五来重のレビュー一覧

  • 日本人の仏教史

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    日本の仏教の歴史が語られる際にはどうしても祖師の偉業と宗派の発展や時の政権との関係が中心となるが、それらの要素を成り立たせているにもかかわらず軽視されている庶民のうちに浸透していた信仰やその実践がいかに重要で豊穣であるかを思い知らされた。聖(ひじり)・山伏・遊行者などの名も無き仏教者によって取り入れられた仏教が古代からの庶民の祖先信仰・山岳自然崇拝から置き換わる状況にはならず、その形態を保全・強化していくものとなったことが良く分かった。

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    2023年11月30日
  • 四国遍路の寺 上

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    講義録の形式で四国八十八ヶ所の縁起や四国遍路を解説しているのだが、話の流れが変わっている。総論のあと室戸岬、石鎚山、足摺岬と来て、44番からお寺を紹介する(上巻は86番まで)。これは「弘法大師が確実に土佐を回っているから」で、足摺岬にある金剛福寺から石鎚山を目指す経路上に44番大宝寺、45番岩屋寺がある。実際に歩き遍路を経験した身からは、おやと思うが、お大師様は色んな道をあちこちへと歩いたわけだ。それにしても「集印するのが目的であるかのごとく八十八か所を回るのは、いかがなものか」という一文があるは耳が痛い(116ページ)。

    元々の四国遍路は海洋宗教で、札所はどこも海と関係しているという。例え

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    2023年08月08日
  • 日本の庶民仏教

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    ある時から急にむくむくと湧き起こり探求への沼えとハマっていた日本民俗と宗教についての疑問?不可思議に分かりやすく答えてくれる書に出会えた。と思っている。序でに言うと、冒頭記載される「日本の仏教は仏教ではない。」と言う言説とクライマックスっd記載される「全ての現象を日本の言語や民俗で理解するよりも、海外の知識をふりまわすのが、格好いいと思う文化人の習性」と言う著者の態度に僕はいたく共感を覚えた訳である◎充実した読書体験に感謝。良い本です◎

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    2022年10月20日
  • 熊野詣 三山信仰と文化

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    まだ熊野古道が世界遺産になるずっと前の1967年出版と半世紀以上前に書かれたものとは思えないほど、神仏習合・修験道・そして原始宗教の織りなす、総合文化たる熊野を多面的に味わえる名著。

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    2022年04月05日
  • 熊野詣 三山信仰と文化

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    2013.1記。

    世界遺産にもなった熊野古道は、熊野本宮大社をはじめとする社寺を参詣するための道々の総称。

    山と鬱蒼とした森によって隔てられた熊野は「隠国(こもりく)」、すなわち「死者の国」の古語を地名の由来とするとも言う。民間信仰、神道のルーツ的なエリアでありながら、平安期の阿弥陀信仰の盛り上がりにより「浄土」のイメージが重ねられ、日本独特の神仏習合の聖地となっていく。時宗の開祖一遍上人が熊野「本宮」を目指す旅路は一遍上人聖絵という絵巻物の傑作に残され、聖人の内面の葛藤と当時の習俗を今に伝える。

    1960年代に執筆された本書は、市井の怪奇譚から荘園支配を巡る伊勢神宮と熊野仏教勢力の訴訟

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    2019年01月05日
  • 仏教と民俗 仏教民俗学入門

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    1970年代に角川選書で刊行された同書名の文庫化。
    思想としての仏教と、民俗、つまり慣習としての仏教との間に違いがあることは、なんとなく理解していても、意識化していない。
    例えば、墓地に葬り墓を建て、家にも仏壇を設け、位牌を置く。当たり前だと思い続けてきた「両墓」が、仏教伝来以前の祖先崇拝によるという指摘は、とても新鮮だった。
    この時代に進められていた既存宗教教団の、仏教の本来の思想としての布教活動を、祖先崇拝を時代遅れと切り捨てていることの、その危うさを著者は警告していた。時代が過ぎて、皮肉にも、結果は真逆で、多くの仏教者は、墓守と化してしまった。それだけ、日本民俗の祖先崇拝の根は、深いとい

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    2018年01月27日
  • 四国遍路の寺 上

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    宮田珠己著「だいたい四国八十八ヶ所」に引用されていた本で、四国遍路に関するガイドブックとして興味深く読み進めた。宮田氏がこんな真面目な本を参考に、あんな緩いエッセイを上梓したギャップが改めて面白い。閑話休題。著者は、四国遍路は海洋信仰から端を発したもので、奥の院に参ってこそ、その真価が理解できると書いている。確かにその説は首肯できて、岩場・鎖場を歩くのも楽しそうだ。その反面、スタンプラリー的に楽しむ遍路もアリなのだという思いも捨てられない。自分だったら、車遍路で御朱印も頂かなかったりしてしまうかも……

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    2017年08月29日
  • 四国遍路の寺 下

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    四国遍路に興味を抱き「行ってみたい」と思うようになったのは、ミーハーながら水曜どうでしょうがきっかけだ。行く! となれば下調べをしてからと思う自分は、当然のことながらガイドブックも買ったが、宮田珠己氏の紀行エッセイから五来氏の著した本書を読むという遠回りな調査を行っている。著者の語り口調は自身の研究に裏付けられた断定調で、言い過ぎな感がなくもないが、むしろ気持ち良いものだ。札所1番からのありふれた解説本と違い、海洋宗教の観点から進められたのも良し。さて、私と家族の悩みを雲散霧消できるような遍路に赴きたい。

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    2017年08月29日
  • 西国巡礼の寺

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    解説で山折哲雄氏が「語る五来重が、ここにいる。」と書いています。カルチャーセンターの講義がもとになったとしたら、飽きさせない展開に拍手したくなります。もっと早く知りたかった。三十三所の旅も違ったものになったことでしょう。もう付箋だらけです。

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    2011年04月21日
  • 宗教歳時記

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    日本の行事の由来とか、どう行ってるのかとかの勉強にもなるし雑学的に良かったんですが、しばらくすると内容が抜けちゃうので星四で。またゆっくり読みたいな。

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    2025年04月29日
  • 西国巡礼の寺

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    西国33ヶ所の主要な霊場を紹介しつつ、著者五来重の宗教民俗学的視点からの霊場への独自かつ新たな解釈を見出した著作。

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    2023年08月29日
  • 日本人の死生観

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    日本人の死について、民俗的・宗教的視点から人間の死にまつわる思想・文化芸能に関する過去と現在のありようについて紹介した著作。

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    2023年03月21日
  • 石の宗教

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    道祖神、庚申塔、お地蔵さん。道端にある謎の石。たまにおじいさんが拝んだりしている。あれはなんだ?という疑問から読んでみました。著者は、これらは仏教や修験道の影響を受けたデザインや意味をもっているが、もともとは石に祈りを捧げる日本人の素朴な庶民信仰があったのだと説きます。論は説得的で言及する例も面白い。賽の河原の由来や荒魂を塞ぐために石を積んだという話はなるほどと感心しました。最後の解説を読んで初めて著者が日本仏教民俗学という学問ジャンルを拓いたほどの碩学であることを知り納得しました。読んで損はない本だと思います。

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    2022年12月16日
  • 先祖供養と墓

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    ・ 殯(もがり)が気になつてゐたのだが、それが具体的にいかなるものであるのか分からなかつた。wikiには、「死者を埋葬するまでの長い期間、遺体を納棺して仮安置し、別れを惜しみ、死者の霊魂を畏れ、かつ慰め、死者の復活を願い つつも遺体の腐敗・白骨化などの物理的変化を確認することにより、死者の最終 的な『死』を確認すること。その柩を安置する場所をも指すことがある。」とある。私は後の「柩を安置する場所」のやうに思つてゐた。まちがひではないが、 正確でもなからう。第一、どのやうな場所か分からない。「物理的変化を確認する」にしても、それがどのやうな場所で行はれるのかは重要な問題である。私は、本当に殯とは

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    2022年05月18日
  • 修験道入門

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    国土の八割が山岳の日本において生まれた山岳宗教に陰陽道や仏教を融合させて誕生した修験道は、日本人のあらゆる宗教や文化の原点をなし、庶民信仰を包含した宗教であることを紹介した修験道に関する詳細な著作。

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    2022年04月21日
  • 鬼むかし 昔話の世界

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    ・昔話といふと直ちに関敬吾と思ふ。実際、五来重「鬼むかし」(角川文庫)でも柳田国男と関敬吾に何度も触れてゐる。それは肯定的な見解を述べる場合よりも否定的な見解を述べることの方が多い。ごく大雑把に言へば、五来にとつて関の方法や考察は不十分なのである。五来は、「神話は、その民族の文献以前の生活と民族宗教が、説話化して伝承されたものである。それは神々の言葉や行為として語られているけれども、これを人間の世界に世俗化すると、昔話になってしまう。」(12頁)とか、「神話と、これが地域に密着した伝説と縁起が、民間伝承として分裂し、単純化して昔話になった」(同前)と昔話を規定する。神話から昔話である。私などは

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    2021年12月26日
  • 日本人の死生観

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    原始信仰、神道、仏教、その他派生した信仰を詳しく解説しながら、仏教がいかに日本に広まり、なぜ定着したのか、なぜ日本人に受け入れられたのかを解説する。仏教の布教の特徴(既存の信仰や習俗に合わせる)やベースとなる土壌(古くからある習俗、信仰、儀礼)を予備知識のない人にもわかりやすく説明している。
    文章は読みやすく、量も文庫でちょうど良い。しかし内容がしっかり盛り沢山なので、一度読んだ後他の本や資料で知識をつけた後で再読するとさらに吸収できるかもしれない。

    霊魂観
    古代あるいは庶民は死というものは「集団のなかのひとりのの死」と捉えられる。現代の個人の死のように寂しさ懐かしさの対象だけではなく、恐ろ

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    2021年12月25日
  • 山の宗教 修験道案内

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    山岳信仰についてチョット興味があり、非常に軽い気持ちで購入してみた。が、わりと難しい語句が並んでおり、宗教や歴史の予備知識に乏しい自分にとっては、少し難しい読書となった。

    古来日本では山に登ってはいけないという、暗黙のルールがあったそうだ。それは大昔の日本人が、亡くなった人を山の中の洞窟などに置いて、風葬をしていた事に由来するらしい。
    そのうち仏教や神道が普及し始め、元々その地に残っていた風習などと重なり、山岳信仰として発展していった。

    たしかそんな内容だったと思う・・・

    写経の墨に使う水は山の池から汲んでいたとか、曼荼羅は宣伝に使われていたなど興味深い考察もあり、少し勉強してからもう一

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    2013年05月31日
  • 宗教歳時記

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    京都の年中行事を中心に宗教民俗学で説明されており京都ファンは必携でせう。もっとも飲み食い買い物が好きなだけひとにはあいません。
    修正会・修二会の餅と花、初午、嵯峨のお松明、やすらい祭、賀茂の御陰祭、二十五菩薩練供養、祗園御霊会、鞍馬竹伐、六道参りと千日講、地蔵盆などなどそうだったのか。真如堂十夜念仏、お火炊とくればもう専門家レベルです。

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    2011年02月14日
  • 日本人の死生観

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    人は死んだらどうなるのか、仏教の立場らかと神道の立場から、さらに庶民は神仏混淆の中でどう思っていたのか知りたくて、選んだ一冊。

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    2024年08月23日