あらすじ
ジャンニはイタリア・クレモナの名ヴァイオリン職人。ある夜、同業者で親友のトマソが殺害されてしまう。彼は前の週に、イギリスへ“メシアの姉妹”と言われるヴァイオリンを探しにいっていた。それは一千万ドルを超える価値があるとされる、幻のストラディヴァリだった。ジャンニは友人で刑事のグァスタフェステに協力し事件を探り始めるが、新たな殺人が……。虚々実々のヴァイオリン業界の内幕、贋作秘話、緊迫のオークション、知られざる音楽史のエピソード。知識と鋭い洞察力を兼ね備えた名職人が、楽器にまつわる謎を見事に解き明かす!
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Posted by ブクログ
偶然見つけた名前も知らないイギリスの作家。久しぶりに没頭するように読んでしまった珠玉のミステリー。最近北欧のミステリーにはまっていたが、同じ欧州であっても全く異なる深みに満ちている。舞台はイタリア、主人公はバイオリン職人。訳者の後書きにもあるが、欧州らしい長い歴史と現在がつながっていることが主人公を通して感じられる。「過去があって、現在の自分たちがあり、その上でどう生きるか」、日本人に相通じることだけれども、米国には決してない上手く表現できないが、人生、価値観といったものだろうか。様々な意味で豊かな人生を歩んできた人物像が見事に描かれている。音楽、ミステリー、歴史、イタリアが大好きな方々にお勧めの一冊です。シリーズ化されていて3作目が刊行されています。早速2冊目を読んでいるところ。
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ヴァイオリンのことはよくわからない…などどいう心配はいりません。主人公の年齢を経た人間味、友人刑事の実直さ。楽器の謎にぐいぐいひきこまれました。続編が待ち遠しい。
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クラシック門外漢として、これでもかと出てくる「聞いたことがある」程度の名ヴァイオリン職人の名前オンパレードに目くるめいてしまう。
失われた名画・贋作とか好きでも楽しめると思います。
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英国人作家によるイタリア人ヴァイオリン職人が主人公ジャンニの作品。
日本で翻訳版が出版されていた頃結構話題になっていた記憶。私は個人的にクラシック音楽の蘊蓄、特にヴァイオリンに関する話はノーサンキューなのだ。ヴァイオリン、いやヴァイオリニストについてちょっとしたトラウマがある(それも読み終わるまで忘れていたが)。したがって蘊蓄系語りはすっ飛ばし気味に読んだ。それでもすぐに夢中になった。
イタリア人の皮をかぶった英国人の語り口の魅力だろうか。63歳のジャンニは、ヴェネツィアで会った女性に次々と親切を施した(ここまでは英国人紳士もやることだ)。別れてから、電話番号を教えるか聞くかすればよかったかと考えるなどという奥手ぶりを見せる。
蘊蓄系語りはさまざまなミステリーを解くカギとなっていたのか?単に複雑なのか、種明かしの段階になって、え、ちょっと待って、えーっとになった。読みなおすべきかも。
それでもおもしろかったし、読後感もよい。シリーズ次作も読みたい。
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ダビンチコードを彷彿とさせる展開。割とあっけない結末ですが、楽しめました。ヴェネツィアやクレモナの雰囲気が感じ取れ、行ってみたくなりました。バイオリンでなければ成立しない事件ですね。独特の世界です。愛好家は狂信的と紙一重、恐ろしいほどです。
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初ポール・アダム作品。
ヴァイオリン職人が、殺人事件と幻のヴァイオリンを探すミステリ。随所に語られるヴァイオリンに関する伝説・逸話が時代を超えたロマンを感じる。と同時に、ヴァイオリンの職人、ディーラー、コレクターとその価値(鑑定や贋作など)について、不可解な(何とも言えない魑魅魍魎の)世界観を垣間見せる。
最後、主人公の語る「自分の良心を開放するためです」の真意(良心)には、己の贋作に対する後悔だけに向けられているのでしょうか?親方の贋作の売却や発見した幻のヴァイオリンを猫糞して姪にあげてしまうことは含まれないのでしょうか?あるいは、これは、次回作の伏線?すこし、違和感が残る結末でした。ただ、ヴァイオリンを貸し出す活動には心を打たれた。
私自身は、ヴァイオリンのことは不案内であるけど、「無限に広がっていくヴァイオリン演奏で、そこではテクニックは指ではなく、演奏家の心にあり、それこそがただ音符を弾く者と音楽を奏でる者の違いだった。」の一言にあるように、芸術品のような楽器は芸術家(演奏家)の手にされる(ガラスケースの中に飾られるだけより)ほうが、よいことだとは思うが…。
魑魅魍魎に加担した気がしました。
気になったフレーズは以下:
★どんな職業にもそれぞれの神話、伝承、過去からの物語があり、それがその職業の神秘さを簡潔に伝え、大部分は退屈で単調な仕事にロマンチックなオーラを投げかけているののである
★我々は皆、どこかに自分のしるしを刻み、自分の通った跡を残したいと思う。しかし、どうやってそのしるしをつければいいか?
★本物だと信じられる偽物を持っている方が、その逆よりずっとよかっただろうよ
★きみはあの曲を伝えていた。それが上手なヴァイオリニストと芸術家の違いなんだ
★博物館にて:「釣りだろ、たぶん」…「インスピレーション。…。だから何かが――何でもいいから――ひらめいて、その手がかりをくれないかと博物館へ来てみた」
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ヴァイオリンの謎に迫りながら、ヴァイオリンの絡んだ殺人事件にも迫っていくお話。
親と息子のような年の差があるコンビが面白く、主人公もハイパーヴァイオリンスーパーマンではあるけど普通のじいさんで、派手なシーンなどはないが、じわじわと謎に対していったり来たりするのがもどかしく、また面白かった。
イタリア人の名前は覚えにくいのでメモしながらのほうがよかったかなぁ
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老人ミステリはぼちぼち珍しくなくなりつつあるが、60代の、ヴァイオリン職人が主人公という設定が異色かな。
イタリア老人(老人なんて言っていいのか?)の懐深い愛情と軽口、そして手抜きのない筋立てが楽しめる。何と言ってもヴァイオリン製作やその業界を垣間見ることが出来るのが、面白さの半分以上を占める。
哀愁はちょっと足りないけど、イタリア老人の洒脱を堪能ということでまあいいか。
そりゃあジャンニとマルゲリータのその後が気になるところ。
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老人が探偵役のスローペースなミステリなので、途中で飽きるかと思ったら意外に最後まで面白く読めた。
殺人事件の謎解きとしては面白味に欠けるけれど、ヴァイオリンの歴史とそれにまつわる謎としては、新鮮で面白い。ただシリーズとして読み続けるには少し飽きるかもしれない。
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主人公は63歳のヴァイオリン職人というところが斬新で、現代の殺人事件を追いながら過去のヴァイオリンの謎を解いていくという設定がつぼでした。ジョン・ダニングのヴァイオリン版という感じ。次作も期待。
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イギリスの作家ポール・アダム、2004年発表の小説。主にイタリアが舞台となるヴァイオリンにまつわる歴史ミステリー?怒濤の蘊蓄が楽しめます。
イギリスの作家が書いたとは思えないくらいのイタリアンな作品。主人公は初老のヴァイオリン職人。超一級の腕前の職人のようです。友人のヴァイオリン職人が殺され、彼がストラディヴァリの最高傑作と言われる「メシア」と同等のヴァイオリンを探していたことから、警察に協力、彼の足跡を辿ります。しかし、その過程で有名なコレクターがまた殺害され・・・。
一応殺人事件の捜査の話なのですが、物語の焦点は完全に失われたヴァイオリンの探求です。イタリア各地を飛び回り、イギリスの荒涼としたヒースの丘の朽ちかけた屋敷へも足を伸ばし、古文書や古い絵画に手がかりを求め・・・。
ヴァイオリンやその職人の技、ヴァイオリンの音楽、さらにはこの業界の裏の部分にまで蘊蓄が語られ、音楽好きにとっては非常に興味深く楽しい作品です。イタリア人が主人公ですがイタリアの風土への舌鋒も鋭く、特にヴェネツィアへの批評はなかなか厳しくて、訪れたことの無い私には真否の程はわからないものの痛快。またクラシック音楽への溢れるような愛情もひしひしと感じられ、読んでる途中でバッハのシャコンヌが無性に聴きたくなって来ます。
犯人探しは付けたし、みたいな感があり、ミステリーとしてはどうなのかなと思う点も無くはないですが、でもとても面白く興味深い作品。良いです。
Posted by ブクログ
ヴァイオリン製作の聖地、イタリアはクレモナ。そのクレモナのヴァイオリン製作者・職人仲間がある日、何者かに殺されるところから、ストーリは展開していく。犯人を捜すのは、同じく初老のヴァイオリン職人仲間。そして、次に起こるヴァイオリン・コレクターの殺人。
ストラドヴァイウス、グァルネリ・デル・ジェスなど名器にまつわる、まるで時空を超えた逸話も次々に主人公とその友人の調査という形を取って紹介される。ある意味、殺人事件としてのミステリーと同時に、謎に包まれたヴァイオリン名器にまつわるミステリーが展開されるのは、興味深い。
ただし、殺人事件の結末、種明かしは、本書残り30数ページころから一気に解明され、あっけないのが残念・・・というのが個人的な感想。
Posted by ブクログ
老境にさしかかったヴァイオリン職人が、親友が殺害された事件とそれに絡む幻のストラディヴァリを追う。
ストーリーとしては主人公と刑事の二人が手がかりを追ってイタリア各地やイギリスを旅して回る話だが、ヴァイオリンに関する蘊蓄、歴史上のトリビアや、名器を取り巻くディーラー、コレクター、演奏家、職人それぞれの立場や関係などがたいへん面白かった。
主人公は職人としての矜持や音楽に対する思い、先人への敬意に溢れる魅力的な人物だし、多くの登場人物に好感が持てる。ただ楽器探しの謎に重点が置かれて、殺人事件は添え物になってしまった感じ。
続編も出ているのでぜひ読みたい。
Posted by ブクログ
バイオリンの来歴や謎ときの部分はちょっと複雑すぎて頭がついていかなかったんだけど、それはそれとしてとても面白く読んだ。てことは、謎ときは二の次ってことか?
主人公の人となりや、彼をとりまく人々がとても魅力的で落ちついているのがいい。事件にかかわっていくいきさつも、自然。「ミステリだから」と留保しなくても物語に入っていけるのがいいなと。
最後の展開も、着地点がはっきりしていて気持ちが良かったです。
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とにかく横文字が多くて覚えづらいが読む価値のあるもの。
何百年もの歴史と職人の音楽への熱量を感じられるミステリーは重厚で面白かった。
主人公ジャンニの人柄や仲間たちにも惹かれる。
ヴァイオリンという題材でここまで深く話が掘られ、最後までブレずにヴァイオリン一本で完結するのが良かった。(ミステリーの変わった題材とかだと最後ブレると萎える。個人的に。)
演奏する楽器であり、歴史的価値のある財産でもあり、音楽史から現代まで複雑に絡み合っている点がこの小説の面白い所だと思う。
特に知識がなくてもなんとなく聞いたことのある名前も出てくるので読めるが、とにかく横文字が多くて地名、名前、血縁や苗字が入ってこなくて読み進めづらい…後半は慣れる。
Posted by ブクログ
★3.5
ヴァイオリン職人ジャンニが主人公。ある時、同じヴァイオリン職人である友人が殺された。失意の中、彼が探していたと思われる、幻のストラディバリウスを、警察官のアントニオと追いかける。その延長線上に、犯人がいるはずだと信じて。古い文書や手紙、絵画をひたすら調べていく作業が、ジャンニでさえ苦行のようだと言っているが、読んでいる方もちょっとしんどかった。ジャンニが導きだした答えは、あくまでも推論に過ぎず、まるで歴史学者の話を聞いているようだったが、そこは小説なので最後は物的証拠も見つかるのだけど。悲しいかな、ラスト近くの彼の感動を分かち合えない。そして何だか良い風に話は終わっているが、あれが正解なのかも分からない。ヴァイオリンの世界は闇が深い事だけは分かったけど。そしてイタリア人はいつだってワインを飲んでいる。
ともあれ、次作もあるようなので読んでみよう。
Posted by ブクログ
めちゃくちゃ長く感じた。
イタリア人が主人公の小説をはじめて読んだ気がするので、名前などの固有名詞に苦戦しつつ、ヴェネチア人への偏見や各都市への印象など新鮮な気持ちで読めて楽しかった。
ヴェネチアは新しい街だと主人公が言っているシーンがあったけど、それでも街ができたのは四世紀頃?と書いてあり、十分古くて驚いた。ローマを擁する国の人はこの辺の感覚もぜんぜん違ってくるんだろうか?
でも途中で著者がイギリス人と知って驚いた。イギリス人が書いたイタリア人を主人公にした作品を日本人のわたしが読む、という構造に面白さを感じた。
この作品はイタリア人が読んでも違和感がないのか気になる。
というか、老齢の男性が主人公の作品もあまり読まないので、時々出てくる頑固な古い考え方も面白かった(孫たちを縛らずにのびのびと遊ばせたり、アンチマックだったり)。
普段読んでいるミステリが、トリック重視のものなので、それと比べると物語は単調に感じた。イタリアの各都市やイギリスにまで足を伸ばすことにるなるけれど、それぞれのシーン自体の盛り上がりはそんなになく、タイトルの通り探求と推理だなあと感じた。
事件の鍵になっているヴァイオリンの行方を追うことは、時代をさかのぼる壮大な旅にもなってくるのだけど、時代や登場人物が多すぎてよくわからないまま読み終えた…
主人公のジャンニは、わたしと年代は違えど、仕事に誇りを持って取り組んでいるし、尊敬もできるし親しみも湧いた。
Posted by ブクログ
まあ〜〜ヴァイオリン関連の人名やら地名やらの覚えにくいこと!! 海外の地理に疎いのでほぼ勘で読んでいた。ちゃんと話に付いていきたい方はメモしながら読むことを強くお勧めする。
古典/本格/新本格ミステリ以外をあまりミステリと思って読まない私にとっては、この作品は探偵役となる主人公と警察官の2人が事件と謎を追いかけていくさまを描いたサスペンスに近い小説。
大抵そういう作品でだれてしまいがちな私には珍しく、最後まで飽きずに楽しく読破。登場人物たちの魅力が光っていて、ヴァイオリンをはじめ中世の世界観が強く惹き込んでくれた。
続編も母に借りようかな。
ひとつ苦言を呈するとすれば、警察機関が影薄くて役に立たなすぎる…笑
Posted by ブクログ
歴史と資産としてのヴァイオリンが絡んでじっくりと進んでいく感じの謎解きがよかった
主役コンビ2人も落ち着いた雰囲気で味わい深かった
ただイタリアの名前に慣れるのが大変
Posted by ブクログ
途中からヴァイオリンを探しているのか犯人を探しているなのかわからなくなるくらい2人とも必死でヴァイオリンを探してますね。
時間をおいてしまわず一気に読むといいと思います。
Posted by ブクログ
「ヴァイオリン職人の探求と推理」というタイトルと、クラシカルなカバーイラストで、良作の予感。
ポール・アダム…作者の名前は平凡な感じだけど…
もちろん初読。
トリックとかなんとかではなく、探偵役となるヴァイオリン職人・ジャンニの人間としての円熟した魅力がとにかく楽しめる作品。
本作では63歳。もちろんヴァイオリン職人として一流で、自然豊かな土地に工房を構え、今も仕事を楽しんでいる。昔からの友人たちに囲まれ、多くの教え子に慕われ、子供たちや孫たちも時折遊びに訪れる。
心から愛していた妻を亡くしてしまったが、やはり子供や孫もいる58歳の魅力的な女性・マルゲリータとの恋の予感も。
Posted by ブクログ
イタリアのヴァイオリン職人ジャンニの友人で、同じヴァイオリン職人のようなトマソが自分の工房で殺された。ジャンニは音楽仲間で刑事のアントニオと犯人を探す。
ストラディバリウスをはじめとする名ヴァイオリンの収集を巡り、イタリアと英国を行き来しながら真相を明かす。豊富な音楽知識がストーリーを盛り上げている。続編が2作あるらしい。
Posted by ブクログ
ヴァイオリンという楽器そのものにスポットライトが当たっていて珍しかった。曲名や演奏シーンももちろん出てくるけど、それよりも楽器の製作者や所有者が出てきて、それらを歴史に失われた名ヴァイオリンを探す主人公とその友人の警察官が紐解いていく。
時代の流れや話の展開は面白く、ドキドキしながら読み進められた。でも犯人の動機や人となりや感情の描写が少なく、ちょっと残念。
続編が出ているそうなので、そっちも読みたい。翻訳はもう出ているのかな。
Posted by ブクログ
2019/10/28 読み終わった。
バイオリンの先生にこの本の翻訳が素晴らしいと言われたので読んだ。何が素晴らしいかというと、音楽用語や表現に関して全く違和感なく読めるのだけど、一箇所だけ、バイオリンを弾く人間なら間違いなく絶対に知っている用語を誤訳していたから。
つまり、この翻訳者は音楽やバイオリンに詳しいのではなく、すごくすごく調査をして訳出したんだという事がわかる。その調査力に先生は感動していた。
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推理物。土地勘や位置関係がないと、把握しにくい場面設定。ストーリーには引き込まれるが、どうも、身近なテーマではないだけに、ハラハラすることはなかった…
Posted by ブクログ
1700年代のヴァイオリンをめぐっておこる殺人事件の話。ヴァイオリン業界(?)や実物自体の価値について何も知識がなく読んだが、わかりやすく書かれていたため勉強になった。殺人事件自体のミステリー性は二の次で、ヴァイオリン一つ一つに歴史と謎と想いがつまっているものなんだとロマンを感じた作品。