東郷えりかのレビュー一覧
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都市は人間が「こうしたい」と思って自然を上手くコントロールするために作り上げてきたもの。養老孟司の唯脳論にも近い主張だが、都市だけでなく、人類の営為そのものが突き詰めればそうした人間身体によるのであり、その身体要求に合わせて最適化して作られてきたのが文明である。
こうした切り口で、身体欲求や制約による歴史の転換点に着目し、文明論を述べるのが本書。非常に面白かった。ジャレドダイヤモンドの進化生物学的なアプローチにも近い。
例えば、自らの遺伝子を残したいという欲求。進化生物学者のホールデンは「兄弟二人を救うためなら命の危険を冒して川に飛び込むが、一人の場合はダメ。いとこなら七人ではダメで、八人 -
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疫病、人口問題、遺伝的変異、アルコール・カフェイン・薬物、長子相続、認知バイアスなどが及ぼした世界の歴史で終始一貫して長期に見られた傾向の結果や波及効果について探求した本。著者は宇宙生物学が専門だが科学を通して見た歴史書という感じ。特に風土病・感染症の観点からの植民地に関する分析が秀逸。
BEING HUMAN: HOW OUR BIOLOGY SHAPED WORLD HISTORY
【目次】
はじめに
第1章 文明をつくるソフトウェア
第2章 家族
第3章 エンデミック――風土病
第4章 エピデミック――流行病
第5章 人口統計
第6章 気分を変える
第7章 コーディング・エラー
第8章 -
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人間の身体的な側面(遺伝子、病気に対する抵抗、人口増加・減少の原因、薬物、認知バイアス等々)に焦点を合わせた『銃・病原菌・鉄』とも言うべき著作で、ものすごい説得力がある。『銃・病原菌・鉄』がまだまだ文明というものを脳内の機能が発揮されたものと過大解釈してんじゃねーのという印象を読み手にもたらすというか、世界史の見方を根本的なところから修正する必要あるんじゃという印象を持った。陸地がつながってるあいだにアフリカからユーラシアに出てきたサルの一部が、家畜と農耕とで人口を増やし、病気も増やしたけど免疫も得た。海がまたつながって遮断されたアフリカとアメリカ大陸では、家畜由来の病気とは無縁だった。ヨーロ
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国境をほとんど意識しないで生活している島国、日本。そんな我々日本人こそ、この本を読むべきだと感じた。ルポルタージュの形式で前史、古代、中世の国境の在り方を前半では記述している。後半にはウィルスのパンデミックや気候変動で、人間が引いた線が崩れていく様を知らせてくれる。人が引いた国境は強い国には無いに等しいもので、現在もロシア、中国、イスラエルなどは同じ態度を貫いている。しかし、最後の2章で伝えている、ツバルのように海に沈みかけている国や、砂漠化が急速にすすむサヘル地域からの環境難民、コロナでの国境封鎖。どれをとっても高い壁を絶対神のように作ることを対策と考える大国の指導者は、それを引き起こしたの
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ネタバレ
医学について
・もっとも基本的な感染対策は、手洗いとうがい。
飲料水が排泄物で汚染されないように対応すること。
・腸管感染症に対する治療の基本は、水分補給。
塩大さじ1杯+砂糖大さじ3杯→1リットルの水でかき混ぜる。
・単純な顕微鏡:透明なガラスを温めて引き延ばす→細いひも状にする→熱い炎でこの先端を溶かし、垂れさせる→
ガラスの滴は落ちる間に冷え、球形の極小のガラスビーズに→金属の薄片か、厚紙の真ん中に穴→
この穴に球形のレンズを乗せたものを作る→それを試料の上にかざす。
・難産の時に赤ん坊を取りだす、手術によらない方法:産科鉗子を産道まで差し入れる→
胎児の頭蓋骨をしっかり注意深くつかむ -
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前職でずっとネパールに関わっていて、ネパールではインド料理と思われるものをよく食べた。メニューを見ただけではよく分からないものも多々あったが、唐辛子が苦手な自分でもそれなりに楽しめる食事が多かったことを懐かしく思い出す。
タイトルは「インドカレー」となっているが、紹介されている料理はインドカレーというより、「読み手がインド料理だと思っている各種料理諸々」である。なんせ中盤ではみんな大好きチャイ(チヤ)まで出てくる。
著者が冒頭に限らず本書全体を通じて述べているのが、「インド人が食べるものは出身地、宗教、共同体、カースト、貧富に左右される」ということ。それはつまり、画一的な「インド料理」なん -
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この本は、人間の身体的特徴がどのように文明の発展に影響を与えてきたかを探る壮大な著作。次のそれぞれ独立した8章からなり、どの章もとても面白く読むことができた。
第1章 文明を作るソフトウエア
第2章 家族
第3章 エンデミックー風土病
第4章 エピデミックー流行病
第5章 人口統計
第6章 気分を変える
第7章 コーディング・エラー
第8章 認知バイアス
著者のルイス・ダートネルは、英国ウエストミンスター大学教授で宇宙生物学が専門。だが、この本は宇宙生物学の本ではない。どうしてこのような幅広い分野で洞察力を発揮できるのだろうか不思議でならない。
ヒトの体と人類の歴史を作ってきた関係の例と -
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もしも文明が滅んだとして、そのあと、現在の科学文明を最速で復興させるのにはどのような知識があればいいか?
核戦争とかで全面的に滅ぶのではなく、感染症などで、ほとんどの人類が死に絶え、インフラなどは機能しなくなったものの、建物などは取り残されているという仮定で、そこから上記の問に対して、必要な知識を分野をわけて書いていくという思考実験的な本である。
何となく、自分がそんな文明の滅んだあとの生き残りとして、この本を読んでいるところを想定しながら読んでいたけれど、
実際そのような目にあうことは、ほとんど有り得ないと思うが(そんなことはあって欲しくない)、
でも、この本はそういった場面での実用性よ -
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高校までの科学で理科で習うような用語がたくさん出て来て、あぁ教育ってやっぱ大事だよなぁと懐かしかった。(ハーバーボッシュ法とか笑)
一つ気になるのは誰がこの再興の役割を担うのかということ。この本は世界に1人取り残されたことを想定しているのか、、、そうなると製鉄とかは多分できないだろう。
世界が滅ぶとして、あなたは何を残しておくかという問いはなかなか難しい。
それぐらいに今の世界はもので溢れているのが当たり前。
リチャードファインマンの言葉が印象的だった。こういうのが本質を捉えている気がする。
「私の考えでは、それは原始仮説、すなわち、すべての物質は原子からできていて、永久に動き回る小さい