児玉聡のレビュー一覧
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かなり面白い。が、考え得るケースが膨大にあり、思考を放棄したくなる。
功利主義では全ての人は一人としてカウントされる。首相だろうと身内だろうと一人であり重み付けされない。社会全体という俯瞰的な視点から個人を観測する、さながら最大利得を目指すマルチエージェントシミュレーションのようなもの。
功利主義の3つの特徴。1.帰結主義。こう行為するとこういうことが結果として起こるだろう、という事前の予測に基づいて行為の正しさを評価する。2.幸福主義。何かの役に立つという理由からではなく、それ自体に価値があることを内在的価値と呼ぶ。幸福主義によれば、この世界で内在的価値を持つものは幸福だけであり、それ以 -
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明快な解説、豊富な事例くわえて洗練された文体を備えたすぐれた倫理学の入門書である。
著者の前作『功利と直観』を読んだ時には功利主義の論敵であるロールズの描写があまりにもヒロイックでそちらに目を奪われてしまったが、この新書ではあくまで功利主義の魅力が十二分に描かれている。これを読むと功利主義は、功利計算によって既存の道徳規範を批判的に検討する基盤を与えてくれるし、まさしく同じ手法のゆえに著しく常識的な道徳感情から逸脱したものを安易によしとすることもない、非常にすぐれた理論に思われる。
特に印象に残ったのは第5章の公衆衛生に関する箇所である。人間はそれほど合理的ではなく、最善の行動をとれるとは -
Posted by ブクログ
『哲学史入門4』を読みました。
今回は哲学史の中でも、倫理学史や心理学に近い内容が多く扱われているのが印象的でした。確かに哲学科は女性が少ないイメージがありますが、心理学科には女性が多い印象があり、その点とも重なる話だと感じました。
ケアの倫理の説明で出てきた「ハインツのジレンマ」は特に興味深く印象に残りました。また特別章では、2024年のイギリスの「今年の言葉」に「脳腐れ」が選ばれたことや、ユーザーのプロファイリングによってSNSが質の低い内容に偏っていく問題などにも触れられており、やや強い表現を使いながら現代社会への批評も展開されている点が印象的でした。