五味文彦のレビュー一覧
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[ 内容 ]
全国各地に残る数多くの伝説、そして彼の名前に由来する「判官びいき」という言葉―このように今なお高い人気をもち、日本史上最も有名な英雄となっている源義経とはいったいどういう人物だったのか?
義経に関わる文書・記録や物語類などを広く探索して、単なる「悲劇のヒーロー」ではないその実像と魅力の秘密に迫る。
[ 目次 ]
1 幼きころ―史料の性格を考える
2 童の時代―『平治物語』の世界
3 英雄への階梯―『義経記』の世界
4 英雄時代―『吾妻鏡』の世界
5 義経の力―文書から探る
6 合戦の英雄―合戦記と物語
7 頼朝との対立―書状の役割
8 落日の義経―宣旨と院宣
9 静の物語―『吾 -
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本書が扱うのは、中世前期、12世紀前半から14世紀後半の約180年間の歴史。
概説書の通史であり格別新奇な説が主張されている訳ではないが、かなり長めの期間を扱っているので、時代の全体的な流れを把握するに適当ではないかと思われる。
政治史に加え、文化史、特に宗教に関して詳しめな解説がされているかなという印象。
また、”はじめに”で言及されているように、歴史を身分や階層の展開の中でとらえる見方をさらに進めて、人と場との関係の中で具体的にとらえること、人の生活する場ー都市・農村・家などーの種々相や、場での人の営為ー芸能・文学・宗教・政治などーの種々相を具体的に示すことを目指していると著者は -
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『新古今和歌集』の奏覧がなされる1205年までの後鳥羽院の半生をたどった評伝です。
本書の刊行に先だって、著者のもとで学んだ田渕句美子が、おなじ角川選書から『新古今集―後鳥羽院と定家の時代』(2010年)を刊行しており、やはり『新古今和歌集』の成立に焦点をあてて、後鳥羽院と藤原定家の人物像をえがき出しています。それに対して、本書は後鳥羽院の「評伝」として書かれたということで、田渕の本とは異なる観点から後鳥羽院のすがたがえがかれていることを期待して手にとりました。
ただ一読した印象では、両者の立っている位置にそれほど大きなへだたりはなかったように感じました。著者は、文化と政治のかかわりに踏み -
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源義経の実像をえがくことを中心としつつ、伝説のなかの義経像についても説明をおこなっている本です。
著者は「はじめに」で、「よるべき史料が少ないというよりも、逆に多くあって、しかもいずれも雄弁」であるからこそ、かえって義経の実像を知ることがむずかしいと述べています。そのうえで、史料の批判をおこなって実像のみをとり出すのではなく、『義経記』に代表されるさまざまな文学作品にえがかれることになった義経像にも目を向け、「義経に託された、その創作された時代の思いを探る」ことを同時に目標として掲げています。
こうした著者のもくろみは興味深く思われたのですが、基本的には義経の「実像」を明らかにすることに、