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タイ、沖縄、韓国、寒川(神奈川)、大久野島(広島)――
あの戦争で「加害」と「被害」の交差点となった温泉や銭湯を各地に訪ねた二人旅。
ジャングルのせせらぎ露天風呂にお寺の寸胴風呂、沖縄最後の銭湯にチムジルバンや無人島の大浴場……。
至福の時間が流れる癒しのむこう側には、しかし、かつて日本が遺した戦争の爪痕と多くの人が苦しんだ過酷な歴史が横たわっていた。
■タイ…………ジャングル風呂と旧泰緬鉄道
■沖縄…………日本最南端の「ユーフルヤ―」
■韓国…………沐浴湯とアカスリ、ふたつの国を生きた人
■寒川…………引揚者たちの銭湯と秘密の工場
■大久野島……「うさぎの島」の毒ガス兵器
嗚呼、風呂をたずねて四千里――風呂から覗いた近現代史
【もくじ】
■はじめに
第1章 ジャングル風呂と旧泰緬鉄道…………タイ
第2章 日本最南端の「ユーフルヤー」…………沖縄
第3章 沐浴湯とアカスリ、ふたつの国を生きた人…………韓国
第4章 引揚者たちの銭湯と秘密の工場…………寒川
第5章 「うさぎの島」の毒ガス兵器…………大久野島
■特別対談・旅の途中で
■おわりに
※アプリの閲覧環境は最新バージョンのものです。
Posted by ブクログ
第1章 ジャングル風呂と旧泰緬鉄道(タイ)
第2章 日本最南端のユーフルヤー(沖縄)
第3章 沐浴場とアカスリ、ふたつの国を生きた人(韓国)
第4章 引揚者たちの銭湯と秘密の工場(寒川)
第5章 「ウサギの島」の毒ガス兵器(大久野島)
歴史修正主義がなんと言おうと過去は現在と繋がっていることを人の記憶や行政の記録、建造物や死者達が物語る。私達の国がどんなに酷い事をしてきたのか…直視するのはしんどいけれど、ほんわかタッチの絵と文章のおかげで情景が目に浮かぶし、おふたりが持つ「出会うべき人に出会うべきタイミングで出会うパワー」に驚かされながら最後まで一気読み。今も昔も、被害は隠され分断され広くは知られないまま忘れられるのを待っている。反対に私達にできることは
「隠さず、繋がり、忘れない」ことなのかも。たまには温泉で息抜きしつつ、語り、伝え続けたい。
Posted by ブクログ
ノンフィクションライターの安田浩一氏と文筆家でイラストレーターの金井真紀氏はともにお風呂好き。二人でタイ、韓国、沖縄、大久野島などの温泉を巡り、湯けむりの先にある歴史を紐解くという歴史紀行本。
風呂で出会った客や温泉関係者との語らいにはユーモアもあり、癒されるが、タイトルにあるように、基調には戦争がある。日本軍が残した負の遺産について、生き証人になる方が語るところは重く厳粛な気持ちにならざるを得なかった。
特に深刻な気分になったのは現在はうさぎで有名な大久野島の毒ガス兵器工場の歴史に関する話だ。元教諭で大久野島のガイドをしている山内氏や工場で働いていた95歳の藤本氏の語りの中には、断じて風化させてはならない歴史があった。
毒ガス兵器製造の事実が隠蔽され、島の人々が実情を知らぬまま、工場従事者の体に異変が起きる。後遺症で死ぬ人も続出するが、被爆者援護法のような戦後の救済措置は十分になされなかった。
毒ガス兵器は中国戦線で多用され、民間人も犠牲となったうえ、戦後は毒液を海や川に捨てたり、土中に埋めたりして大量の毒ガスが中国大陸に置き去りにされた。
大久野島には加害と被害両面に関する負の歴史が残っているのだ。
この他、タイとビルマを結ぶ「泰緬鉄道」建設に20万人超の労働者を集め過酷を極める強制労働をさせたこと、終戦後、夫の故郷である朝鮮半島に来た日本人女性が支配者だった日本人ということで強烈ないじめにあい、精神を病んだりした事実、相模海軍工場でイぺリット製造に従事させられ、身体を病んでも十分な補償はしてもらえなかたった徴用工の話などの悲話も盛り込まれている。
日本では気持ちを落ち着かせるために風呂に入るが、韓国では風呂が垢を落とし、体に刺激を与え活力や鋭気を養う場所になっているという記述は新鮮で面白かった。
沖縄唯一の銭湯「中乃湯」の話など、風呂巡りと戦争がうまく融和したレポートもあるが、戦争の悲劇的な歴史が突出している部分も多い。だが、それはそれで、立派なルポになっていると感じた。
Posted by ブクログ
現代史必読書というてもよい。
安田浩一さんのあとがき、おわりに、のところに
排他の空気に満ち満ちた、いまの社会に対する私たちの小さな抵抗でもあるから
と。この本の存在意義。安田浩一さんと金井真紀さんが、歩いて出会った人との貴重な記録。
こんなコンセプトで実際にたどり着き出会い聞いて答えて聞いて書き付け、私たちの血肉に、忘れてはいけないものを刻みつけ?お二人の行動力人間力よ。
そしてほのぼのと、人柄を感じる金井さんのイラスト。油断させて、ギスギスしないで、人や物の本質をつく。
排他の空気に満ちたこの国の人の必読書じゃないかな。
装丁も素晴らしい。
Posted by ブクログ
もともとは世界の浴場や温泉を巡ろうという企画がぶれて(?)過去の戦争にまつわる日本の負の、そして清算できていない歴史を訪ねる旅と折衷されたような感じ。代表的なのが旧泰緬鉄道の沿線の温泉で、あの過酷な敷設工事のかたわら日本軍や関係者が整備した温泉がいまも残っているという。まさに、温泉のあるところに日本人の足跡あり、傷跡ありという感じ。そうなるとただ気持ちいいとだけは言っていられない。癒しや憩いの場も視点を変えればさまざまな背景や歴史があることを感じさせられた。
瀬戸内の大久野島は戦中、毒ガス工場になっていたという。そこで働いた人たちは、戦後も毒ガスの後遺症に悩まされた人が少なくなかった。毒ガス製造は戦中当時にも国際的に非合法なものだったことから、その製造に携わった人を公的に補償するという表向きの論理が立たず補償は遅れたし、徴用されていた朝鮮半島の人たちなどは見捨てられたまま。
少年の頃に大久野島の向上で勤労動員されていた藤本安馬さんもそうした一人。抗いようなかったとはいえ、自分が作った毒ガスが中国大陸などで使われいまも被害が残ることに心を痛めている。自身も毒ガス製造による体調が安定しない、つまり被害者だが「わたくしは加害者でもあるんです。わたくしは大久野島で鬼にされたんですよ!」(p.354)、「だからわたくしは忘れない。鬼にされたことを、犯罪者にされたことを、人殺しの道具をつくらされたことを、絶対に忘れない」(p.355)と著者らに語る、いや思いをぶつける。戦後80年近くになろうとしながら、少年の頃の苦い記憶をその何倍もの人生の間、抱えて生きてきた悲痛さが迫ってくるようだった。平和って、平和でない記憶をもつ人たちがいないとその方向に進まないのだろうか。伝えるだけでは不十分な気がする、伝わらない人には伝わらないから。悲しいかな、戦争を知らない子どもたちは簡単に戦争をしはじめてしまうような気がしてならないこのごろ。
韓国のチムジルバンのような男女が共に過ごせる施設は1999年の法改正以来で意外と新しい文化だということや、垢すりタオルを「イテリ(Italy)」といって、そもそもは1960年代に使い道のないイタリア製の生地(ビスコールレイヨン)を転用したアイデア品だったということが知れたのはなかなかの収穫だった。
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