【感想・ネタバレ】哲学史入門Ⅳ 正義論、功利主義からケアの倫理までのレビュー

あらすじ

第一人者との問答で流れと主要論点をつかむ、“まったく新しい哲学史入門”再始動!

第4巻のテーマは倫理学! 複雑極まる現代を、私たちはどう生きるべきか。何が正しく、何が許されないことなのか。アリストテレスからはじまり、ベンサム、ミル、カントを経て、ロールズ、ギリガン、マッキンタイア、ヌスバウム、ピーター・シンガーまで、主要な思想家・ジャンルを網羅。特別章では、アナキズムと倫理の深いつながりに迫る。問答形式で哲学を学ぶ面白さを伝える、ありそうでなかった決定版入門シリーズ!

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Posted by ブクログ

哲学史入門シリーズの最新刊。

各シリーズ同様、倫理学の主要な理論の第一人者へのインタビューによるライブ感のある哲学史入門講座となっている。同時に、倫理学を学ぶことの意義を探究する構成だ。今回は倫理学がテーマであり、隣接する分野も含め功利主義、正義論、徳倫理学、ケアの倫理を扱う。

特に徳倫理学が興味深かった。
正直倫理学の中でも馴染みのない分野で、実際に比較的新しい学問分野であるという。
要するに、功利主義や義務論などのように最大多数の最大幸福や規範への遵守という倫理の評価を外部へ依拠するのではなく、「徳」を備えた人格そのものに照準を当てる理論である。理想を追求する姿勢を感じられ、さわやかな印象を受ける。

しかしながら、この理論を達成することの困難さは日々私たちは痛感している。
立法国家で暮らす日本国民としては、大前提として規範がありその下で個人的な暮らしを営んでいるという感覚がある。「徳」が個人の行動原理として影響を及ぼせる範囲には、一定の限界があるのではないか。そもそも「徳ある人」とはどのような人物を指すのだろうか。

本書には「徳」に基準を設ける方針も紹介されており、例として日本における道徳教育の内容項目が紹介されている。そこに挙がっている項目に「公正」や「国にへの愛する態度」が含まれていることに、違和感を感じる。

朱 喜哲「〈公正(フェアネス)〉を乗りこなす」で指摘していたように「公正」という資質を個人に過剰に依拠する姿勢は問題含みである。この観点から見ると、日本教育における「徳」項目には、個人の内面的資質として育まれるもの(これが本書の定義における「徳」)と、本来は社会的規範として共有されるべきものが混在しているように思われる。これは、誤った個人非難に繋がりかねないと危惧する。

その他理論についても、各研究者の視点と理論における問題点を詳らかに説明してくれている。決して自分の研究分野を単に称揚するのでなく、批判的な指摘も含まれていることに本書の信頼性の高さを感じた。

過去シリーズとあわせて、最前線の研究動向に触れたい人や、用語の暗記中心の学習に物足りなさを感じている哲学初学者におすすめである。

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2026年04月09日

Posted by ブクログ

『哲学史入門4』を読みました。
今回は哲学史の中でも、倫理学史や心理学に近い内容が多く扱われているのが印象的でした。確かに哲学科は女性が少ないイメージがありますが、心理学科には女性が多い印象があり、その点とも重なる話だと感じました。

ケアの倫理の説明で出てきた「ハインツのジレンマ」は特に興味深く印象に残りました。また特別章では、2024年のイギリスの「今年の言葉」に「脳腐れ」が選ばれたことや、ユーザーのプロファイリングによってSNSが質の低い内容に偏っていく問題などにも触れられており、やや強い表現を使いながら現代社会への批評も展開されている点が印象的でした。

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2026年03月13日

Posted by ブクログ

倫理学の功利主義、正義論、徳倫理学に関して朧気ではあるが理解できた。

加えてケアの倫についても少し分かったような気にもなれた。

この本を入門として他の書籍で勉強する事が必要ではありそう。

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2025年12月18日

Posted by ブクログ

「ケアの倫理」の章で、「人が正義を求めるのは、相手との向き合い方、自分との向き合い方が分からなくなったとき」というアリストテレスの言葉が刺さった。正しさを考えるよりも前に向き合い方を考えることは大切だ。

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2025年11月10日

Posted by ブクログ

4冊目もとても読みやすく重要なポイントがまとまっているので、現代の西洋での倫理学を理解したい方には良い内容である。
個人的には徳倫理学の章が興味深かった。カントなどの義務論は、行為の是非を問うが、徳倫理学は人格を問う。それはそうだと思うのだが、人格を重視するのであれば、例えば、西洋ではゲーテやシラーなど、教養を高める教育思想があるし、日本の報徳思想や心学など、人間性を高める伝統的教育がある。それらを学ぶことの方が有意義だと思えてきた。
また、徳を重視し過ぎると軍国主義になるや、慰安婦の国家賠償の問題からケアを考えるなど、事実を無視した左翼思想が出てくるところは残念である。

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2025年10月10日

Posted by ブクログ

面白かった。
哲学の本を読んでると「そんなこと延々と考えてどないすんねん」と思うことが多いけど、まあ倫理学は考える価値があると思う。万が一、皆が納得できる形で正しさをルール化できたら、立法やらなんやらがすごくスムーズになると思うので。そんな夢を追って思考を深めているならカッコイイと思う。



はいえ、やっぱり倫理は何かしらの理屈で説明できるものではないのでは、というのが読み終わっての感想かもしれない。
徳のある人物を目指す徳倫理学や、現場レベルの判断を問うケアの倫理は、結局「皆が心に手を当ててやっていくしかない」的な発想やと思うし、まあ実際そうよな、という気持ちもある。

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2025年10月02日

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