青木悦子のレビュー一覧
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「ヴァイオリン職人の探求と推理」というタイトルと、クラシカルなカバーイラストで、良作の予感。
ポール・アダム…作者の名前は平凡な感じだけど…
もちろん初読。
トリックとかなんとかではなく、探偵役となるヴァイオリン職人・ジャンニの人間としての円熟した魅力がとにかく楽しめる作品。
本作では63歳。もちろんヴァイオリン職人として一流で、自然豊かな土地に工房を構え、今も仕事を楽しんでいる。昔からの友人たちに囲まれ、多くの教え子に慕われ、子供たちや孫たちも時折遊びに訪れる。
心から愛していた妻を亡くしてしまったが、やはり子供や孫もいる58歳の魅力的な女性・マルゲリータとの恋の予感も。 -
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寝たきり状態の老人に人違いで襲撃されたがために、命を狙われるハメになった主人公の逃亡と真実の追求への顛末を描いた物語。だんだん「こういう文章か」というクセに慣れたら、個性あるキャラクタにも愛着がわいてそれなりに楽しめました。
ただ万人向けかというとどうでしょう…。(アイルランド)ローカルネタ多めなユーモア、映像畑出身だからか目で見て想像できるように比喩や装飾性を多めに描いたキャラクタの外見や行動など、結構な独特のクセがあり、それがそのまま文章量の多さにつながってもいるので、「逃亡劇」のわりにはさほどのスピード感を感じられなかったように思えました。
ただ主人公と看護師の、厳しい現実と立ち向かいながら自分たちなりに前を向いて頑張っているそれぞれのキャラクタ性や、彼の幼なじみの粗暴な警官や訪問先の老女など、知人たちにもいとおしい魅力を感じたので、また違うお話で出会ってみたいな、とは私は思いました。 -
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翻訳までされる海外のユーモア・ミステリーは、たいてい外れがない。しかも本書は翻訳者が原書で読んで、いたく気に入ったための持ち込み企画作品だそうだ。さればこそと読者側からの期待値も込めてしまう。無論ただものではないはずだ、と。
しかし出だしを読んでゆくにつれ、少し後悔の念が。ぼくの場合、食べ合わせがよくなかったのかもしれない。ルースルンドの『三日間の隔絶』、ウィンズロウの『業火の市』といった超ド級のシリアス・アクション大作ニ作の読後だったので、この本を読み始めた途端、思わず膝が砕けそうになった。そこら辺にいる人たち皆にこの本を読ませたら、吉本興業の公演のお笑い芸人たちみたいにどどどっと、倒れちゃうんじゃないだろうか。それも何度も。
タイトルから既に気が付くべきだった。何しろ『平凡すぎて殺される』だもの。帯には「このミステリ面白すぎる!!」とうたい文句。面白いとは、そういう方向の(つまりユーモアの)面白さだったのか。やられた! そう、本書はミステリーの内容を持ったユーモア小説である。
主人公は特に何のとりえもない地味ぃ~な青年。無職なので日銭を得るために病院でして老人患者たちの介護をしているというどうも頼りない男なのだが、いきなり事件が起こる。死にかけた老人にナイフで襲われ怪我を負ってしまうのだ。老人は実はやくざの親玉で、彼を襲った直後に死んでしまう。と同時に主人公は命を狙われ始め、行動も口も達者な看護婦がそれを救い出す。老人の正体は誰だったのか? これが本書を貫く謎の肝となる。
ぼくの場合前半は、登場人物が次々増えてくる様子や、小さなギャグのために割かれるページが多いことに、しばしの間慣れることができなくて、実は苦労したのだが、徐々にこの作品の持ち味としてのユーモアに馴染みができて頭に入ってくるようになってからは、急速にページがめくられてゆくようになった。そう、本書は笑って面白く読まなければいけなかったんだ。「このミステリ面白すぎる!!」なんだから、とこの辺りでようやく気づいたわけなのさ。
逆にそうなると後半部で、練りに練られた仕掛けや錯綜した人間関係図、それらを整理してゆく二人の素人探偵と、彼らを助ける定年間際の刑事、との主役トリオの役割や、敵・味方・脇役のそれぞれの人間関係が明らかになってゆくとともに、面白さと比例して読書速度は一気にスピードアップした。
巧い仕掛けに満ちたミステリーだな、と読後感はすっきり。アイルランド作家によるダブリンを舞台にしたミステリーで、作者がTVの放送作家かつコメディアン出身という裏事情も興味深い。同じアイリッシュ作家でも、IRA健在の時期の危険極まりないキャリックファーガスという北アイルランドの田舎町を描き続けているエイドリアン・マッキンティとの毛色の違いは甚だしい。読み比べても意味がないだろうし。
本作はシリーズ化されているそうである。二作目も出るなら読もうかどうか迷ってしまいそうだが、この主人公の今後も気になる。そう。シリーズに甘い読者なのだよ、ぼくは。 -
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ネタバレ初ポール・アダム作品。
ヴァイオリン職人が、殺人事件と幻のヴァイオリンを探すミステリ。随所に語られるヴァイオリンに関する伝説・逸話が時代を超えたロマンを感じる。と同時に、ヴァイオリンの職人、ディーラー、コレクターとその価値(鑑定や贋作など)について、不可解な(何とも言えない魑魅魍魎の)世界観を垣間見せる。
最後、主人公の語る「自分の良心を開放するためです」の真意(良心)には、己の贋作に対する後悔だけに向けられているのでしょうか?親方の贋作の売却や発見した幻のヴァイオリンを猫糞して姪にあげてしまうことは含まれないのでしょうか?あるいは、これは、次回作の伏線?すこし、違和感が残る結末でした。ただ、ヴァイオリンを貸し出す活動には心を打たれた。
私自身は、ヴァイオリンのことは不案内であるけど、「無限に広がっていくヴァイオリン演奏で、そこではテクニックは指ではなく、演奏家の心にあり、それこそがただ音符を弾く者と音楽を奏でる者の違いだった。」の一言にあるように、芸術品のような楽器は芸術家(演奏家)の手にされる(ガラスケースの中に飾られるだけより)ほうが、よいことだとは思うが…。
魑魅魍魎に加担した気がしました。
気になったフレーズは以下:
★どんな職業にもそれぞれの神話、伝承、過去からの物語があり、それがその職業の神秘さを簡潔に伝え、大部分は退屈で単調な仕事にロマンチックなオーラを投げかけているののである
★我々は皆、どこかに自分のしるしを刻み、自分の通った跡を残したいと思う。しかし、どうやってそのしるしをつければいいか?
★本物だと信じられる偽物を持っている方が、その逆よりずっとよかっただろうよ
★きみはあの曲を伝えていた。それが上手なヴァイオリニストと芸術家の違いなんだ
★博物館にて:「釣りだろ、たぶん」…「インスピレーション。…。だから何かが――何でもいいから――ひらめいて、その手がかりをくれないかと博物館へ来てみた」 -
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ネタバレシリーズ第3作。2作目から5年経って読者のリクエストに応える形で翻訳になったとのこと。今回の舞台は北欧、そして独特の音色のするヴァイオリン、ハルダンゲル・フィドル。ノルウェーの劇作家の戯曲がバックボーンに。3作を通じて感じるが、土地毎の風景や気候、人々の生活の描写が素晴らしい。ストーリーは悲しい結末、人を愛する事の悲しさが心に残る。一方で、主人公のジョヴァンニの恋は進展し、新しくアントニオの恋が始まる。作者はストーリの結末を悲しいものにするのに対して、登場人物の人生を幸福にすることにより、コントラストとしているような気がする。
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ネタバレシリーズ第2作目。今回は18〜19Cにかけて、現代においても有数のヴァイオリニストであり、作曲家と知られるバガニーニと彼の愛したグァルネリ・デル・ジェスが製作した「イル・カノーネ」(大砲)という名器にまつわる話。ヴァイオリンは殺人の動機となりうるのか?Yes。ストラデイヴァリと同様にグァルネリの作品もとても高価であり、殺人を犯しても自らのものにしたいと思うような名器。しかし、高価であるという事だけでなく、全ての価値ある(誰にもでもというわけではないが)モノにはそういう魔力が潜んでいるのであろう。バガニーニは天才にありがちな、奇人であり、そして恋多き一生経る。彼はエリーゼの愛人であった過去を持ち、彼女はナポレオンの妹であり、波乱の人生を送った人でもある。音楽とヴァイオリン、ヴァイオリニストと女性。歴史に埋もれた過去を主人公は、少しずすつ紐解き、犯人にたどり着く。一作目と同様に欧州ならではストリー。そして、中盤からは主人公の恋の話が生まれ、最後の余韻となる。
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ヴァイオリン職人が探偵役のミステリ、シリーズ2作目。
ヴァイオリンをめぐる事件や、音楽がらみの薀蓄が新鮮でした。
初老のジャンニ・カスティリョーネは、名ヴァイオリン職人。
200年前に活躍した天才ヴァイオリニスト、パガニーニが愛用した名器が修理のために持ち込まれます。
コンサートを前にした若きヴァイオリニストとのふとした出会いに、父親めいた感情を抱くジャンニ。
ジャンニも知るディーラーが事件に逢い、金庫には黄金のヴァイオリンが残されていた。
友人のクレモナ警察の刑事アントニオに協力を依頼されたジャンニは、事情を調べ始めます。
若い友人のアントニオは、ジャンニの薀蓄と推理を頼りにしているんですね。
枯れた雰囲気のジャンニですが、一人暮らしでも料理はてきぱきと。しかも実は知的な美女と、大人の関係に。
さすが、イタリア☆
パガニーニのパトロンだった女公エリーザは、ナポレオンの妹。悪魔のような才能に溢れたパガニーニの、きらびやかだが不安定だった生涯。
心の交流がうかがえる歴史の一こまに思い馳せたり。
渋いようで、味わい深い、なかなかの佳作でした。 -
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イギリスの作家ポール・アダム、2004年発表の小説。主にイタリアが舞台となるヴァイオリンにまつわる歴史ミステリー?怒濤の蘊蓄が楽しめます。
イギリスの作家が書いたとは思えないくらいのイタリアンな作品。主人公は初老のヴァイオリン職人。超一級の腕前の職人のようです。友人のヴァイオリン職人が殺され、彼がストラディヴァリの最高傑作と言われる「メシア」と同等のヴァイオリンを探していたことから、警察に協力、彼の足跡を辿ります。しかし、その過程で有名なコレクターがまた殺害され・・・。
一応殺人事件の捜査の話なのですが、物語の焦点は完全に失われたヴァイオリンの探求です。イタリア各地を飛び回り、イギリスの荒涼としたヒースの丘の朽ちかけた屋敷へも足を伸ばし、古文書や古い絵画に手がかりを求め・・・。
ヴァイオリンやその職人の技、ヴァイオリンの音楽、さらにはこの業界の裏の部分にまで蘊蓄が語られ、音楽好きにとっては非常に興味深く楽しい作品です。イタリア人が主人公ですがイタリアの風土への舌鋒も鋭く、特にヴェネツィアへの批評はなかなか厳しくて、訪れたことの無い私には真否の程はわからないものの痛快。またクラシック音楽への溢れるような愛情もひしひしと感じられ、読んでる途中でバッハのシャコンヌが無性に聴きたくなって来ます。
犯人探しは付けたし、みたいな感があり、ミステリーとしてはどうなのかなと思う点も無くはないですが、でもとても面白く興味深い作品。良いです。