窪田新之助のレビュー一覧
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これは小説ではなく事実であるということに衝撃を受けます。この事件は、2019年2月、JA対馬の職員、西山義治が車ごと海にダイブするところから始まります。
JA共済の中で日本一の営業成績を誇る西山。
JAの表彰式では、CMに起用されている仲間由紀恵さんからも声を掛けられる程の優秀な営業マン西山の、22億もの横領。そして死。
事故死か自死か‥。
なぜ離島の支店で22億もの横領を行えたのか?
著者のノンフィクション ライター窪田新之助氏は綿密な取材を行い、深層を究明していきます。
著者の心血を注いだ取材で次々に明らかになるJA対馬及びJA共済の、あまりのずさんさと村社会的構造。その背景にある罪の意識の無い共犯者たちの存在に読みながら震えました。
著者自身、あまりの事実を知るにつけ、嘔吐、頭痛、胃痛に襲われる程です。それでも取材を続けた姿勢に頭が下がります。
読み終えてから調べたのですが、こんなことがあったからと言って組織の体質は大きくは変わらなかったということです!共済職員へのノルマが見直された程度で。
なぜなら、親組織は22億くらい立ちどころに補填できるし、今回の事件で損をした顧客はひとりもいないから。
あぁ、なんてこと‥
暗澹たる気持ちですが、せめてこの窪田さんの著書が『ペンは剣よりも強し』となるよう心から願っています。告発してくれた方の勇気にも感謝です。JA共済の上層部の方々に一人でも多く読んでいただけますように‥。
※Audibleで。
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・2024年 開高健ノンフィクション賞 -
Posted by ブクログ
JAの暗部を詳らかに描いたノンフィクション。
中盤までは西山氏の縦横無尽な暴れっぷりに圧倒されたが、後半からの本当の悪は誰か?という部分からは西山氏に同情してしまった。
ノンフィクションというと、登場人物を仮名にするという措置がなされるイメージがあるが、本作は全て実名だった。検索すれば登場人物のプロフィールや、JAのホームページにて本人の情報にすらアクセス出来ることにただただ圧倒。
JAという組織に特段悪いイメージは持っていなかったが、本作を読んでからはその実態に深い懐疑の眼を向けざるを得ない。
組織の隠蔽体質が無くなり、労働者がのびのびと働けるような組織になっていけるのか。
JAの今後に着目していきたい。
ノンフィクション作品の一つの傑作として、オススメできる。 -
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ネタバレたまにノンフィクションを読むと、こんなスゲー作品にぶち当たったりするから、読書ってのは油断できない。
この本は、対馬の海岸沿いの道から1台の軽ワゴンが転落事故を起こすところから始まる。被害者の西山は農協のライフアドバイザー(LA)として日本一の成績を何度も取ってきた有能な営業マンだった。
この西山の不正を取材するうちに、西山の陰に隠れた本当の悪人が暴かれていくが、その正体とは…ってのがクライマックス。この結末自体は、フィクションで時々ある(デビルマン、X-MENなんかもこういうテーマを含有していたな)パターンなんだけど、これノンフィクションやで。著者の虚飾とかバイアスがあったにせよ、事実を取材した結果ってのが怖い。
農協と言えば、去年の米価高騰を思い出すのだが、この本を読むとあれだって、実のところは転売ヤーとか不作とかが原因ではなく、この本に出てくる真の黒幕的なヤツの思いを利益にしようとした西山みたいな存在がたくさんいた結果の人災であるような気がしてきた。 -
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JA共済部門で営業成績日本一になったJA対馬支店の職員は共済金22億円を横領して自殺した。
住民が3万人の島の職員が日本一なんてありえるのか、という疑問がまず浮かぶ。そして何年にもわたるそれほどの額の横領が一人でできるはずないとも。
調査を進めるうちに事件の詳細が明らかになっていく。自殺した職員は支店で天皇と呼ばれ、支店長以上の権力を持ち、協力者から成るグループを作り、横領を黙認されていた。背景には過酷なノルマと報奨金があった。
どんどん共犯範囲の規模が広がっていく展開に唖然。支店に留まらずJA長崎、さらには対馬の契約者たちも加担していた。詐欺によって営業成績を水増ししてるのは自殺した職員に限らないらしく、JAという組織の腐敗ぶりに言葉を失う。 -
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ネタバレ対馬やばー。
孤島の闇って感じ。
西山は常にドーパミン出てたんやろな。
正義の小宮さん、悔しかっただろうな。本来であれば不正を正そうとしてるんやから、多数派になるはずが、まさかの少数派。
そこでは多数が不正に加担してたから、対馬の人々でさえも。ほんで死んだら批判する。
何が悪いんやろう?って考えるけど、組織も西山も島民も全部悪いやん。
西山にしても、何が本当の西山なのか。
もしかしたら、JAに入らなければ真っ当な人間だったかもな。ここでも環境が全てなのが思い知らさせる。
ノルマって本当にいや……そして人間はこわいよ。この前だって保険会社の不正があったけど、どこもしてるんやないん?と思う。
しかし、ルポタージュ大好き。
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ネタバレ【対馬の海に沈む】 窪田 新之助 著
人口わずか3万人の対馬にあって、JA内で日本一の営業成績を誇る西山義治。「ひと、いえ、くるま」(生命保険、災害補償、自動車保険)の三共済で高い実績を上げ、「日本一のLA(Life Adviser)」の称号をもつ西山が、車ごと「対馬の海に沈む」ことで死亡。不祥事をきっかけとした自殺とみられ、筆者が関係者にヒアリングをするというドキュメンタリー。
JA共済の契約獲得をめぐり、本人のみならず、JA対馬、対馬の住民、果てはJA本体までが関与する結果となり、日本の「村社会」を象徴しています。台風が来るたびに、損傷なくとも架空の家屋損傷写真で災害補償を申請し、その共済金(=補償金)を着服。これを原資に周りに振りまき、周囲の人が賛同者のようになっています。ノルマや上からのプレッシャーが強すぎると、人はどうしても不祥事に走り勝ちというのは、過去の東芝や現在のニデックにも通じるところです。
JAという組織がこれほどノルマに拘り、そうでありながら内部統制がほとんどできていない点には驚きました。昨今の米の問題などにも通底するのでしょうか。日本の農政(減反政策)や農作物の輸出など、色々と喧伝されても、実態はとても難しいのではないかと考えさせられた一冊です。 -
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昨今世間を賑わせている某生命保険会社。
なかには顧客のお金を騙し取り、そして、自ら命を絶つものもいる。自ら命をたったものの中には、元々JAでの職歴を持つものがいたことを、週刊文春で知った。この時、真っ先に頭に思い浮かんだのが、この一冊だった。
「JA」
聞いたことはあるけど、組織構造など詳細な部分は全く理解してなかった。それでも読み進められたのは、丁寧な説明が本書にあるからだ。
なんというか、やるせない気持ちになるところが多かった。
神様と呼ばれるほどの営業成績を残した職員。
不正に手を染めていたわけだが、この努力の矢印が不正ではなく別のところに向いていたら…と思ってしまう。
そして、不正があることに気がついていたJA。
内部告発を受けても、営業実績を持ってくる神様と呼ばれる職員を懲戒にかけられない。数字を持ってくるから、辞められては困るのだろうが、抜本的に間違っているとしか思えなかった。
経営陣が、JAのためにすべきことは、不正を見逃すのではなく、事業そのものを上向きさせるためにどうすればいいか、ということだったのではないか…。
やるせない気持ちにはなるが、少しずつ謎が解明されていく様子はミステリー小説さながらであった。
おかげで本書を興味深く読むことができた。
取り扱う商材は違っても、業界が違っても、社会人として働いている人には是非読んでほしい一冊だ。
そして最後に一言。
自分のしたことに真正面から向き合わない人が多いところ、ちいかわの映画みたいだったーー!!! -
Posted by ブクログ
何というストーリーだろうか。
久々に一気読みだった。
2019年2月、全国の農協職員から神の様に崇め奉られたスーパースターが対馬の海で亡くなった。
自然豊かな長崎の離島で起きた、想像を絶する規模の共済金不正事件。神がかり的な営業成績で絶対的な地位を築いていた英雄と、英雄の不正を質した結果、虐げられ、辛酸を舐めたかつての上司。
カリスマ職員の不正を解明するにつれ、JAという巨大組織の絶望的な腐敗にとどまらず、日本社会に巣食う闇が暴かれる。
一人の職員を神や天皇やともてはやし、有形無形の恩恵を享受していたにもかかわらず、形成が悪くなるや蜘蛛の子を散らすように消え、ダンマリを決め込む「軍団」、同僚、上司、組織、そして多くの住民たち。
同調主義と壮大な共犯関係が後戻りできないほどに虚構を加速する。
踊らされたヒーローは自らに纏うカリスマ性が高まれば高まるほど、孤独になる。
そして1人の人間が亡くなった。
カリスマの身を最も案じていたのは、自らがひどい仕打ちをしたかつての上司だった。
人間の業の深さを思うと胸が締めつけられる。
そう、これはノンフィクションなのだ。 -
Posted by ブクログ
事実は小説より奇なり
その言葉に尽きるノンフィクション
長崎県の対馬、人口約3万人の街で4000人超の共済契約を取る、JA対馬のライフアドバイザー 西山。
日本一の営業実績で何度も表彰され、神様と称された彼が、自分の運転する車で海に転落する。
死後、明らかになる不正の数々。
農協の腐敗したノルマ構造と、彼の巧みな手口で、膨れ上がっていく巨額な横領。額は約22億円。
著者が徹底的に取材を重ね、尋ねた人々の多さにまず驚かされる。
そして読んでいくうちに、JA対馬だけでなく、その母体の組織の構造、社員、関わっていく顧客、全て共犯なのでは?とも感じてくる。
人口3万人の小さな島で、西山が不正で得た報酬や共済金などで、少なからず街は潤っていた。
そして彼の死後がなんとも残酷。
金で繋がった人脈は、いとも簡単に切れる。
亡くなっていなければ、これだけ明るみに出ることは無かったのではないだろうか。
事件が起こった時報道されていただろうが、記憶に無かった。
JAのみならず、営業職のノルマ思考は腐敗しか産まない。
ノンフィクションはあまり読まないが、取材の数々、彼に関わった方々の心情など分かりやすく伝えられていて読みやすかった。