橋本陽介のレビュー一覧
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ネタバレ「物語論」を専門とする筆者が国語教師の経験をもとにあるべき国語教育について語った本。
久しぶりに大変学ぶところの多い本だった。
・文章の読み方は、三つ
‐ 作者の立場で読む。作者がどのような状況で文章を書いたか
‐ 読者の立場で読む。文章が読者に作用する
‐ 物語の型として読む
・文章をわかりやすく書くには、読者の期待に応えていくこと
・「序論、本論、結論」は、どの階層でも意識する。
・「全体・抽象→具体→全体・抽象」は典型的な「序論、本論、結論」
・謎解きが、物語を面白くする。
・物事の時系列的な因果関係を示すものはすべては物語として語られうる。
・情報リテラシーは、SNS時代にあ -
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「は」と「が」に当たる助詞の使い分けがあるのは日本語と朝鮮語くらいしかなく、世界的に見ても非常に珍しい特徴。P139
「が」は、基本的には動作を行う主体ににる「主格」を表す格助詞。p140
「が」が主格を表しているのに対して、「は」は主題を取り立てるのが主な役割。p142
英語などのヨーロッパ言語は、原則としてものごとを客観的な視点から語る構造を持っています。ヨーロッパ
言語を母国語とする人たちにとっては、日本語のように登場人物の主観的な視点に同一化してしまう文は、理解が難しいと言われています。p159
世界の言語の大半がSVOかSOVのどちらかになっている。 -
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個人的に文学賞への興味が覚めやらぬ今日この頃、本屋さんで色々物色しているさなかにふと見かけて、これは買っとかんとってことで。小説のみならぬエンタメ全般をひっくるめても、基本的に80年代以降が好物っていう、自分の趣向ともピッタリ合う。という訳で、読む前からつまらない訳はない状態なんだけど、やっぱり楽しく読めました。読んだことのない作家が過半数で、またまた気になる本が数多出てくることになったけど、それもまた良し。読んだことある中で、マルケスと莫言の類似性が指摘されているけど、実はマジックリアリズムとして真逆の手法、っていうのにはなるほど、って納得。きっと、それぞれの作品を読んだ後に紐解くと、また違
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高校で古典も教える、中国語が専門の著者が、日本語の音声、語彙、文法、表現について、73の高校生からの疑問に言語学の視点から答えたもの。母語なのでそもそも疑問を持ちにくいことについて、まずそういう疑問があることが分かる(母語の相対化ができる)ということに気づける点も面白いし、また回答もそんなに専門的過ぎず、割と分かりやすい。日本語学の入門書として位置付けられるかもしれない。
これまで言語の本はたくさん読んだつもりだったけど、結局おれは英語が中心だったので、日本語についてはずっとモヤモヤするところもあったが、結構へえ、と思ったことも多かった。以下はその部分のメモ。まず「旦那」がサンスクリット起 -
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「第一部 理論編」では平易な言葉を用いて、物語論が生まれた経緯とその理論についての概説がされている。
「第二部 分析編」では外国文学やアニメ、映画といった多様な作品に対して、物語論の理論を用いた分析をしている。
前半の理論編は物語論の全体像を概観するのとができ、専門書へ踏み込む前の導入として優れていると思う。
後半の分析編では、文学作品に限らず人間が生みだしたものは基本的に物語として分析できることを示している。
本文引用
p258「物語論では、作者の意図が無視されているとよく言われる。しかしこれは誤解である。構造主義時代の物語論でも、無視されたのは『完全に作品を決定できる存在』としての作 -
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現状の国語、特に小説の授業の課題とその克服が語られるのかと思いきや、現在の典型的な国語の授業を検証するまでは良かったのだが、この本の中盤の文章の書き方なついての記述はかなり唐突な印象を受ける。ということで、全体の構成は分かりづらい。ただし、得ることもあるのがこの本。特に「物語」についての記述。筆者は物語とは「時間的展開のある出来事を語ったもの」とし、そこに因果関係が存在するとしている。そして、一見して客観的に語られると思われがちな報道なども、実は物語的に語られるのが多いのである。日常で語る・語られる文章が時間軸を持った物語的に構成されていることが多いのであるとしたら、やはり国語で物語を検証する
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国語はそもそも何を学ぶ学問なのか。役には立たないのではという批判に答えつつ、論理的であることや、リテラシーなど国語周辺について語ってくれる。
国語を教える立場にある人と、いま国語を学習している人にはあまり直接的に得るものはあまりないように思う。学生の頃に国語の授業がつまらなかったと思う国語学習はとっくに卒業した大人辺りが一番面白く読むような気がする。
・学校での小説の扱いが「心情中心主義」「鑑賞中心主義」なのは狭すぎる。
・外国の小説をよむことで、相対的な視線が得られる。
・知識がどのようにできあがってるのか知るのが重要。
・教養のない人ほど真実という言葉を使いたがる。 -
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著者の橋本さんが言及しているように、ノーベル文学賞というと、「村上春樹さんが受賞するか」とか「日本人がいただいたか」ということのみが話題になってばかりという印象を私も常々感じていた。ではそういう私自身もノーベル文学賞をとった方の作品を読んだことがあるかといえば恥ずかしい事に全く無いと言ってもよい。(川端康成さんの作品でさえ、きっちり読んだとは言えないていたらく…)村上春樹さんの作品はほぼほぼ読んているのですが。
とうしてもハードルが高いと思い込みがちだったが、橋本さんの解説で私の中でだいぶハードルが下がったので、読んでみたいという気持ちが強くなった。ガルシア・マルケスの「百年の孤独」は以前から -
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物語論の基礎をていねいに解説している本です。
前半は、プロップ、バルト、ジュネットらの仕事が紹介されています。伝統的な文学理論や物語論の背景にある哲学的な議論に踏み込むことは差し控え、物語を分析するための基本的な装置としての物語論を明快に解説しています。
後半は、じっさいに物語論の考えかたを用いて、さまざまな作品が解釈されています。とはいえ、こちらもあまりに難解な議論に流れることはなく、カフカ『田舎医者』、太宰治『ヴィヨンの妻』、ガルシア=マルケス『百年の孤独』といったよく知られている名作のほか、映画『シン・ゴジラ』やアニメ『新世紀エヴァンゲリオン』、『魔法少女まどか☆マギカ』なども題材に -
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物語構造を考えることは、世界に対する自分の立ち位置を考えること。…かも?
目から鱗だったのが物語の視点の問題について。
物語を作るときは視点の置き方を決めないといけないのだ。誰の視点で語るか。どの時点を起点にした視点で語るか。それと同時に物語に対してどんな距離感で語るか(ディエゲーシスとミメーシス)。
これを定めずに物語を作ろうとすると行き詰まる。というか困ってしまって語れないのだ(過去に小説書こうとして行き詰まった原因をようやく思い知る)。
普段の会話も同じだ。自分が話そうとする内容に対しどの立ち位置から語るか(客観的に語るのか、主観的に語るのか、両方を合わせながら語るのか)を決めないと