大隅良典のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
彬子女王ブームで読み、もちろん「石橋を適当に叩いて渡る」話も面白かった。が、実はノーベル賞の大隅先生、ベルバラの池田理代子さんまで読んで、平田オリザさんはあまり作品読んでないしまあいいかと読み終えようとしていたのだが、たまたま時間があって読んだら、これがまあ一番面白かった(平田さんすみません)。
コミュニケーションとは、ということを劇作家であり高校時代に世界一周したという平田オリザさんが語ってくれる。その中でいま声高に叫ばれるグローバルコミュニケーションはアメリカンコミュニケーションだという話と、文化が近い国同士こそわずかな差異が気になり紛争に発展するのではという指摘がとても面白かった。また「旅行ですか」というひと言を学生に言わせるワークショップも。
自分も以前杉田敏さんの米国ビジネスコミュニケーションの本を読んで以来、スモールトークのできる人を目指し、エレベーターの中やらバス停やら、国内外を問わず、結構平気で知らない人と会話ができる人(おばさん)に出来上がりつつある。まあ大抵相手もおばさん(おばあさまが多いか)なので、スモールトークというよりはover the sun トークで、アメリカンというよりはウェスタン(関西)コミュニケーションではないかとも思うのだが、ハタと、自分がそのコミュニケーション術を「グローバル」だと思い込んでいた節があったのを反省した。英語を喋る人が全てアメリカ人と思い込む並の初歩レベル…
ただまあ国外の場合において、自分は変な外国人じゃないですよ、あなたの言葉も理解していますよと伝えて警戒心をとく手段にはなっているのかもしれない。わからない。日本の同年代には浮いている気もする。今更ながらのコミュニケーションとは、という問いに立ち止まってしまうのであった。
-
Posted by ブクログ
2020年に行われた特別講義を文章化した本。
第一線をいく科学者の考える、役に立つ研究と役に立たない研究について。役に立つとは何か。目先の役に立つことだけでいいのか。学ぶということへの自分の価値観を振り返れる本だった。
大学生の頃の研究室は、役に立たないとは言わないけれど、役にたつまでに時間がかかる領域だった。もっと、目に見えた社会の変化に近い分野に進みたくて、大学院では外部進学を選択した。
大人になって、ありがたいことに社会人ドクターのお誘いを何度かいただいたことがある。もっと学びたい気持ちはあるから、すごく惹かれたけれど、結局その道に進まなかった。その理由は、「役に立つ」を強く求められるから。まあ、社会人で学位を取るとはそういうことだと思う。でも、いくら考えても、仕事を見据えて学位をとる選択を私にはできなかった。自分にとっては、学ぶということはもっと尊いことで、探究心や知りたいという欲求の先にあるものだと思っている。ある人には神聖化しすぎ、とも言われた。でも、譲れなかった。
役に立つ分野に進みたかったのに。いつの間にか、役に立つことと、学びを強く結びつけることを拒んだ。
この拒否感は、本書の中に出てくる、科学と技術の違いだったのかな。仕事を進める上で、技術を学ぶことは重要。一方で、科学は「面白い」とずっと感じていたい。面白いんだよってワクワクしながら話せる大人でいたい。 -
Posted by ブクログ
現代の科学者が直面してる問題、役に立つという利益性を求め、知的好奇心を満たすための学術研究が窮地に追いやられているという状況への痛烈な批判。永田先生の文章は言わずもがな、大隈先生の文章も読みやすくて引き込まれた。
大隈先生の最後の章で日本は「科学技術」という言葉で代表されるように「科学」と「技術」を並列に扱ってしまい、科学を技術的な発明と同じように役立つことを求められてしまう。偉人の言葉を知っていれば日々の出来事の解釈に深みが出るようにある科学的知識を知っていれば日々の生活の見え方が変わってくるという科学の文化的側面を大事にしたい。いやー大当たりの新書。研究意欲が落ちてきたらまた読もう。 -
Posted by ブクログ
文系の存在意義を考えるために読んだ。理系の学問でも、研究資金獲得競争に邁進せざるを得ずに有用性という観点に合致する分野に研究領域が収束しているという指摘になるほどと思わされた。ノーベル賞受賞者の、「楽しいと思える研究をする研究者が増え、研究の多様性があることが大切」という言葉は「それって何の役に立つんですか?」という社会における日常的な問いかけを見直すという示唆を与えてくれる。科学史の専門家から提示された、貴族的な国家と民主主義国家での学問・芸術保護のスタンスの違いは斬新な視点であり、歴史上繰り返される衆愚政治や近代の大衆社会における孤独・閉塞感などの民主主義国家のマイナスな特質を考えさせられる観点であった。
-
Posted by ブクログ
ネタバレ曖昧な理解でもやり過ごしてしまう人は、一旦この本の第2部だけでも読んで欲しい。
3部構成で、第1部は筆者たちがひたすら基礎研究の魅力や何が楽しいか、どんな基礎研究をどう行なってきたか、など基礎研究についてとことん語る。もちろん基礎研究を知らない自分からしたら、ついていけない話題もあった。が筆者たちの楽しそうな語り口のおかげで、楽しく読めた。
第2部以降は、自分自身胸にグサリと刺さる言葉が多く出てきた。
役に立つかどうか、効率的かどうか、みたいな観点で現代は物事を判断しがち、と筆者は指摘する。
また、インターネットも普及して、得たい情報がすぐに手に入ることから、知りたい、という欲求がすぐに満たされてしまう。しかし、知りたい、でもわからない、といった悶々とした時間を過ごすことが、知的好奇心を増幅させるのではないか、と。
自分自身、webに転がっている答えを見つけたら、それ以降は深掘りせずにそのまま仕事に活用することが多い。それで物事はすぐに解決するかもしれないが、そうやって過ごしてきたいまの自分に対しては、これから先もちゃんと仕事をやっていけるのだろうか、と不安になることもある。それに、取り組んでいることへの興味も強くなっていない。
こういった物事への取り組む姿勢は良くないと思いつつも、ついついやってしまう。
そんな状態で本書を読んだからこそ、胸に刺さった。知りたい、と思うことがすぐ知ることができる世の中だからこそ、表面的なことだけでなく深く知ることを大切にしたい。
問いが大事、と言われている。大事と言われてすぐに大事にできるわけではないし、どう大事にすれば良いかわからないが、そういった難しいテーマを少しずつ紐解いて自分なりの考えを言語化していきたい。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ「研究」に対して、役に立つ・立たない、といった場合、その話している人の頭の中がそれぞれ違うので、話自体が噛み合っていないことも多い。そんな中で、異なる分野の研究者、ここでは数理学、生物学(ノーベル賞の大隅先生!)、人文学の3名の研究者が講演後、座談会形式で課題と具体的な取り組みを話し合っている本。
ナビゲーターは、研究者を応援するクラウドファンディングを経営しているとのこと。基礎研究は、選択と集中と相性が悪く、説明責任を果たす上でも相性が悪い。一方で、説明責任自体は、果たすべきだが、何を説明すべきか、まったく関心がない人にどのように説明するかの工夫や方向性をしっかり議論すべきというのは、とても納得。
役に立つ/立たない、説明がつく/つかないの文脈でいくと、世の中には、説明がつかないけど成り立っているものがあり、例えば、地方のお祭りなんかがそう。その土地ならではのお祭りがあって、地元の人が大事にしていて、じゃあ、その価値はどこにあるかというと誰も「説明責任」は果たしていない。若い人も楽しんで参加しているという現状は、感情面としてアタッチしているということ。逆に言うと、感情面で納得がいっていないときに、「説明責任を果たしてほしい、他者に対して自分が納得できるようにしてほしい、それによってお金を出すことを納得したい」という問題が起きているのだ、という指摘はとても鋭いと思いました。役割として説明責任は果たすべきだが、○○の役に立つとウソに近いようなことは止め、一方で純粋に頑張っている人を応援したくなるような感情を醸成できると基礎研究の環境が良くなると感じました。
他に科学と技術を分けて考えるべきであるということ、国の果たす役割の重要性、一般市民が”推し研究者”を応援できる体制など、示唆に富む話が多数あるとともに読みやすさもあり、基礎研究、引いては好奇心が原動力になって研究に取り組める環境を構築できるような活動を継続して欲しいと思いました。 -
Posted by ブクログ
人を動かす原動力はいろいろあると思うんですけど、研究については、「好奇心」とか「探求心・探究心」とか「興味・関心」であることが望ましいのだと思います。
ただ、世界的に、また、とくに日本では、それらを支えられるだけの土壌や理解、文化が乏しくなってきているように思いますし、その状態を危惧しているのが、本書の関係者だと思います。
一方で、その危惧を払拭するための動きがあるのも事実。
たとえば、この本においてナビゲーターを務めている柴藤氏は、そのような動きを支えている人の一人。
自分もいつかは、柴藤氏のような活動をしたいな、と思っていますので、そこに向けて、いろいろと作戦を考えていきたいと思います。 -
Posted by ブクログ
3人の異なる分野の研究者が、それぞれ微妙に異なる立場から「役に立たない」研究について論じている。
3人それぞれの講演等の中から印象に残ったことを書き記しておく。
まず、理論物理学者の初田さんは、基礎科学の重要性を一般社会や政府に対して理解してもらうためには、科学者自身のアウトリーチ活動をより多様に、効果的に展開していくべきだと主張している。ADKと組んだ独自のアウトリーチの取組み(クリエイターと協力してプロトタイプを作っていくというもの)も紹介していて、興味深い。
次に、分子細胞生物学者の大隅さんは、自身が、当初全く引用されない分野だったオートファジーの研究を続けてきた経験から、安易に「役に立つ」分野を研究するのではなく、自分が本当におもしろいと思える分野を見つけることの重要性を説く。また、大隅さんは自身の財団を立ち上げ、研究者視点での「おもしろい研究」にファンディングしているなど、国の政策とは一定の距離を置いて基礎研究の支援を行っている。
最後に、科学史家の隠岐さんは、「役に立つ」というのは政治的な言葉(説得のための言葉)であり、決して検証のための言葉でないことを指摘している。「有用性」が持ち出されるのは、それが未来に関する言葉だからだ、という主張はなかなか興味深い。また、隠岐さんは、今般の科学技術基本法改正によって人文社会科学がいわゆる科学研究に位置付けられることになったことについて、人文社会系研究者が安易に「動員」されないようにと、警鐘を鳴らしている。「社会のため」と言ったときの「社会」とは何を指すのかが曖昧なまま動員されると非人道的な結果に繋がりかねないという指摘はもっともであり、まさに人文社会系研究者はその点に留意しながら研究をすべきなのでは、と感じた。 -
Posted by ブクログ
続・僕たちが何者でもなかった頃の話をしよう
チャレンジをテーマとして各氏の講演と主催者である永田和宏氏との対談が収められている。何者でもなかった頃の話かと言われるとそうでもない感じもするが、基本的には若者向けのメッセージになっている。学びは多いと思う。
池田理代子
漫画家を中断してまでも声楽家を目指すために47歳で音大に入り直す。やらないで後悔したくないというのがモチベーション。
平田オリザ
コミュニケーション能力について。相手のコンテクストを読み取ることができる医師を育成するために阪大は劇作家である氏を招聘した。劇の役割は解答を与えることではなく議論を喚起するものであるという意見も興味深い。やや説教臭い感じはある。
彬子女王
面白そうがモチベーションとなって「石橋を適当にたたいて」周りを巻き込みながら挑戦してしまう勢いがある。オックスフォード留学での経験が自身を大きく変えた。
大隅良典
オートファジー(自食)の仕組みを解明したことによりノーベル賞を受賞した。冒頭に若者へのメッセージをまとめているので分かりやすい。
1. 長い人類の歴史の中で自分の生きている時代を考えよう
2. 自然と親しみ、小さな発見を大切にしよう
3. 権威や常識に囚われず、自分の興味、抱いた疑問を大切にしよう
4. 情報にながされず自分の眼で確かめよう
5. 最初の疑問に繰り返し立ち返ろう
6. 人と違うことを恐れずに、自分の道を見極めよう
7. はやりを追うことはやめよう
8. 役に立つこととはなにか、長い目線で考えよう
9. 自分の理解者をつくろう -
Posted by ブクログ
ネタバレ役に立たないとされがちな基礎研究について議論された座談会のまとめ。
そもそも役に立つとは何かということ(線引きは不明瞭・恣意的 と理解した)、基礎研究は多様性を認めてこそ将来応用につながるような研究が生まれること(選択と集中はそぐわない)、研究内容に加えて研究者の人となりや生活ぶりを紹介するようなサイエンスコミュニケーションもあるといいこと、市民のニーズにあった研究という視点(シチズンサイエンスや当事者研究)など、盛りだくさんだった。
子供への理科教育は等しく必要としても、大人に対しては、研究にそれほど興味のない層に無理に届けなくてもいいのでは、という提案もあった。そういう視点は大事なように思った。