児玉聡のレビュー一覧
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とあるところで紹介されていたので読んでみました。
功利主義というと、「最大多数の最大幸福」の実現を目指す考え方と思えばよいのですが、「最大多数」が誰を指すのか、そこから漏れた人はどう扱うのか、「幸福」とは何か、「最大幸福」にあたって「幸福」は数値化できるのか、など、いろいろと実現にあたって定義すべき問題があります。
また、「最大多数の最大幸福」の考え方が広く知られるようになってから200年ほど経ちますが、この200年の間で科学(とくに生命科学で中でも脳科学、あるいは心理学)が大きく進歩した結果、倫理学や哲学(道徳哲学)においても、科学の知見を取り入れざるを得なくなってきており、功利主義は、 -
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変わった哲学者の行動が取り上げられている本という予想に反して、ほとんどの哲学者は普通の人だった。主に20世紀のオックスフォード大学で哲学の教鞭をとった人の紹介である。チューター制をとっていて、師匠と弟子という関係が強く現れるのだが、それ以外にも哲学者同士の議論が活発だったことが窺われる。驚いたのは女性の哲学者が多く活躍していることだ。第二次世界大戦の影響で、男性の多くが兵役に従事していた状況もあるが、それ以前から女性が大学に行って哲学を学ぶこと、さらに育児をしながら研究を続けることが可能であったことがわかる。登場人物についてほとんど知らないし、哲学者は難しそうで知人になりたくないと思っていたが
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ネタバレ人々が動物性食品を止めるべき主な理由は動物への配慮、気候変動対策、自分の健康への問題、生鮮市場における感染症の4点が挙げられる。
動物に苦しみをもたらす慣行を支持したくないからベジタリアンになるのであれば、中枢神経系がないハマグリやホタテ、良い生の鶏の卵を食べるフレキシブルなヴィーがんは問題にならない。
動物の解放運動は他の解放運動と異なり、搾取される側である動物が組織的な抗議をしないこと、抑圧する側に属する集団の構成員のほぼ全てが抑圧に直接加担している受益者であることなどから、不利である。
畜産を止めれば、浮いた飼料生産により、地球から飢餓と栄養失調はなくなる。すなわち、動物の解放は人間の解 -
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読みやすくて、倫理学の知識を体系的に学ぶ事が出来た。引用してくる倫理学者の古典文章を、わかりやすい所を分かりやすく引っ張ってきてくれてるのが助かります。今まで麻薬で出す快楽と、知的活動で得られる快楽の違いをずっと考えていたけど、本文の「それが客観的な快楽かどうか」という文書で何となく腑に落ちた。
相対主義批判の矛盾 根本的ルールは同じ
自然は正しいの?
ジレンマに対して備えておく より洗練された倫理
共感 反感の原理 自分の好きなことだけ
ベンサム 道徳と"立法"の諸原理序説
帰結主義 行為の帰結を評価 幸福主義 幸福だけが内在的価値を持つ
ゴドウィン 政治的正義 婚 -
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世間の功利主義者への風当たりは強い。「最大多数の最大幸福」をスローガンに掲げる功利主義者は、みんな(つまり多数派)の幸福を大事にするから少数派を置き去りにするし、権威主義的で非道徳的だと。いやいや、まあ急進的な原理主義的功利主義者はそうかもしれないけれど、功利主義ってそんな悪魔の経典みたいなんじゃなくてね、という話。直感的には、目の前の困っている人を助けてあげたいけれど、国を統治する人がそれをしていたらキリがないですね。むしろ、統治者の目に見えていない人たちが犠牲になっている。そのための指針として「最大多数の最大幸福」という基準で測ってみるのはどうですか?ほとんど無視されていた労働者、奴隷、女
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倫理とは何か、について、功利主義という主義に入門してざっと全体を眺めてみようじゃないか、という本。
最近、自動運転で流行りのトロリー問題から始まり、豊富な例題と読みやすい文体で一気に読んでしまった。
功利主義とは、簡単に言ってしまえば快楽の総和を最大化することが目的であり、純粋に言えばトロリー問題で言えば迷わず5人の命を救うのだろうけど、実際に功利主義の原理主義みたいな、最大幸福の実現のために少数を犠牲にするような考え方は古く、その起りもむしろ少数のないがしろにされている人間も平等に扱うべきだというところがあることが理解できた。また、それに対する批判もあった上で、どう変遷していったかがわか -
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ネタバレ思想が誤解されがちな功利主義を改めて入門する本であると同時に倫理学の入門書として本書は位置付けられています。結婚制度に絶対反対の立場であったゴドウィンがウォルストンクラフトと結婚することで転向し、結婚制度に積極的な態度をとるようになったエピソードはとても面白かったです笑
2人から生まれた子供がフランケンシュタインの著者で有名なメアリー・シェリーで近代フェミニズムの先駆けとなった母親の意志を受け継ぎ(当初母国の英国では全く受け入れられなかったけれど)、フランケンシュタインの中で家庭の天使とされた女性を批判し、フェミニズムを見事に描き出しています。
本書中では、倫理学の分野ではもはや忘れ去られ -
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功利主義の概要とそれにまつわる諸問題を、わかりやすくていねいに解説している入門書です。
著者はすでに『功利と直観―英米倫理思想史入門』(2010年、勁草書房)を刊行しており、そちらではかなりていねいに功利主義と直観主義の対立を軸に倫理学の思想史を紹介していますが、これに対して本書では「体系性はあまり重視せず、むしろ倫理学に対する読者の関心を高めることに意を注いだ」と「あとがき」に書かれているように、より親しみやすい内容の入門書となっています。
倫理学は、いったいどのような立場から、どのような方法にもとづいて、倫理についての考察をおこなっているのかという基本的なところから説きはじめています。 -
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タイトルの通り、功利主義について様々な事例を用いわかりやすく解説するとともに、倫理学を学ぶ手引きとなるような一冊。
本書をきっかけに批判的思考を身につけ、実践して欲しいとの思いが込められている。
また巻末のブックリストが充実している。
功利主義については、古典的功利主義から現代の発展した(対応した)功利主義まで具体例を用いて説明されているので非常にわかりやすい。功利主義をはじめとした倫理学が「理屈なかりで人情が足りない」と言われるのは、誤解であることもわかる。
また6章「幸福とは何か」が最も印象に残った。
最大多数の最大幸福を唱える功利主義において、では何が幸福なのかということは最も大切 -
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「道徳」の本質を批判的に考察していく倫理学。倫理学にはスタンスの異なるいくつかの理論があるが,中でも分かりやすい「功利主義」を中心に据えて,他の理論についても触れながら解説。
功利主義は帰結主義,幸福主義,総和最大化という三つの特徴をもつ。初期の徹底した功利計算は,「偉人を救うためなら親を死なせる方が良い」など常識はずれの結論を出していたが,このあたりはいろいろ修正が施されて,そんなに突拍子もない理論ではなくなってる。にもかかわらず,しばしば功利主義に対する批判は「藁人形攻撃」になってしまっていたりして,功利主義はイメージが悪い。しかし,「津波てんでんこ」や医療現場でのトリアージに見られるよ -
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ゴドウィンはウォルストンクラフトとの出会いで功利主義思想に修正を加えた。その娘はフランケンシュタインの作者。
現代の功利主義は、家族や道徳的規則も考慮する間接功利主義。行き過ぎを戒める規則功利主義。
元祖は、直接功利主義で行為功利主義。
同性愛と異性愛に道徳的な違いはない(ベンサム)
男女に違いはない(ミル)
動物と人間に違いはない(シンガー)。
最大多数の中に、どこまで入れるか。
常識的な規則が、功利主義的に見ると不公平に扱っていることがある。
幸福は多様だが、不幸は同じ=ホバー。最小不幸社会を目指す。
医療現場のトリアージは、功利主義的な考え方。
津波のときは、てんでんこで逃げる。