去の時間に私を磔にしている。それはまるで川の流れの源、すべての傷に繋がっていて、今この瞬間も新鮮な血を湧き出し、枝分かれする裂け目へと流し込み続けている。』
『そして、そのあとには必ず朝がくる。今日は昨日になって、明日は今日になる。
過去は変えられないし、明日のことはわからない。でも、今日やることは私が選べる。』
『この拳にちゃんと力が込められたなら、一体なにを殴ろうか。全力で打ち抜いてぶっ飛ばしてやりたいのはなんだったろう。私を傷つけ、弱くするもの。悲しくさせるもの。泣かせるもの。動く力を奪うもの。ほらあんたなんかダメに決まってる、と、証拠みたいに目の前にぶらさがるもの。べっとりのしかかって視界を塞ぎ、過去に引き戻そうとするもの。』
『そういうなにかに名前はない。人生からそれだけ切り取って摘出することもできない。でも居場所はわかっている。私の頭の中にあるのだ。そいつはずっと前からあって、ある時を境に腐りだした。不穏な速度で膨れ上がった。気が付けばパンパンに張り詰めて、まるで小さなバッグに無理矢理詰め込んだ西瓜のようになっていた。』
「俺、これ着るとかっこよくなっちゃうんだよ。ごめんな信濃、目に毒だろ」
「ううんいいの大丈夫気にしないで。私の網膜、無職は認識しない仕様だから」
「いや俺別に無職じゃねえよ」
「あれー醍醐どこー? 見えなーい」
「さっきまで見えてただろ」
「なーにー? 聞こえなーい」
「このくだりに鼓膜は関係ねえだろ」 -
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アニメが放送されていた頃に興味を持って買って、そのまま数年間寝かせるという自分の悪いクセと向き合うべく手に取った。アニメは最後まで見たので内容は大体把握してるし、登場人物も「おー久しぶり」くらいの親しみが持てる距離感。
まず最初に感じたのは、世間一般で言われる「小説」と「ライトノベル」の違い。ライトノベルを手に取ること自体が久しぶりだったんだけど、自分が思う「小説」に比べて情景描写に割く文章量がすごく多いと感じた。ふわふわとした区別になるけど、小説が「人間」を書くことに重きを置いているような気がするのに対して、ライトノベルは「物語」を重視した読み物なのかもな、なんてことを思った。ただでさえファッションにうとい自分には、香子の服装描写は正直斜め読み気味に……すまんな香子。
とらドラの評判なんかを聞いてるとこの人の作風はラノベど真ん中!って感じじゃなさそうだけど、個人的にはそっちの方が好みなので今度2巻買ってこようかな。あ、僕はリンダが好きです。 -
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クリスマスイブに実乃梨に振られた竜児は年末年始をインフルエンザで過ごし、憂鬱な気分のまま新学期を迎える。大河は竜児からの独立を宣言し、実乃梨は以前と同じように竜児に話しかけ、亜美はいつも以上に苛ついていて……。そんな不安定な状態の中一行は修学旅行で雪山に向かうこととなる。
実乃梨が竜児を振ってしまった事で本来なら不必要な混乱が生じている。こういった空気はそう簡単に元通りにはなりはしない。竜児が言っていたようにもう既に『全然何でもなかった』で済ませられる領域を超えてしまっている。これから彼らがどのように悩み、どのような選択をして行くのか非常に興味深い。作者の丁寧な描写をこれからも拝見したいものだ。
ただ、どれほどシリアスなシーンでも先生を『独身(30)』と表記し続ける竹宮先生はどんな拘りを持っているんだ(笑)
それほどまでに三十路の壁というのは大きいのか? -
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想像以上に登場人物の心理が細かく描かれていることには感心せざるを得なかった。
難しい展開が続いている。竜児は大河の隠していた見えない傷に触れた事でこの辺りから大河を気に懸ける様になったのだろうか。大河の方は遂に自分の心に気付いてしまい、まさしく『夢は終われど現実は続く』状態だ。クリスマスにはサンタが来るという夢は終わり、自分はずっとそばに居てくれた人間が好きだったという現実にぶち当たる。
それにしても実乃梨には辛い展開が続くなぁ。本人としては守りたい、心から大切にしたいものがあるからこその行動なんだけど、それが竜児にとっても実乃梨にとっても良い結果を残さない行動になってしまっているからうじうじと悩み続ける。恐らくはストレートにぶつかってしまえばこんなややこしいことにはならずに済むのだろうけど、人は誰しも傷付くことや傷付けてしまうことを怖れてしまう。そうすることで誰かの幸せを守れるのだと信じてしまう。それは決して悪いことではないだろうし、その方法で幸せになれる者もいるかもしれないが少なくとも『とらドラ!』ではそんな上手く生きている人間は居ない。そういった意味では非常に人間臭い作品なのかもしれない。
壊れてしまったクリスタルの星。あれが竜児達を表しているのは確実だろうが、治るもの治らないもの。彼らどちらに辿り着くのだろうか。 -
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ネタバレ冒頭、静岡での万里。
高校卒業直後に落ちた橋までジョギングして。
そこでパーカーから 丸い小さな物 を落としてしまう。
前回の続きの棒立ちの万里。
駅にてずっと『別れ』を香子から切り出され動けない。
時間が経って、香子の父が車で登場。
助手席に万里を乗せ、万里のマンションまで送られる。
が。
降ろされてもエントランスで固まったまま。
動けない万里を動かしたのはまたしもNANA先輩。
万里に付き添って。聞き上手に聞いてくれる。
カフェオレを買ったNANA先輩。
お汁粉を見ずに引き当てた万里。
その万里に『泣いとけ』と。
お汁粉並みに甘いNANA先輩。
香子と再び駅で出会う。
父親を万里に差し向けた事を謝るが。
万里はただ嬉しくて。
授業を受け、休憩中に連れ立っていつも仲間でお茶。
そこで香子は爆弾発言を炸裂させる。
万里と別れた と。
フラッシュバックして、錯乱している映像を見てしまったため、彼女なりの決断だった。
香子は…別れたくないのが本音。
ただ、自分を保つために別れを切り出すしかなかった。
本当に忘れてくれたら『ただの友達』として。
もし覚えていてくれたなら『一生傍にいる』と約束。
ぎこちないままの二人。万里がおまけんの先輩に報告。
その時、リンダと取っ組み合いのケンカ。
それをやなに見られて、やなは万里を避ける。
言いようもない嫌な雰囲気の中、それぞれがバラバラに。
千波も二次元も『万里がおかしい』と。
二次元に至っては状況は全く読めていない。
まとめようとしたのは二次元。
学祭の直前に飲み会をセッティングする。
大暴露大会として。
途中途中で、万里の入れ替わりごとに各人物からの視点での捉え方が描かれている。
香子、千波、二次元、やな、各視点での考え方。
飲み会の日、錯乱。
待ち合わせ場所近くまで同行していたリンダが錯乱した万里を連れ帰る。
万里の部屋についてすぐ、万里は実家に電話。
実家近くの病院に予約を入れて欲しいと。
どんどん現在と過去の時間が短くサイクル。
NANA先輩と同衾かと喚く万里。なわけないじゃん。
万里の親が学祭見学。
万里は…学際までどうにか現在の自己を保ち踊り終えた瞬間入れ替わる。
過去の万里へと。
そのまま実家へ両親に連れられて帰る。休学して。
送信したことのないメルがノートPCにある。
香子へ送った身に覚えのないメル。
年の瀬。
万里の元へDVDを携えて一人の女性が訪ねてくる。
万里と一緒にいたリンダは絶句する。
綺麗に笑い、千波と間違えらえても必死に耐える香子。
思い出の手鏡を見た瞬間に全てが繋がる。
必死で香子の後を追う万里。
あの橋の上で、全ての過去とこれからの未来が動き出す。
香子に向かって、一直線に。
思い出し、全てを繋ぎ過去は過去へと決別し。
決別のしるしに過去の万里は鏡を持って。
現在の万里には指輪を残して。
香子にあげるために持っていた指輪。落としてしまった指輪。
ずっと大切に過去の自分は持っていた。
一緒に大晦日を迎え、横にいる香子に『ありがとう』と言えた万里。
リンダは万里を追って橋を渡り、置いてきてしまった後輩に会いに。
メルの犯人は二次元君。
ブチ切れてこの件を画策した。
無事に4月から、無事復学。
思った以上に最後泣かされました。
アニメにもなったので見たハズなんだけど、かーなーりー抜けている部分があって。
そんでもって、流石の泣かせる部分への持っていかせ方は竹宮氏です。ハイ。
香子の懇願、想い、ド直球さ。愛おしいです。
これは万里の物語であって、香子の物語なのだ。
蘇我馬子先輩=NANA先輩ってやっぱり爆笑だな。
リンダ、やな、千波がその後どうなっているのか気になるけど。
野暮ってもんですかね?