安田浩一のレビュー一覧
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在特会のルポ。単行本は2012年の刊行。ポストトゥルースな2025年の現状はすでにこの頃にはすっかり準備されていたんだなという驚きの連続だった。
彼らは愛国の名のもとに差別する。しかし彼らの活動には思想も地域社会との共生もない。まるで「愛国に名を借りた鬱憤晴らし」のようなのだ。ある朝鮮学校のOBは語る。「朝鮮人がバカにされるのは今に始まったことじゃないしな。それにあの人たちだって、楽しくてしかたないって人生を送ってるわけじゃないんやろ?」
在特会はインターネット上で似た意見を持つ者たちが集まって結成された。平成22年には活動資金として年1800万円ものカンパが集まった事実から、彼らの活動が -
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ウィシュマさんの事件で少し表に出てきた人権侵害ともいうべき入管の実態、ヘイトスピーチなどの差別と暴力、技能実習生制度といった外国人差別をめぐる状況が紹介され、著者二人の対談で解説や示唆が得られる。
例えば、人を逮捕するには現行犯でない限り司法手続きを経た令状がいるのに、入管はそうした司法の手続きを介在させずに人を拘束することができるなんてことは初めて知った。また、今日の入管につながる制度・仕組みができた戦後間もないころに、特高経験者が多く入管に関係したなんてことも知ると、そのアウトローっぷりとつながる気がしてくる。
ことほどさように、制度ですらこれでは大衆が外国人差別をするのも無理ない気さえす -
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関東大震災における朝鮮人の虐殺の現場を訪れ、残された記録や証言を丁寧に紐解きそこで起こった虐殺の記録を書いた本。
日本人全員読むべき本だと思う。
朝鮮人虐殺のことは歴史的事実として知ってはいたものの、この本を読んで自分は何も知らなかったと思い知らされた。
まず驚かされたのが、デマを流布させたのが、国、警察、行政、新聞であったということです。
巷間で流布したデマだと思っていたので衝撃でした。
そして、自分が思っていたよりもずっと虐殺の範囲も人数も多かったことにもショックが大きかったです。東京のみならず、千葉、埼玉、群馬、神奈川と、関東全域で起こったことでした。
加害者たちの残虐性は目を覆うほ -
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安田浩一
1964 年生まれ。静岡県出身。「週刊宝石」などを経てフリーライターに。事件・社会問題を主なテーマに執筆活動を続ける。ヘイトスピーチの問題について警鐘を鳴らした『ネットと愛国』(講談社)で2012 年の講談社ノンフィクション賞を受賞。2015 年、「ルポ 外国人『隷属』労働者」(「G2」vol.17)で第46 回大宅壮一ノンフィクション賞雑誌部門受賞。著書に『ルポ 差別と貧困の外国人労働者』(光文社新書)、『ヘイトスピーチ』(文春新書)、『沖縄の新聞は本当に「偏向」しているのか』(朝日新聞出版)、『学校では教えてくれない差別と排除の歴史』(皓星社)など多数。
「右翼」の戦 -
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近年、沖縄の基地反対闘争をあざ笑う発言が耳目を集めている。その代表がひろゆきの辺野古座り込み抗議行動への、言葉尻をとらえた揶揄だ。ひろゆきは、座り込み抗議が終わって誰もいない夕方に現場を訪ね、「座り込み抗議3011日」の看板前で自身の記念写真を撮り、「0日にした方がよくね?」とうそぶいたのである。
「座り込みとは要求貫徹まで座り続ける抗議」と辞書に書いてあるというのが、「論破王」の唯一の論拠である。
本書は、このひろゆきの論難を記録にとどめ、的確に批判している。他にも私たちが忘れてはいけない、この種の薄弱な論拠による批判や不当な差別発言を怒りとともに資料化している。例えば、辺野古反対運動者は「 -
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第1章 ジャングル風呂と旧泰緬鉄道(タイ)
第2章 日本最南端のユーフルヤー(沖縄)
第3章 沐浴場とアカスリ、ふたつの国を生きた人(韓国)
第4章 引揚者たちの銭湯と秘密の工場(寒川)
第5章 「ウサギの島」の毒ガス兵器(大久野島)
歴史修正主義がなんと言おうと過去は現在と繋がっていることを人の記憶や行政の記録、建造物や死者達が物語る。私達の国がどんなに酷い事をしてきたのか…直視するのはしんどいけれど、ほんわかタッチの絵と文章のおかげで情景が目に浮かぶし、おふたりが持つ「出会うべき人に出会うべきタイミングで出会うパワー」に驚かされながら最後まで一気読み。今も昔も、被害は隠され分断され広くは -
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ノンフィクションライターの安田浩一氏と文筆家でイラストレーターの金井真紀氏はともにお風呂好き。二人でタイ、韓国、沖縄、大久野島などの温泉を巡り、湯けむりの先にある歴史を紐解くという歴史紀行本。
風呂で出会った客や温泉関係者との語らいにはユーモアもあり、癒されるが、タイトルにあるように、基調には戦争がある。日本軍が残した負の遺産について、生き証人になる方が語るところは重く厳粛な気持ちにならざるを得なかった。
特に深刻な気分になったのは現在はうさぎで有名な大久野島の毒ガス兵器工場の歴史に関する話だ。元教諭で大久野島のガイドをしている山内氏や工場で働いていた95歳の藤本氏の語りの中には、断じて風化さ -
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現代史必読書というてもよい。
安田浩一さんのあとがき、おわりに、のところに
排他の空気に満ち満ちた、いまの社会に対する私たちの小さな抵抗でもあるから
と。この本の存在意義。安田浩一さんと金井真紀さんが、歩いて出会った人との貴重な記録。
こんなコンセプトで実際にたどり着き出会い聞いて答えて聞いて書き付け、私たちの血肉に、忘れてはいけないものを刻みつけ?お二人の行動力人間力よ。
そしてほのぼのと、人柄を感じる金井さんのイラスト。油断させて、ギスギスしないで、人や物の本質をつく。
排他の空気に満ちたこの国の人の必読書じゃないかな。
装丁も素晴らしい。 -
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第二次世界大戦後、日本はアメリカの統治下に置かれた。そこで、アメリカからの統治を拒絶し、旧来からの日本の伝統を取り戻し、日本国民で国を守るというスタンスで「右翼」が形成されたのは知っていました。しかし、今の右翼団体を見ると、アメリカを迎合している状態。もっといえば、アメリカの手下になって、中韓を威圧するスタンスに鞍替えしており、とても矛盾を感じたため、なぜそのような経緯を辿ったのか、興味深いと思い購入してみました。
読んでみると、初めはアメリカに対する敵対心を軸として活動していましたが、アメリカと日本右派勢力も共に「反共」を掲げていたため、考え方が一致したという経緯らしいです。
-「古い上