青木悦子のレビュー一覧
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偶然見つけた名前も知らないイギリスの作家。久しぶりに没頭するように読んでしまった珠玉のミステリー。最近北欧のミステリーにはまっていたが、同じ欧州であっても全く異なる深みに満ちている。舞台はイタリア、主人公はバイオリン職人。訳者の後書きにもあるが、欧州らしい長い歴史と現在がつながっていることが主人公を通して感じられる。「過去があって、現在の自分たちがあり、その上でどう生きるか」、日本人に相通じることだけれども、米国には決してない上手く表現できないが、人生、価値観といったものだろうか。様々な意味で豊かな人生を歩んできた人物像が見事に描かれている。音楽、ミステリー、歴史、イタリアが大好きな方々にお勧
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シリーズ2作目!前作は幻のストラディヴァリの謎でしたが、今回はヴァイオリンそのものではなく、悪魔的ヴァイオリニスト・パガニーニの人生の謎が絡んできます。
そして、当時のヨーロッパの有名な王族階級の人々の人生も絡まり、歴史ミステリの要素も満載! もちろん名ヴァイオリン、パガニーニ使用のグァルネリ「大砲=イル・カノーネ」も登場します! そして殺人事件も!
ジャンニとアントニオが殺人事件の謎を追うのと同時に音楽や楽器に関する謎も解けてゆく…という前作のスタイルは変わらないので、安心して楽しめました。
クラシック音楽好き、ヴァイオリン好き、そして西洋史好きの私にはもうドンピシャ♪な内容です。
3作目の -
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面白かった。続編が面白い説はやっぱり正しい。
腕の良いヴァイオリン職人のジャンニのもとに、名器「大砲イル・カノーネ」の修理の依頼がくる。最初の冒頭で、「大砲」がまるで大名行列のように持ち込まれるくだりが既に面白い。天才ヴァイオリニスト、エフゲニーとも知り合いになり、母親に徹底的に管理された、彼の孤独な人生が語られる。
18世紀、「大砲」を愛器としていたパガニーニも、かつて同じような人生を歩んでいた。彼は過保護な父親のもとから飛び出し、ヴァイオリンを片手にヨーロッパ中を駆け巡っていた。そこでナポレオンの妹であったエリーザに出会い、黄金の箱が贈られる。
そして現代、その黄金の箱を持っていたディーラ -
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ネタバレ2025年の18冊目は、クイーム・マクドネルの「悪人すぎて憎めない」です。「平凡すぎて殺される」に始まるシリーズの前日譚、主人公は若き日のバニー・マガリー刑事になります。個人的にもアノラックは大好きです。結論から言うと、これが一番好きです。いつもの良さに加えて、ハードボイルド的要素(解説ではノワールと言及されています)も加わり、ネオ・ハードボイルド、ネオ・ノワールの良作に仕上がっていると思います。強いて言うならば、最後、全てが読者が想像する方へと収斂して行く様子が、予定調和的と捉えられる事かもしれません。決して、嫌いな訳では有りません。驚きが欲しいだけです。
舞台は、1999年のアイルランド、 -
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これまでに多く描かれてきたように関係者の中に犯人がいる状況ではなく、なかなか犯人の正体が見えてこなかったことで、久しぶりにハラハラしながら展開を追うことができました。
犯行の動機そのものはこのシリーズではある程度パターン化している「頭でっかちな少年のエゴ」でしたが、本作はそれによるマンネリ化をあまり感じさせない読後感だったように思います。
メイヴィスとピーボディの「豪邸プロジェクト」もゴールが見えてきたようですし、ナディーンの恋人もしっかりと登場して彼らの関係性ももう少し発展しそうです。
過去の事件で登場したキャラクターが「チーム」の仲間として活躍する場面も増えてきたことも本作の魅力の一つ -
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英国人作家によるイタリア人ヴァイオリン職人が主人公ジャンニの作品。
日本で翻訳版が出版されていた頃結構話題になっていた記憶。私は個人的にクラシック音楽の蘊蓄、特にヴァイオリンに関する話はノーサンキューなのだ。ヴァイオリン、いやヴァイオリニストについてちょっとしたトラウマがある(それも読み終わるまで忘れていたが)。したがって蘊蓄系語りはすっ飛ばし気味に読んだ。それでもすぐに夢中になった。
イタリア人の皮をかぶった英国人の語り口の魅力だろうか。63歳のジャンニは、ヴェネツィアで会った女性に次々と親切を施した(ここまでは英国人紳士もやることだ)。別れてから、電話番号を教えるか聞くかすればよかったかと -
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寝たきり状態の老人に人違いで襲撃されたがために、命を狙われるハメになった主人公の逃亡と真実の追求への顛末を描いた物語。だんだん「こういう文章か」というクセに慣れたら、個性あるキャラクタにも愛着がわいてそれなりに楽しめました。
ただ万人向けかというとどうでしょう…。(アイルランド)ローカルネタ多めなユーモア、映像畑出身だからか目で見て想像できるように比喩や装飾性を多めに描いたキャラクタの外見や行動など、結構な独特のクセがあり、それがそのまま文章量の多さにつながってもいるので、「逃亡劇」のわりにはさほどのスピード感を感じられなかったように思えました。
ただ主人公と看護師の、厳しい現実と立ち向か -
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翻訳までされる海外のユーモア・ミステリーは、たいてい外れがない。しかも本書は翻訳者が原書で読んで、いたく気に入ったための持ち込み企画作品だそうだ。さればこそと読者側からの期待値も込めてしまう。無論ただものではないはずだ、と。
しかし出だしを読んでゆくにつれ、少し後悔の念が。ぼくの場合、食べ合わせがよくなかったのかもしれない。ルースルンドの『三日間の隔絶』、ウィンズロウの『業火の市』といった超ド級のシリアス・アクション大作ニ作の読後だったので、この本を読み始めた途端、思わず膝が砕けそうになった。そこら辺にいる人たち皆にこの本を読ませたら、吉本興業の公演のお笑い芸人たちみたいにどどどっと、倒 -
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ネタバレ初ポール・アダム作品。
ヴァイオリン職人が、殺人事件と幻のヴァイオリンを探すミステリ。随所に語られるヴァイオリンに関する伝説・逸話が時代を超えたロマンを感じる。と同時に、ヴァイオリンの職人、ディーラー、コレクターとその価値(鑑定や贋作など)について、不可解な(何とも言えない魑魅魍魎の)世界観を垣間見せる。
最後、主人公の語る「自分の良心を開放するためです」の真意(良心)には、己の贋作に対する後悔だけに向けられているのでしょうか?親方の贋作の売却や発見した幻のヴァイオリンを猫糞して姪にあげてしまうことは含まれないのでしょうか?あるいは、これは、次回作の伏線?すこし、違和感が残る結末でした。ただ -
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ネタバレシリーズ第3作。2作目から5年経って読者のリクエストに応える形で翻訳になったとのこと。今回の舞台は北欧、そして独特の音色のするヴァイオリン、ハルダンゲル・フィドル。ノルウェーの劇作家の戯曲がバックボーンに。3作を通じて感じるが、土地毎の風景や気候、人々の生活の描写が素晴らしい。ストーリーは悲しい結末、人を愛する事の悲しさが心に残る。一方で、主人公のジョヴァンニの恋は進展し、新しくアントニオの恋が始まる。作者はストーリの結末を悲しいものにするのに対して、登場人物の人生を幸福にすることにより、コントラストとしているような気がする。
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ネタバレシリーズ第2作目。今回は18〜19Cにかけて、現代においても有数のヴァイオリニストであり、作曲家と知られるバガニーニと彼の愛したグァルネリ・デル・ジェスが製作した「イル・カノーネ」(大砲)という名器にまつわる話。ヴァイオリンは殺人の動機となりうるのか?Yes。ストラデイヴァリと同様にグァルネリの作品もとても高価であり、殺人を犯しても自らのものにしたいと思うような名器。しかし、高価であるという事だけでなく、全ての価値ある(誰にもでもというわけではないが)モノにはそういう魔力が潜んでいるのであろう。バガニーニは天才にありがちな、奇人であり、そして恋多き一生経る。彼はエリーゼの愛人であった過去を持ち