あらすじ
海辺の寒村に、女子師範学校出の大石先生が赴任してきた。担当する分教場の小学一年生は十二人。新米先生は、様々な家庭の事情を抱えた生徒たちを慈愛に満ちた眼差しで導き、時と場所を越えた師弟関係を築いていく。やがて戦争、そして敗戦。自らも苦渋の季節を経て、四十になった先生は、再び分教場の教壇に立ち、昔の教え子の子どもたちと出会う。真の師弟愛を描いた不朽の名作。
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有名だから読んだ気になっていたけど実は読んでいなかった本のうちのひとつ。
引き込まれる文体に古さを感じさせない。個性豊かな登場人物。強い反戦の思い。
時代を超えて一気に叩きつけられるようだった。
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戦争に苦しめられる庶民、少女の身売り、女中奉公、ヤングケアラーと悲惨な内容の割に、主人公の心象風景、ユーモア、自然描写の美しさから読み進めることができた。書き出し、一本松のシーンとそれに絡むラストが素晴らしい。50年ぶりの再読。読むべき傑作
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当たり前の日々の暮らしを奪い、あたかもそれが当たり前かのように錯覚させてしまう戦争の怖さ。
素直で純粋な心を持った子どもたちの瞳はいつまでも輝くものであって欲しいし、子どもたちの未来を狭め奪う戦争は、世界中のどこであっても絶対にあってはならないものだと改めて感じさせられました。
何もかも変わってしまった中での最後のシーンは、まだ戦争前の大石先生と子どもたちの場面を思い起こさせ、涙が止まりませんでした。
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小豆島に旅行することを決めたことからこの本を手に取りました。
戦前・戦後の描き方の根底に流れる愛情のようなものがはじめから最後まで読者の心をあたたかくしてくれました。
解説を読んでこの本の良さを再認識できました。
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小学生の時に何度も読んだ本。
自分が母親になるとまた昔とは違った感想ももつ。
生きる大切さ、そして生命の大切さ、戦争の悲惨さを教えられる本。
・一年生の子が弟や妹の子守りをするとは
今の大人でさえ育児は大変なのに、本当に本当に大変だと思う。
・環境の力を感じさせられる。
生まれた時代、場所、家によってこんなに運命が変わってしまうとは。
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読んでよかった…そう思える本でした。
なんだろうね、いつの時代にも優しい人はいる。
そして貧困だろうがなんだろうが、
子供を純粋な目で見てくれる大人がいる。
それが小石先生。
だけれども子供のとんだいたずらにより
ひっどい目に遭っちゃうけれどもね。
それでも彼女は教え子たちを案じてくれていました。
最後に込められた戦争を批判する言葉…
実は大石先生は娘さんを亡くしているのです。
歴史にifはないよ、もしそうでなければ
あんな行動なんかとらなかっただろうに!!
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祖母が小豆島出身と知り、手に取りました
戦地へ向かう生徒、経済的事情で“男として生まれたかった”と呟く生徒…
私の祖母やその家族も似たような経験をしたのかな…そう思うと、戦争体験は血筋を伝い、受け継がれている様にも思いました
Posted by ブクログ
昔、読んだことあったような・・・と思っていたけど、多分途中までしか読んでなかったのかな。12人の子どもたち、自転車、洋服のハイカラな先生、というところまでは知っていたんだけど。こんなにつらく悲しい話だったなんて。戦争は、あんな田舎の小さな村まで不幸にしてしまう。先生も、子どもたちも、不幸すぎて最後どうやって終わるのか、と思ったけど、解説にもあった「壷井栄の、明るさとえくぼ」で、キラキラ明るく終わった気がする。
Posted by ブクログ
初めて読んだ。昭和初期の海辺の寒村の子供たちと女教員の物語。ほのぼのと描写される、日々の暮らしの中に貧困と戦争が影を落とすが、夢中に次はどうなるんだろう、と読んでいけた。
文体も読みやすく、とても優しい気持ちになれた。
Posted by ブクログ
昭和初期、師範学校を卒業して小豆島の分教場に赴任してきた大石先生と12人の教え子との愛情あふれる物語。(文庫裏表紙説明より)
読む前は先生と生徒の物語なのかな、と思っていたけどどちらかというと戦争のことを描きたかった作品なのかなと思いました。
大石先生にすごく感情移入してしまいました。赴任したての大石先生の苦労や戸惑いには私も思わず「あるある」と苦笑(笑)
子どもは生まれる家や時代を選べないんだなぁ、生まれた環境で、時代で、順応して生きていかなければならないというのは今も昔も変わらないことなのだなぁということを改めて感じました。それを、学校の先生や親含め周りの大人がしっかり理解して子どもたちを伸ばしていってあげないといけないんだなぁと思います。
あたたかくて、さびしい物語でした。
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心温まる教師と生徒の当たり前のような日常と、戦争や貧困によって無残にもその日常を切り裂かれた子どもたちの苦悩が克明に描かれている。まっちゃんが弁当箱を肌見放さず持っていたと知った時は泣くかと思った。
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瀬戸内海の小さな島を舞台にした、新米教師の大石先生と純朴な12人の子供たちとの交流を描いた牧歌的な作品。
……と思いきや、物語が進むにつれて反戦的な描写が濃くなっていく。
無邪気に軍国主義に染まっていく子供たちを一人歯がゆい思いで眺める大石先生の姿は、言いたいことも言えない戦時中の空気をありありと伝える。
反戦という重いテーマはあくまで控えめで、それがいっそう説得力を強くしていると思う。
映像的な表現の美しさもこの作品の魅力。
Posted by ブクログ
名作だけどどんな内容だったけ?シリーズ
子供の頃から良く目にしたタイトル、
映画化もされてかなり有名な小説。
どんな内容の物語?と聞かれると
戦争と先生と生徒の話くらいしか覚えていない。というより読んだことがない。
ということで読んでみた。
本書は戦争の描写が直接描かれているわけではないので戦争小説という感じは余りしない。
教え子達の無邪気さや変わらない童心と先生の深い愛情、著者の優しい文体が読み手の心をあたたかくしてくれる。
物語前半は岬の分教場での無邪気で幼い12人の生徒達とのほのぼのとした交流、生徒達を優しい目で見守る大石先生に心あたたまります。
赴任して直ぐに生徒の瞳が個性豊かにきらきら輝いているのを見て、「この瞳をどうして濁してよいものか」と決意とも思える生徒への深い愛情が伝わってくる。
こんなに純粋で無邪気な子供達が戦争に巻き込まれていくかと思うと胸が痛みます。
次第に戦争という闇がじわじわと先生と生徒の身も心も飲み込んでいき、厳しい言論統制、軍国主義、やがて生徒達も戦場へ。
「名誉の死などしなさんな。生きて戻ってくるのよ。」この先生の言葉が印象的。
当時このような言動は「赤」非国民、革命思想の持ち主として刑務所へつながれる。
大石先生も自由に発言出来ない学校、正しい教育が出来ない教師生活に窮屈さを感じるようになり…。
戦場へ教え子を送り出さなければならない先生の気持ちを考えると絶望しかない。
自分の力ではどうにもならない大きな力に抗えず、大きな声も上げられない、自分の無力さをどんなに嘆いたか。
志願兵、名誉の戦死、靖国の母となることが英雄とされていた当時の信じさせようと方向付けられた教育に戦争の不条理さを感じる。
ラストで教え子達との再会のシーンは胸にグッときました。
時代は変わっても子供の頃のままの変わらぬ師弟愛、失明した磯吉が写真を指差す描写は涙腺が緩みます。
失明した磯吉は戦時下の三匹のサルへの比喩にも感じた。
いろいろなことを見えない振りをして目をつぶり、耳を抑えて、貝のように口をふさぐ。
人の幸せより名誉の戦死が重んじられる間違った教育。当たり前が当たり前でない日常。
タラレバだけど戦争がなければと何度も考えてしまう。
大きな時代の流れのなかで懸命に生きた先生と12人の生徒達。
不朽の名作と謂われるにふさわしい傑作。
Posted by ブクログ
戦争による空襲の被害が克明に描かれているわけでもなく、戦時下の圧迫された学校生活や日常の様子を丁寧に描写しているわけでもありませんが、1人の若い女性教員の一生を通して、戦争の悲惨さや命の尊さをひしひしと感じさせてくれる作品です。
もちろん、田舎の寒村ですから戦争だけでない根本的な貧困や、家父長制のような古い社会の慣習から苦労せざるを得なかった、という事情もあるでしょう。
けれども、戦争がなければ起こらなかった悲しみもあるでしょうし、「戦死」を名誉なこととして求める子どもたちに無邪気な姿に心を痛める主人公の姿には強く共感します。
決して、殺したり殺されたりするために、愛して育ててきたわけではない、というのは親としても教員としても譲れない心情ではないでしょうか。
ちょっと思想が強い言葉ではありますが「教え子を再び戦場に送らない」という誓いは破ってはならないものだと感じます。
Posted by ブクログ
★3.5。
映画は何作かは観ているはずですが、まったく覚えておらず。ただ原作は多分初読。いろんな意味で経済性の高い当方の記憶。
さておきそうか、こういう小説なのか。もっと直接的なのかと思ってましたが、松竹が映画化するんだからそうですわね、理知的な抑制が効いていてます。
しかしこんな話があちこちにあって、かつ、小説にするのも憚られるのが100年も経たない前のこの社会の話、現在を見ると知らないからと見向きもしない、遠くに来てしまって見えなくなっているのかなぁ。
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何十年ぶりかに読んでみた。落とし穴に落ちた大石先生のくだりが記憶に残っていたが、全体を流れるのは反戦の悲しい話だった。もうこんな話が理解されない時代になっているのか・・・
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はじめの方の穏やかで素朴な1年生の子どもたちが、章が進むに従って、それぞれの人生を歩んでいく。戦争が子どもや親、村に落とした大きな影を描いていた。
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とても有名なタイトル。
不朽の名作と謳われていながら、未読でした。
時代は昭和初期。自立した芯のある女性と無垢な子どもたちの交流を描いた物語、だと思っていました。
物語が進むにつれ、忍び寄る戦争の影に、この時代の空気を感じました。貧しくとも明るい、いたずらや意地悪さえも振り返れば懐かしく思えるような毎日が、「戦争」というものによって失われていく。時代の理不尽さを前に、怒るでもなければ、叫ぶでもなく、大事な教え子を慈しむ眼差しに、なんだか泣きたくなりました。
教え子たちを戦争に取られてしまうのも切ないけれど、平和な時代を知らない自分の息子が、戦地に行きたい、名誉の戦死を誇らしいと思うのを目にするのは、どれだけ辛いことでしょうか。
自らの命を大事にするという当たり前の価値観さえ揺らがせる、戦争というものが怖くなります。むしろ、自分を、相手を大事にするという価値観を持ち続けていては、戦争はできないのでしょうね。
戦争は悲愴。それでいて、本書は暗くない。
あとがきには、「壺井さんの文学にはえくぼがあった」と書かれているけれど、本当にそのとおりで、こんな辛い時代においても、明るさを失わない、人の温かみのようなものがある。これが、戦争を糾弾するような物語であったなら、こんなにも長く人々の間で読み継がれることはなかったと思います。
戦争はよくない。
それはもちろんのことですが、そんな時代を逞しくも生き抜いてきた私たちの祖先に想いを馳せることができる、そんな1冊でした。
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子どもの頃に何度も読んだ本です。
あらすじは何となく覚えてはいますが、大人になって読んで、ひたむきな子ども達の姿に涙しました。
今だから分かる事もいろいろあります。
この物語は、静かな反戦の小説ともいえるように思います。
夏になると、なんとなく読みたくなる1冊です。
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小豆島旅行の前に読んだ。有名な作品だけどいつ読んだのか、そもそも読んだことあるのか、そんな感じだったので今回改めて読んで新鮮だったしおもしろかった。単に教師と生徒のこころあたたまる物語、と思ってたら20年にわたる物語だし、戦争や貧困が暗い影を落とすし、でも出てくる人々の素朴さ、優しさが印象的だった。
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瀬戸内海に浮かぶ小豆島を舞台にした先生と教え子の物語。映画化もされ、ロケ地は観光名所にもなっている。
日本が日中戦争・太平洋戦争に突入し、時世に抗うことができず翻弄されながらも教え子のことを思い続ける先生の直向きさが印象的。軍国主義下の教育に絶望を感じ、一旦は教職を退くものの、再び教壇に立った時はかつての教え子は親になっていたものあり、亡くなっていたものあり、先生はそれぞれの境遇に涙する。
人と人の繋がりが薄くなってきた現代だからこそ味わえる人と人との触れ合いの物語。
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子どもたちがみずみずしく、あどけなく、尊く悲しい気持ちになった。戦況悪化の一方、彼らは成長を続ける。戦争や不況によって、それぞれの苦難があり、格差が生まれ、人生が枝分かれしていく。
豊かな時代を知っていた先生と、生まれた頃から戦時中だった子とのやりとりが印象的だった。結局は社会の流れや、大きな力によって、私たちの考えや感情さえもコントロールされてしまうのかなと思った。
自分がどういう時代の中に生きているのか、考えてみようという気になった。
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今更ながら、改めてこの有名な作品を読みました。
貧しさゆえに苦しみ、小さいなりに必死でその状況を受け入れて生きていた子ども達。時代は変わっても子ども達は精一杯、様々なことと戦っていることは変わらないな、と思います。幼いゆえに比較も非難もせず、必死に生きている。令和を生きる子どもたちも、そうなんですよね。
ひたひたと押し寄せる言論統制に苦しむ、心ある先生。軍国少年として育った息子の心‥などなど、名作だけに、歳を重ねてから読むと、本当に読み応えがありました。
Posted by ブクログ
プロレタリア文学の反戦小説だそうだが珍しく難なく読み終わる。
反戦がテーマとは言え田舎へ赴任した女先生を取り巻く一個の物語として完結してるからかな、やたら大局的な見方をすることないところも好印象
週末の同窓会のシーン。写真に写ってるみんなの配置は覚えてるよと失明した教え子が自慢するところ。徐々にずれていくところ。それを伝えない優しさ。泣きそうになった。
Posted by ブクログ
時代は戦前から戦後貧しい頃。主人公である教師が小さな村に赴任してから、40歳を越えてから再び教職に就くまでの話を描いたもの。文体自体はあまり難しくなくすらすら読めるのに、いろんなことに心打たれたり強い気持ちを感じたり、盛りだくさんな印象を受けた。
戦前から戦後間もない貧しい時代での出来事を書いているからか、登場人物の生きなければならないという強い気持ちと苦しさと日常の小さな出来事に対する喜びなどがぎゅっと詰まっている。
主人公である先生はよく涙を流す。しかし、話によってその涙の意味は違う。はじめはわかってもらえない周りの大人への悔し涙。家の事情で、学校に通うこともできなくなったりした子供たちに対する先生のかわいそうという同情心を超えたもっと強い思いから出る涙。子供も産み、家族や教え子を失うことへの悲しみや憤り。そして、再び岬へ戻ってきたときのかつての教え子の面影への懐かしさと変化、それでも生きている姿を見た時の涙。個人的に一番心打たれたのは最初の、そういうつもりじゃないのにわかってもらえなかったときの涙(他はただ圧倒された)。いつの時代も、そういうことは頻繁にあるんだな(皆経験してることなのに、どうして自分も他の人にそう当たるのであろうか。不思議だ)。
これを読んでも主人公が特別芯が強いとは思えない(弱いわけでもないが)。村の人に勘違いにより冷たくされれば涙を見せるし、家に帰れば母親に愚痴を言う(しかし唯一の味方になりえる存在の母も、共感してくれずそれどころか反論さえする)。夏休みも明けて今日から授業となると憂鬱になる。戦時中の貧しさは別にして、現代社会で生きる女性は多くがこのような感じではないだろうか。時代背景は違えど、下手な恋愛小説や感動ものの話なんかよりも個人的にはこの話のほうが共感できると感じた。
Posted by ブクログ
児童書のような平易な文体なのでだれでも読めそう。すごいね。
個人的にはもっとこっちのテンションを落としにきてくれても良かったと思う。でもそれをしちゃってたら現代まで残るほどは売れてなかっただろう。
Posted by ブクログ
有名な作品だが、初めて手に取った。
平仮名や方言が多く、始めはなかなか文章が頭に入ってこなかった。
先生と生徒の学校生活の物語だと思いこんで読み進めていたので、何故この先生が人気者になるのか?と疑問だった。
しかし私の視点が違った。
この本はそのような本ではないと気づいてから、読書のスピードが上がった。
後半は一気に読み進めてしまった。
Posted by ブクログ
壺井栄の文学には、えくぼがある。
解説に書いてあったその表現が、とてもしっくりきた。
小学生だった頃にはみな同じくキラキラ輝いていた二十四の瞳。時代や、家の経済的状況、いろいろなものに翻弄され、いつのまにかできているヒエラルキー。納得いかないことや、悲しい出来事もある中で、その中でもえくぼがあることでほっとできる。人生その眼差しが大切なんだと思う。
えくぼは、狙って作るわけでなくて、自然にできるところがいい。壺井さんは凛とした、すてきな女性なんだな。
女性が自分の意志で職業をもてる自由があること、自分のやりたいことを思うとおりにできることを、改めてありがたいと思ったのと、教師という職業を改めて素敵な職業だと思った。
舞台である小豆島で読めてよかった。