壺井栄のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
とても有名なタイトル。
不朽の名作と謳われていながら、未読でした。
時代は昭和初期。自立した芯のある女性と無垢な子どもたちの交流を描いた物語、だと思っていました。
物語が進むにつれ、忍び寄る戦争の影に、この時代の空気を感じました。貧しくとも明るい、いたずらや意地悪さえも振り返れば懐かしく思えるような毎日が、「戦争」というものによって失われていく。時代の理不尽さを前に、怒るでもなければ、叫ぶでもなく、大事な教え子を慈しむ眼差しに、なんだか泣きたくなりました。
教え子たちを戦争に取られてしまうのも切ないけれど、平和な時代を知らない自分の息子が、戦地に行きたい、名誉の戦死を誇らしいと思うのを目にす -
Posted by ブクログ
ネタバレ「不朽の名作」と裏表紙に記されているが、この小説は文学的価値が高いというよりは戦前から戦後に至るまでの当時の日本の生活や雰囲気、人々の思想などがリアルに描かれた歴史的資料としての価値が高い作品だと感じた。
私は、新人教師とその子ども達との心の触れ合いというのが主として書かれた作品だと思ってこの本を読み始めたため、主人公の新人教師である大石先生が作中、怪我や出産で教壇から離れる期間があること、授業を行っている場面がかなり少ないことなどから、「思っていたのと違った……」というのが正直な感想だった。
話が面白いか、登場人物の造形が素晴らしいか、文章そのものは優れているか、といった点では首を傾げてしま -
Posted by ブクログ
時代は戦前から戦後貧しい頃。主人公である教師が小さな村に赴任してから、40歳を越えてから再び教職に就くまでの話を描いたもの。文体自体はあまり難しくなくすらすら読めるのに、いろんなことに心打たれたり強い気持ちを感じたり、盛りだくさんな印象を受けた。
戦前から戦後間もない貧しい時代での出来事を書いているからか、登場人物の生きなければならないという強い気持ちと苦しさと日常の小さな出来事に対する喜びなどがぎゅっと詰まっている。
主人公である先生はよく涙を流す。しかし、話によってその涙の意味は違う。はじめはわかってもらえない周りの大人への悔し涙。家の事情で、学校に通うこともできなくなったりした子供たちに