前巻ラストに綾小路が行った驚愕の選択の背景説明から始まるこの巻。思えば、前巻も同様の始まりだった事を考えると、既に綾小路と云う存在は誰の注目をも引く一角の人物と成っていたのだと実感できるね…
ただ、綾小路の本質まで理解できている者はまだ僅か。その認識差が少しずつ広まっていく様子はまるで堀北クラスにて綾小路の移籍が知られ窮地が主張され始める工程とリンクしているかのよう
どう考えたってAクラスに到達したばかりの段階で落ち目のCクラスに移籍するなんて有り得ない選択だし、引き入れるにしてはその対象に綾小路を選ぶなんて理解不能だからこそ、そんな波乱を起こした綾小路の異質さとその衝撃を理解できない者の凡百さが強調される。裏を返せばポイントを使用して綾小路を引き入れたCクラスの判断が光るし、そこに綾小路が加わる事による脅威度も判るというもの
けれど彼を知る者、特に堀北が受けるのは彼に裏切られたという感覚か
彼女は入学序盤から綾小路の異質さの一端を知る事に拠って彼の援助を数多く受けてきた人物。というより、堀北の成長物語において綾小路は欠かせないピースだった
それだけに彼女は誰よりも綾小路の裏切りに耐えられない。元々抱えていた精神的な弱さが露見する。だとしても、ああまで崩れるなんて予想外では有ったけどさ…
そんな弱さが綾小路に捨てられた軽井沢とリンクするなんてね
軽井沢も綾小路の影響を受け精神的に大きく成長した。だからこそ自分の意に反する形で綾小路に捨てられた状況に泣き崩れてしまっていた
軽井沢と堀北が綾小路にされた事は似て非なる。それで居ながら同じ形をしている。互いの姿はショックを受けている己の姿そのもの。相手の姿を見ると己の傷を自覚できて、更に前に進む活力も得られたという事なのかもね
色々とタイプが違い過ぎる二人だけど、綾小路の異質さを味わったと云う面では良い協力関係を築けるんじゃなかろうか
学年を混乱に陥れた綾小路だけど、当の本人は新しい環境での友人作りに腐心しているかのように見えるのは何とも気の抜けた光景だね
勿論、本人としては今後のクラス運営の為にクラスメイトを把握したいだけなのだろうけど、積極的に絡む森下やかなりの裏が有りそうな白石の存在に拠って転校先で新環境への慣れに悪戦苦闘する学生みたいな感じになっているのは面白い
それに3年生最初の試験もベースとなるのは多少のペナルティルールは絡みつつも真っ当な学力試験。クラスリーダーの地位が懸っていたとしても綾小路が事前に策謀を巡らせる程のものではないし
逆に綾小路に緊張感が無いからこそ対戦相手と成った龍園の側に緊張感が生まれる構図と成っていたね
これまでも綾小路と龍園がぶつかる事は有った。けれど、クラスを率いる立場としては初だし、何よりも龍園は綾小路に利用される形で坂柳に勝ってしまった事にも負い目を感じている
龍園は必要以上に綾小路にどう勝つかばかり考えてしまった。それがあの結果という事なんだろうね
彼はここから這い上がれるのだろうか?そして、その時Bクラスの面々はどのように龍園に手を差し伸べるのだろうか?
対して、深い暗闇を抜け出した一之瀬は良い意味でリラックス出来ているね
あの天沢に反撃し、特別試験も大過なく勝ってみせた。それだけに印象的に映ったのは軽井沢との対話シーンかな
今の一之瀬は軽井沢から綾小路を勝ち取ったような立場。完全に綾小路を手中に収めていなかったとしても、綾小路に利用される立場から抜け出せなかった軽井沢より一歩も二歩も進んでいる
だからって軽井沢相手に何も思わないわけではなく。「助けないかな」というシンプルな拒絶、直後に綾小路と自身の待ち合わせをひけらかす姿勢。それらは助けたい味方と打ち壊したい敵の境界を歪に示していたような気がするよ……
4クラスの構図が様変わりした事でこれから何が起きるか全く見えてこない。現状では3年生との絡みが無い1年生に含まれる異変とは何なのかも気になる。また、ここに来て綾小路の幼馴染のような存在が示唆されるとは思わなかった
やはり本作は予測不能な展開ばかりでワクワクさせられますよ