青木智美のレビュー一覧

  • 魔王の島

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    ネタバレ

    面白い。
    ゲーテの「魔王」、シャンソンの名曲「聞かせてよ愛の言葉」を巧みに挟み込む印象操作、構成の妙で綴られるこれぞフレンチミステリの傑作。

    自分の中では「魔王」はシューベルトの曲へ、「聞かせてよ愛の言葉を」はZAZの「Je veux」へ比較的馴染みあるものへと変換されはしたものの、不穏さ以外の何物でもない「魔王」と、一見甘やかで情熱的、けれども裏にある悲哀を含んだシャンソンの曲がこの物語の深層を形造り、最初に語られる表面的な物語とは全く異なる物語を浮かび上がらせてくる。

    フレンチミステリの展開で唸らされた思い出深い作品というとピエール・ルメートルの『その女、アレックス』だが、それに並ぶほ

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    2023年03月05日
  • 魔王の島

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    2019年の大学の講義から物語は始まる。舞台はノルマンディー、1986年のサンドリーヌとダミアン警部、1949年のシュザンヌのそれぞれの視点で主に描かれる。始めはホラーぽい展開でこのままホラー感全開で終わるかと思ったが、1章2章3章と趣きが深まっていって重厚な小説に変わって行った。最後はまた大学の講義風景に戻って、こんなにのけ反ったのは初めてかもしれない。凄い作品に出会えた。

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    2023年03月04日
  • 魔王の島

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    良かったです
    すごい構成だったなぁ、一読の価値あり!と自分は思うんですが、日本だと賛否分かれるだろうなぁと思いました

    結局そうなん?みたいなね
    日本はこれはダメなやつって風潮あるんだよね
    ただ「物語」に根源的にあるニーズを仕掛けに活かした秀作だと思うんだよね
    これ以上はネタバレになるんでやめとくけど

    秋さんにぜひ読んでみてほしいなぁと思いました
    秋さんならどんなレビュー書くのかなって
    お時間あればぜひ

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    2023年03月02日
  • 魔王の島

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    久々に重厚なミステリ小説を読んだ。
    この小説は奥行きがある。アメリカスタイルのミステリは横に広く登場人物も多くて複雑に絡み合うものが多いが、
    このフランス小説は横に広がる絡みは少ないが、奥行きが何層もある。ほじくって行くと、まったく別の景色が見えてくる。
    そしてまたほじくると、また景色が変わってしまう。物語を回していく登場人物も10人弱しかいない。

    ストーリーの骨子自体はシンプル。あらすじにもあるように、祖母の訃報を聞いた女性が、祖母の終生の住処である孤島へ遺品整理に行く。
    そこで村人たち何人かに出会い、その島にまつわる悲しい過去の物語を知る・・・と、シンプルなものです。

    ミステリマガジン

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    2023年03月01日
  • 魔王の島

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    ネジ式ザゼツキーあたりの御手洗潔シリーズが好きな人に刺さるかも。
    めちゃくちゃな展開(ミステリ的に)も、最終盤までそこかしこで感じる色々な引っかかりも、全てが結末に収斂され腑に落ちてとても良かった。

    0
    2023年01月07日
  • 魔王の島

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    ネタバレ

    ずっと不穏な違和感はあって、それが何なのか真相を知りたくて、あっという間に読み終えました!何重にもなっている構造がとても面白かった。

    0
    2022年12月18日
  • 魔王の島

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    ネタバレ

    人生って、ときにはその人にふさわしくないこともあるから
    118ページ
    なかなか面白い表現だと感心したものだが。

    面白い!この話。でも、猫好き、ドイツ好きな人には思い切り嫌な話だからご注意。最後まで読めば良かった、になるけれど。

    思い切りネタバレなうえに書き殴りなので、ご了承ください



    はじまりは2019年現在の大学の講義。1949年の事件と1986年の出来事が交互に語られ、物語の真相に迫っていくと思いきや。
    中盤くらいでなんだありきたりの実験かい、と一気に詰まらなくなった、と感じたのだが、その後また怒涛の展開に。
    胸糞悪い。
    10人の罪なき子供が殺されても、あ、そうなのへー、だけれど罪

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    2025年11月27日
  • 魔王の島

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    「もっと近くにおいで。
    そうすれば楽になれるから……。」

    ある女性が、死亡した祖母の遺品整理のために、ノルマンディ沖にある島を訪れる。
    そこにあったのは「魔王」の痕跡……。

    物語はホラー小説のように始まる。
    ところが、別の章が始まると事態は一変し、読者を驚かす。
    最後の章まで、先の見えない物語。

    不条理こそ恐怖
    虚妄こそ逃避

    人の心こそ、出口のない迷路。

    0
    2025年11月09日
  • 星の王子さま 80周年記念・愛蔵版

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    上司がおすすめしてくれた1冊。
    なぜこの本?って正直思った。
    学生時代に読んだ時は、飛行士が砂漠に不時着して生きるか死ぬかの時に、手伝いもせずに羊の話やバラの話をする王子さまの空気の読めなさっぷりにイライラした印象しかなかったから。

    ただ今となって読み返してみると、その感想はカレーの王子さまくらい甘かった。
    王子さまが出会う大人たちは、みんな何かに夢中だけど、本質を見失っている人ばかり。
    キツネとのエピソードは愛や信頼といった目に見えない価値を再認識させられた。大切なものは目に見えない。

    出版時、著者は43歳、亡くなったと考えられるのが44歳。自分はここまで考えることができるのかなあ。

    0
    2025年09月03日
  • 魔女の檻

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    ネタバレ

    「魔王の島」を読んでいなければ、つまり作品への先入観を持たなければもっと楽しめただろうなとは思う。まーた作中作めいた実在しない物語かあ。
    謎には答えが示され、きちんとオチてはいるし納得もできるのだが、ヴァンサンやシビルといった「架空の」人物の一人称視点がある点だけはアンフェアなように思う。まさかカミーユの読んだ報告メモが小説体系で書かれていたはずもなかろうし。

    0
    2025年07月12日
  • 魔王の島

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    祖母の訃報を受けてわけありの孤島に向かった女性の話と、祖母の若い頃に何が起こったかが交互に語られる第一部。そこから一転して、何が真実なのか警察が探り始める第二部、そして…
    読み終わって振り返ると、ミステリとしては何じゃこりゃと思うが、真相はなかなか心に刺さったし、読んでいる間は全体を流れる不穏な雰囲気や何度もひっくり返る現実が面白かった。”心の避難所”がすごい。
    しかしグロい描写が多いし、読む人を選びそうな作品だと思う。

    0
    2025年06月20日
  • 魔女の檻

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    ネタバレ

    かつて、魔女だと糾弾された女性達が殺された山。その麓に、実業家が私財を投じて作り、管理する小さな村があった。そこの警察に、新しく署長のジュリアンが赴任。平和な村だと聞いていたのに、立て続けに死亡事件が起こる。ジュリアンと部下たちは解決のために奔走するが、その部下たちも‥。

    村人や、ジュリアンの部下たちの死に様がコワイ。みな、聞こえるはずのない声を聞いていた。殺された魔女たちの呪い??と、見せかけて、驚天動地の仕掛けが明かされる。全ては実業家が、脳の病気の娘を治すために仕組んだ、壮大な劇場だったのだ。現代の医科学であんなことが可能なのか?は置いといて、愛する娘のためとはいえ、この実業家の情熱は

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    2025年06月12日
  • 魔女の檻

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    前作『魔王の島』が突っ込みどころ満載の作品で、なかなか面白かったので手に取ってみました。この作品のほうがミステリー度は高いと思います。小さな村で次々と起こる不可解な死。どう収束させるのかと思って読んでいたら、予想を超えた結末でした。

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    2025年05月17日
  • 魔王の島

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    ネタバレ

    じわじわとしたホラー感を楽しみつつ年号にも気を付け(年号のない段にも気を付け)、急に不条理な展開になったな? と思ったら合理的な説明をつけて一旦納得させておいて……とまあ忙しいお話。「筋の通らない部分のある話を聞かされる話」自体は筋が通っているものだから、まあしっかりと騙されかけた。いくらなんでも都合がよすぎる気がする上に生きていたならどうしてその後何の音沙汰も、と思ったところで最後のオチ。映画「ライフ・オブ・パイ」や何か他作品を思い出す気がするのだが、さてあの作品の名前は何だったか。そもそも本当にそんな作品があったろうか。ドグラ・マグラではないと思うのだが。

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    2025年05月01日
  • 黒い谷

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    ネタバレ

    セルヴァスシリーズ第6作。前作『姉妹殺し』の次作。相変らずもてまくりのセルヴァスだが、たかがタバコをやめることができないダメ男。前作の無茶な行為で責任を問われ、懲罰委員会の決定を待っている停職中の身である。
    これが元恋人の助けを求める電話を受けたとたん前後を考えず突っ走る。もっと考えて動けよと突っ込みながら読み進む。多くの事件が発生するがそれらの被害者はそうされても仕方がないような悪事を働いていた犯罪者だったのである。セルヴァスの貢献はほとんどない中で、いつも通り危機一髪のところで犯人は捕らえられ、一時的な平和がおとずれて本編は終了するが事件が起こる社会的病理の基底の部分はなにも変わらず悪くな

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    2025年03月30日
  • 魔女の檻

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    ミステリーはあまり読まないので、ミステリーとしてのレベルはわからないが、結末はかなり予想外。
    現在の科学では実現できないオチというのは、SF好きの立場では違和感がない。純粋ミステリーとしては邪道かもしれないが
    楽しめる。

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    2025年03月25日
  • 黒い谷

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    ネタバレ

    これ以上マルタンがひどい目にあわないようにここで終わってほしいようなエンディングでしたが、まだ続くんですね。
    読み応え十分な700ページ超えでしたが、事件の解決は結局パスワードの解析によってもたらされるのが残念な気もしますが、それまでのマルタンの苦労を思えばもういいでしょう。

    フランス社会が大変なことになっていることもよくわかりました。

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    2025年03月08日
  • 魔女の檻

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    雪山・魔女狩り伝説・殺人→フランスらしいダークなミステリー小説
    期待を裏切りません
    村の人間の大量殺人がどのように起きたのか、どのような背景があったのかを現在と過去を行ったり来たりして読ませるスタイル
    こうだろうと謎解きをしたが、うまく予想をずらしてくれる
    いい作品です

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    2025年01月19日
  • 魔女の檻

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    タイトル!絶妙!

    真相の好みは分かれると思いますが、悔しいほどに説明がついてしまう。どうして、なんで?!と引き込んでおいてからの、真相。えーって、でも、全てのことの説明がつく。

    魔王の島も良かったけど、こちらもとても楽しめました。

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    2025年01月06日
  • 魔女の檻

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    かつて魔女裁判が行われていた村で起こった事件… 人間の醜さと情念を禍々しく描くミステリ #魔女の檻

    ■あらすじ
    かつて魔女裁判が行われていたとされる村に、新任の警察署長ジュリアンが赴任されてきた。到着してまもなく青年が死亡する事件が発生、さらにその後も住人達が不幸な出来事に見舞われていく。

    警察の部下たちと一緒に事件解決に奔走するも、幽霊、幻聴、謎の言葉が聞こえるなど、不可思議な現象に吞み込まれてしまう。この村では一体何が起こっているのか…

    ■きっと読みたくなるレビュー
    序盤から不穏な空気に包まれるこの感じ、なんか怖いんですけど…

    舞台はかつて魔女と間違われた女性たちが多数殺害された村

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    2024年12月21日