青木智美のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
ネタバレセルヴァスシリーズ第6作。前作『姉妹殺し』の次作。相変らずもてまくりのセルヴァスだが、たかがタバコをやめることができないダメ男。前作の無茶な行為で責任を問われ、懲罰委員会の決定を待っている停職中の身である。
これが元恋人の助けを求める電話を受けたとたん前後を考えず突っ走る。もっと考えて動けよと突っ込みながら読み進む。多くの事件が発生するがそれらの被害者はそうされても仕方がないような悪事を働いていた犯罪者だったのである。セルヴァスの貢献はほとんどない中で、いつも通り危機一髪のところで犯人は捕らえられ、一時的な平和がおとずれて本編は終了するが事件が起こる社会的病理の基底の部分はなにも変わらず悪くなる一方だ。
フランスばかりでなく世界中が変わってきているのは共通の現象でそれも決して良い方向性でないのが感じられて怖くなる読書経験だった。
みなが良かれと思って行動しているその行為がホモ・サピエンスの終焉を近づけているようにしか思えない。 -
Posted by ブクログ
かつて魔女裁判が行われていた村で起こった事件… 人間の醜さと情念を禍々しく描くミステリ #魔女の檻
■あらすじ
かつて魔女裁判が行われていたとされる村に、新任の警察署長ジュリアンが赴任されてきた。到着してまもなく青年が死亡する事件が発生、さらにその後も住人達が不幸な出来事に見舞われていく。
警察の部下たちと一緒に事件解決に奔走するも、幽霊、幻聴、謎の言葉が聞こえるなど、不可思議な現象に吞み込まれてしまう。この村では一体何が起こっているのか…
■きっと読みたくなるレビュー
序盤から不穏な空気に包まれるこの感じ、なんか怖いんですけど…
舞台はかつて魔女と間違われた女性たちが多数殺害された村。事業家が村を買い取り、現在の村長となっている。村民は羊飼い、宿屋、料理人、スクールバスの運転手、ブロガーなど、何処にでもいそうな彼らなんですが、どうも一癖二癖ありそうな雰囲気。読み進めていくほどに、いったい何が起きているのか混乱を極めていく。
本作は主に警察署長ジュリアンの視点で進行。彼はいわゆる一般的な感情を抱き、当たり前の行動をするのです。そのため読者は同じ目線で読み進めることになるのですが、彼のおかげで今起こっている怪奇っぷりがより強く伝わるんですよね。
次々起こる事件もあらゆる部分が禍々しい。呪われているというか、不幸がつきまとっているというか、どうもはっきりしない。不快感に包まれる物語ってのはいいんだけど、結局どういう話なの? うーむ…
これまでさんざん読まされた猟奇的なストーリー、変な章タイトル、意味が分からない事実に関する記述などなど。終盤まで読み進めると…
はぁあああああぁ?何言ってんのか理解できず、さらに読み進めると徐々に脳みそが追い付いてくるんです。
ある意味ひとことで説明できちゃうような題材かもしれないんだけども、人が抱く愛情、醜さ、傲慢さ、悲哀を丁寧に描いているから、作品全体の重力が半端ないんだよね。読み終わってみると、何だかイイ話だったような気もしてしまうという…
正直、どなたにもおすすめできるとは言い難い。森の中を迷い込む感覚、訳わかんなない、助けてって感覚を味わいたい方は、めっちゃ楽しめると思いますよ!
■ぜっさん推しポイント
「正義」の反対語は何か知ってます?
「正義」の反対語は、逆の立場から見た「正義」だそうです。「悪」じゃないんですって。たしかに社会秩序を守るために法律がありますが、一定の善と悪を定義しているだけなんすよね。
時は常に流れ、時代や世相によって価値観や技術も進化していく。正義の物差しってのは質量も重力も方向もすべてが曖昧だよなぁ。こんな風に得体の知れない虚無感に浸れること請け合いです。独特のフランスミステリー、楽しんでください。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ評判通りの名作だ。とはいえ、ネタバレなしでは紹介が非常に難しい。
というのも、紹介文にあるような「魔王の島」というのは(作品内の)現実ではないから。
キーワードは「心の避難所」。
衝撃体験から逃れるために人間は心に避難所をつくるのだが、その避難所をつくるという精神的治療の行為すらも物語に織り込んだ避難所の構築が、本作で展開される「事件」だった。これが真相。
似たような印象を受けた日本作品として
貫井徳郎「慟哭」
乾緑郎「完全なる首長竜の日」
山田正紀「ミステリ・オペラ 宿命城殺人事件」
が思い浮かんだ。
エンタメとして申し分なし。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ・あらすじ
田舎町で新聞記者をしているサンドリーヌは一度も会ったことの無い祖母の訃報を受ける。
祖母が暮らしていたのはノルマンディー付近にある孤島。
その島は世界大戦中はドイツ兵の拠点になっていた島だった。
なぜ祖母はその島から出てこなかったのか、島で起こった凄惨な事件が示す新事実とは?
・感想
なるほど…こういう展開になるのかー。面白かった。
続きが気になりすぎて1日で読み切ってしまった!
1部のサンドリーヌ側の描写は現実味がなく曖昧、読者を不安にさせる描写が続くので何となくこれは夢の中の出来事なのかな?と検討はつく。
そして2部になって地に足ついた現実世界の話かと思いきや…。
ダミアン側の事件であるメラニー失踪事件が終盤まで殆ど展開しないし、当然その事件も関わってくるのは自明の理なので、もう殆どページ数が無い所でメラニーが脱走しちゃって「ここでメラニー脱出しちゃってるけどどう処理するんだろう」と不思議に思ってたんだ。
そして舞台が2019年になり教授の「今までの話を分析」云々のセリフを見た所で、やっとそういう事かとこの作品のトリックを理解した…!
帯に「彼女のはなしは信じるな」とあり信用できない語り手なのはわかっていたので色んなパターンを想像していたんだけどこういう着地点になるとは。
私が予想していた様々なパターンは、作者が望んだような動線を描いていたと思うww
まんまと作者の手のひらの上で転がされた。
くどいほどに物語の主旨は明示してあるので、夢オチとは違うと思うんだけど初見じゃ見抜けない構成だなと思った。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ・あらすじ
フランスの架空の街モンモールが舞台。
ジュリアンは新人の警察署長としてモンモール山という岩山が聳え立つ小さな集落モンモールに赴任してきた。
近代的に整備された町並みはある一人の富豪ティオンビルが村を買取り私財を投資しているからだという。
この村には1600年代に魔女狩りと称して村の女性たちを幾人も岩山から突き落とし、その女性たちが魔女となり村に呪いをかけたという言い伝えがあった。
そしてジュリアンの赴任初日から村で何人もの人間が恐ろしい方法で死んでいく。
・感想
魔王の島の作者だし、合間に挟まれる「事実」パートが脳の電気信号やら薬の作用がなんちゃらと書いてあったので人体実験の話なのかな?と予想しながら読んでた。
大体予想通りだったけど、次々と起こる事件は結構陰惨、ホラーは読みなれてない&あまり得意ではないのでホラー描写には結構ドキドキした。
続きが気になって読む手が止まらないのも前作?と同様でおもしろかった。
けど思わせぶりな台詞や描写も明かされてみれば「そんなもんか」程度だったなという印象。
どっちかといったら魔王の島の方が好みだったかも。