これは、中学生の時に読んで、ビックリした作品。私の中では、エラリー・クイーンの「Yの悲劇」と双璧をなす作品でした。
特にラスト近く、イプセンとの関係で決定的な証拠を掴んでから大団円に向かう辺りのサスペンスフルな展開は比類がない。
今の小説家が書いたら、もっとスピーディに、より面白く書けるのではな
...続きを読むいかと思いますが、90年前の作品としては、今でも十分読めるし、昔のニューヨークの雰囲気を感じられて、その点でも面白かった。
それに、何より、この犯人像は秀逸で、京極夏彦の名作「鉄鼠の檻」に通じるものがあります。
理論物理学者がウヨウヨ居るという、常識とはかけ離れた環境の中で、一人二人と人が減っていくのに、一向に犯人が分からないという状況を実に上手く描写してると思いました。
どの人も皆犯人に見えてくるという、ミス・ディレクションの書きっぷりが上手いんだね。
それにしても、ドブロイとかアインシュタインとかボーアとかの我々がよく知っている物理学者の名前が、推理小説の中でこんなに登場する作品は、他にないのではなかろうか。