五味文彦のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
いつ,どこで,誰が,何をしたのか,という前提知識なしに『なぜ』という疑問を抱くことは出来ない。
本書は普通の歴史教科書であり、なぜ蒙古が襲来したのか、なぜ室町幕府の後に戦国時代に至ったのか、なぜ犬飼首相殺されなければならなかったのかを教えてくれるものではない。
もちろん、全ての事実が明らかになったとしても、それが理解できる物語であるかどうかはわからないし、理解できたとしても正解かどうかはわからない。
しかし、もし二つの世界大戦があったことを誰も知らなかったとしたら、次の発生を食い止めることはできるだろうか?
なぜ世界大戦が発生したのかが研究されている社会と、誰も何も考えていない社会では、その -
Posted by ブクログ
ネタバレなんか歴史って変わるねんな、と思った。
「え、その絵足利尊氏じゃないん?」とかめっちゃ思った。
伝、でもないし、単なる南北対立の騎馬の人みたいになってるし。
そういう歴史の最新情報が載ってて、参考になった。
けど、読み直して思ったのは「歴史という授業科目のための歴史」みたいな編纂という感じ。
別に嘘の歴史が書かれているわけではないけど。
文化が変化した⇒その名前は?特徴は?
とかではなく、
文化が変化した⇒なぜ変化したのか?
という点に切り込んでいくのが重要というか、結果より過程を知る事が教養としての歴史になるような気がした。
「なぜ楽市楽座になったのか?」とか。
-
Posted by ブクログ
古代の中国との貿易など若干を除けば、江戸時代が終わるまでほとんど他文化圏との交流がないまま明治維新を迎える内向的な国家日本。
ところが、時代に即してみてみると東と西、さらに蝦夷地(東北)では近畿の政権に服従するひとびとの温度差がある。これは、たとえば平安時代後期の平将門の乱(地方への土着[p56])などに表面化している。
つまり、遣唐使の廃止[10~11世紀、p60]や鎖国で引きこもったというのは現代的な視点で、その当時からすれば内部に異文化、異国があったはず。
古い時代では、国家権力は局在していたし、常に局在化する傾向があった。つまり、点の国家であった。それでも表面的に従属していた事実 -
Posted by ブクログ
五味先生の中世史総括本。政治の仕組みとしての談合の役割、特に評定から寄り合いへの政治の型の変化を見ていると、昨日までの民主党内閣の成立を見ているよう。それでも、自民党のように官僚制度の外側でインナー(談合仲間程度の意味です)を形成し、党・政府分離型の意思決定をした自民党に対し、(小沢氏を除いて)内閣内にほぼ一元的なインナーを形成することに成功した民主党。まるで今回の政権交代が、院政の行き詰まりと鎌倉幕府による政権転覆による解決を見えてくるから不思議なものだ。
ただ、やはり新しい視点に注目した本である以上、通史的なものと共に読む本、といった感じもある。早く「京・鎌倉の王権」を読むべきか。