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面白い。
ゲーテの「魔王」、シャンソンの名曲「聞かせてよ愛の言葉」を巧みに挟み込む印象操作、構成の妙で綴られるこれぞフレンチミステリの傑作。
自分の中では「魔王」はシューベルトの曲へ、「聞かせてよ愛の言葉を」はZAZの「Je veux」へ比較的馴染みあるものへと変換されはしたものの、不穏さ以外の何物でもない「魔王」と、一見甘やかで情熱的、けれども裏にある悲哀を含んだシャンソンの曲がこの物語の深層を形造り、最初に語られる表面的な物語とは全く異なる物語を浮かび上がらせてくる。
フレンチミステリの展開で唸らされた思い出深い作品というとピエール・ルメートルの『その女、アレックス』だが、それに並ぶほどの「おおぅ」という展開(似ているわけではありません)。
ギヨーム・ミュッソ『ブルックリンの少女』を彷彿とさせるいたたまれない事案。
あらすじは書かない。
もし未読でこれから読もうとするのならば是非”無”から楽しんで欲しい作品。
これがこのミス2023年度版の10位だものなぁ。
『第八の探偵』といい10位との相性が良いようだ。
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2019年の大学の講義から物語は始まる。舞台はノルマンディー、1986年のサンドリーヌとダミアン警部、1949年のシュザンヌのそれぞれの視点で主に描かれる。始めはホラーぽい展開でこのままホラー感全開で終わるかと思ったが、1章2章3章と趣きが深まっていって重厚な小説に変わって行った。最後はまた大学の講義風景に戻って、こんなにのけ反ったのは初めてかもしれない。凄い作品に出会えた。
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良かったです
すごい構成だったなぁ、一読の価値あり!と自分は思うんですが、日本だと賛否分かれるだろうなぁと思いました
結局そうなん?みたいなね
日本はこれはダメなやつって風潮あるんだよね
ただ「物語」に根源的にあるニーズを仕掛けに活かした秀作だと思うんだよね
これ以上はネタバレになるんでやめとくけど
秋さんにぜひ読んでみてほしいなぁと思いました
秋さんならどんなレビュー書くのかなって
お時間あればぜひ
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久々に重厚なミステリ小説を読んだ。
この小説は奥行きがある。アメリカスタイルのミステリは横に広く登場人物も多くて複雑に絡み合うものが多いが、
このフランス小説は横に広がる絡みは少ないが、奥行きが何層もある。ほじくって行くと、まったく別の景色が見えてくる。
そしてまたほじくると、また景色が変わってしまう。物語を回していく登場人物も10人弱しかいない。
ストーリーの骨子自体はシンプル。あらすじにもあるように、祖母の訃報を聞いた女性が、祖母の終生の住処である孤島へ遺品整理に行く。
そこで村人たち何人かに出会い、その島にまつわる悲しい過去の物語を知る・・・と、シンプルなものです。
ミステリマガジンの「ミステリが読みたい2023年版」で、海外小説ランキング9位でしたが、
国内の9位作品と比べると圧巻で圧勝ですね。さすがに世界の9位でした。
物語以外の部分でも、著者が文学や古典の知識をちょくちょく入れてくれるのが嬉しい。
「へ~そういう作品があるのか、あの作品にはそんなセリフがあったのか」と勉強になります。
はっきり言って、中盤までは読者は何を読ませられているのか、いまいち分からない状態になります。
著者の目的が分からない。
犯人をあてるわけでもなく、動機を見つけるわけでもなく、トリックを解明するわけでもなく、狭義のミステリ小説の枠にはまらない作品。
それでいて、謎は深まるばかり。訳が分からないまま、それでも話に引き込まれて行く・・・。
描写に少し凄惨な部分もあるので、読者の対象年齢は18歳以上が良いと思う。
さらに、この本のもたらすものを余すところなく受け止めようとするならば、読者は25歳以上が望ましいかも知れません。
若いうちは共感が難しい素材を使っているためです。
終盤、この物語が本当は何だったのかが分かったとき、とても深い感銘を受けることになるでしょう。
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ネジ式ザゼツキーあたりの御手洗潔シリーズが好きな人に刺さるかも。
めちゃくちゃな展開(ミステリ的に)も、最終盤までそこかしこで感じる色々な引っかかりも、全てが結末に収斂され腑に落ちてとても良かった。
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ずっと不穏な違和感はあって、それが何なのか真相を知りたくて、あっという間に読み終えました!何重にもなっている構造がとても面白かった。
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ストーリーの大半が、娘を失った登場人物が自我を守るために作った作り話で、そのことが最後に分かるようなっている(逆に言うと最後まで分からなかった)
別の小説で、ストーリーの大半が加害者の書いた小説だった、というのがあって、この時は、ちょっとそれはないよ、と思わないでもなかったが、
「魔王の島」は、よく出来ていて、納得感があった
アイデアとして凄いと思ったのが、
作り話の中の架空人物が更に作り話を作っているという、2重の構造になっていることで、
小説の中盤で、前半部分が作り話であることが明かされるが、
このことで、後半部分は虚構ではないと思わせるようになっている。
でも、最後まで読むと、逆に、後半も虚構であること示唆していたことが分かるという作りになっている。
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これまでの常識を覆してくれる作品(^◇^;)
いろいろな意味でこうした作品が発表されるのは、ミステリファンとしては大歓迎!
ですが、これ以上のことが書けないことが……。
興味があったら一読を!
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良くあるミステリーの出だしだな、と思っていたら話が二転三転しての驚きの結末。
二転三転具合もしっかり地に足付いてるし、結末もそれを踏まえてのものだからまあ納得だけど最後もう少し解説して欲しかったな、というのが正直な所でした。
ある映画を思い起こしてタイトル書こうかと思ったけどネタバレになるので控えます。
再読すると伏線が分かるかも。面白かったです。
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良くある孤島に取り残され系かと思いきや2章で予想しない展開になり、3章で真相も犯人も分かった!と思わせておいてからの4章で明かされる事件の全貌。構成がすごい。
このミス2023海外編10位。これで10位って今年はレベル高いなあ。
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2023.1.26
後半は展開読めちゃって萎えたけど全体的には満足。
ずっと不穏な感じが漂ってて好みだった。
サンドリーヌの島での描写もっと欲しかった。
あと、サンドリーヌの現実世界に島の住民が地域住民として出てくるけど、シモンいたっけ…?彼は架空の人物…?
最初からもう一度読んだ方がハマれそうだな、、
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疎遠だった祖母の訃報を突然受け、彼女の住んでいた島に向かうサンドリーヌ。
・・何を書いてもネタバレになりそうでなかなかに難しい。
章ごとに二転三転する展開がなんとも興味深い。
ただ、自分はミステリをあえて推理せずに作者の用意した驚きをそのまま受け取りたいという読み方をするんですが、ちゃんと推理したい人にとってはどうなんだろうな?賛否ありそうなラストだなとは思いました。推理できるのかな?あのラスト。そんな伏線というか材料提示されてましたっけ??
まあ自分はとても楽しめました。それだけで充分だな。
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あの最後のエピローグで完全にやられました。心の避難所。それが「誰の」避難所だったのか。冒頭からヒントがいくつかありましたが(サンドリーヌが感じる数々の違和感や不快感)、まさかここまでもがほとんど虚構だったのか!結局、彼は避難所に棲んだままなんだけど、ある種の生きる希望を得た架空の現実を生きるのは幸せなことなのかもしれない。精神の異常の描き方は秀逸でした。
好みの問題かもしれませんが、感動のストーリーをウリにしたあからさまな話より、こういう話の方がずしりと来ます。面白かった!
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えっっ⁉︎とにかく驚き‼︎
海外作品苦手な私が一気読みしてしまった。これはミステリーなのかなんなのか。いやいや、人間の心こそミステリーそのものだ。
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着想や構成を楽しんだ人勝ちなんだろうけれど、うーん。
正直私は、◯◯物も、女性や子どもが嫌な目に会うのも辛過ぎてダメなので、それほどページターナーではなく、むしろ重い気持ちで難儀した。ダ◯◯◯が出てきたあたりで、そうかもなーと思ったら、やはりそういう結末に。
入れ子のような、層のような構成は、感覚的に面白かった。
まあちょっと苦しい読書だったな。
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これはないのでは感と力技、すごい!、と印象がないまぜになるのを止められません。終盤まですごい!と思って読み進めたけれど、なんとも言えない後味が。いやもう、ここまで世界が練り上げられるのはむしろ驚異的ですよ。全て創作物にすべきです。衝撃度が圧倒的だったその女アレックスを思い出しました(←ストーリーは全く違いますよ、念の為)フレンチミステリはいろんな世界を見せてくれるなあ、、としみじみ感じ入ります。これからの出会いが楽しみです。
Posted by ブクログ
不気味な島で女性が遭遇する不可思議な出来事と、その事件を調べる警部。
ゲーテの詩「魔王」をモチーフに繰り広げられる、謎と罠に満ちたミステリー。
得体のしれない不気味さと、ときおり現れる違和感が、やがて真相へとつながっていく過程はなんとも恐ろしい。
反則ぎりぎりのミステリーとも言えるが、骨格も人物造形もしっかりとしていて、トリッキーなものにありがちな安っぽさとは無縁だ。読み進めるほどに不安と恐怖が募り、重厚なサイコミステリーとして深い印象を残す作品だった。
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