あらすじ
弘法大師はなぜ修行の場として四国を選んだのか。山岳宗教以前にあった古代海洋宗教の霊場、海と陸の境を行き、岬で火を焚いた遍路修行。その本来の意味や歴史を明らかにし、古代日本人の宗教の原点に迫る。
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Posted by ブクログ
講義録の形式で四国八十八ヶ所の縁起や四国遍路を解説しているのだが、話の流れが変わっている。総論のあと室戸岬、石鎚山、足摺岬と来て、44番からお寺を紹介する(上巻は86番まで)。これは「弘法大師が確実に土佐を回っているから」で、足摺岬にある金剛福寺から石鎚山を目指す経路上に44番大宝寺、45番岩屋寺がある。実際に歩き遍路を経験した身からは、おやと思うが、お大師様は色んな道をあちこちへと歩いたわけだ。それにしても「集印するのが目的であるかのごとく八十八か所を回るのは、いかがなものか」という一文があるは耳が痛い(116ページ)。
元々の四国遍路は海洋宗教で、札所はどこも海と関係しているという。例え山中の札所でも、山号(岩屋寺の海岸山)や干満水といった海との繋がりを持つというのが面白い。「辺路信仰の本質は、海のかなたの常世にとどまっている祖先の霊に、聖なる火を捧げること」(49ページ)らしい。本書には五来重自身の説と言えそうな記述が散りばめられている。曰く、弘法大師は通訳者として唐へ渡った、龍燈は龍に向かって炊かれた火である、など。