山際康之のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
1937年7月7日盧溝橋事件に端を発し、第2次上海事件、南京大虐殺など、日中全面戦争が始まった。戦争突入の伏線は、1936年2月26日の雪深い日に起きた二・二六事件。陸軍のクーデターのわずか3週間前に、日本のプロ野球リーグが誕生した。大学野球が全盛の時代に、職業野球であるプロ野球がスタートした。1931年、1934年には日米野球が行われ、米国はベーブルースやルーゲーリック、日本は現在も受け継がれる沢村賞の生みの親の沢村英治投手が快投した。日中全面戦争に伴い、徴兵検査や徴兵も厳しくなる。プロ野球選手たちは、徴兵逃れのために大学等に在籍し、球団が援助した。戦争と同時にスタートしたプロ野球は、戦意昂
-
Posted by ブクログ
このレビューを書いているのは、大谷翔平がメジャーリーグでも大活躍し、ワールドシリーズまで進出し、NPBはパ・リーグの覇者ソフトバンクと、セ・リーグで「下剋上」を果たし、シーズン3位から日本シリーズまで辿り着いた横浜とが戦っている。…という、野球が非常に面白い時期である。
それらのすべての始まりである、日本におけるプロ野球(職業野球)の誕生は、あの、日本が大戦へ、敗戦へと歩みを進めていく時代の、二・二六事件と時期をほぼ同じくするのだという。
職業野球で活躍する、又はそれを期待される若者たちが道半ばで戦場へ向かい、戦死する者もいる。あのような世の中でなければ、どのような野球選手としてどのような -
Posted by ブクログ
正力松太郎、小林一三と有馬頼寧。3名のオーナーの視点からの、戦争に巻き込まれていく草創期のプロ野球。
前者の巨人、阪急のお二人はあまりにも有名だろう。本書は実質セネタースのオーナーだった有馬頼寧伯爵が主役。華族としてプロ野球の黎明期、断りきれず関わった球団。貴族院議員の有馬に因んたセネタース。
大政翼賛会、近衛文麿内閣に携わる3名。日米開戦に進んだいく世相。出征する伝説の名投手沢村栄治や改名を余儀なくされるスタルヒンなど。
戦争は終わった。公職追放される3人。復帰後の読売と阪急の興隆と対象的な没落貴族の有馬。晩年は日本中央競馬会の理事長を務め「有馬記念」に名を残す。
内容が思いが駆け足 -
Posted by ブクログ
「××の××さん、召集令状が参りました。直ちにおうちへお帰りください」
戦時中、プロ野球の試合を中断して競技場に響いたアナウンスだそうだ。戦争に関する本を読むといつも思うことだが、戦争は必ず、予想不能の事態を引き起こす。例えば第二次大戦末期、兵士用の毛皮の足しにするため、家で飼っている猫と犬は強制的に供出させられ、撲殺されたが、開戦当初、飼い猫や飼い犬にこんな悲劇が降りかかることを予想した人がいただろうか。
戦争は誕生したばかりのプロ野球にも荒唐無稽な要求を突きつける。本書は、プロ野球そのものの解散を含む政府のそうした要求に、協力するフリをしながら抵抗した野球界の様子を描いたルポである。 -
Posted by ブクログ
昭和9年、ベーブ・ルースを中心とする全米野球チームを相手に孤軍奮闘した17歳の日本人投手、沢村栄治。将来、日本球界を背負うはずだった彼だが、3度の徴兵を受け、その才能をすり減らしたまま戦死する。本書はそんな悲劇のヒーローである沢村の生涯を中心として、戦時下の日本野球連盟が日本野球を守るためにどのような行動を取り、軍との関係を作ったのかをまとめる。
戦争の激化により野球どころではないという世論に対し、野球連盟は満州やフィリピンへの慰問遠征や試合前の手榴弾投げコンテスト開催などを実施し、敵国が使う横文字の野球用語を廃止する。こうした軍への協力姿勢を見せる一方で、選手を徴兵させないように大学へ入学 -
Posted by ブクログ
戦争は人々から夢や希望を奪い去る。そして時には生きることさえも許さない。日中戦争から太平洋戦争に拡大していく先の大戦においては、時を同じくして立ち上がった職業野球、現在のプロ野球の多くの選手たちも兵士として戦場に向かい、短い人生の幕を下ろした。
日本で職業野球が発足した昭和11年2月。それは正に2.26事件が起こり軍部が政治に大きく関与しながら、日本が軍国主義に駆られ、やがて大陸での侵攻を開始する時期とほぼ同じだ。それ以前に野球は国民の間でも人気のスポーツ競技で、アメリカの大リーグの選抜チームと日本の選抜チームが対戦するなど話題に事欠かない競技であった。現代野球にも賞として名を残す沢村栄治も1 -
Posted by ブクログ
沢村栄治の軍隊時代の評伝を彷彿とさせる表題だが、そうではなく、1936年から1945年の戦前・戦時期における日本プロ野球(当時は「職業野球」)の戦争協力と協力を偽装した「抵抗」を、職業野球連盟の動向を軸に描いたノンフィクションである。沢村をはじめとする選手よりも連盟の理事らの動きがメインなので、沢村目当ての読者は肩透かしを食うかもしれない。主に学生野球の戦時下の動向を取材した山室寛之『野球と戦争』(中公新書)とは相補関係にあると言える。
選手の徴兵逃れのために夜間大学に在籍させたり、大学生の兵役猶予停止=「学徒出陣」でその方法が使えなくなると今度は工場徴用に潜り込ませるなど、選手の生命を