羽住都のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
「しあわせは子猫のかたち」と、表題作「失踪HOLIDAY」の二編を収録。
ちょっと変わった設定を用いて魅力的な物語を創造する、作者の才能の片鱗が窺える作品集だと思います。
それぞれ違った良さがありますが、個人的には「しあわせは子猫のかたち」が好みです。切なさの中にほのぼのとした温かみを感じる、とても優しい物語でした。
一方、小生意気な女子中学生が企てる狂言誘拐の顛末を描いた表題作は、杜撰で穴だらけの計画が実行されることに終始ハラハラ。
使用人のクニコさんのキャラクターも印象深く、主人公とのやり取りも面白かったです。
期待を裏切らないあとがきも含めて、最後まで楽しめる一冊でした。 -
Posted by ブクログ
全体的に切ない話が多かったです。個人的には、フィルムの中の少女と失はれた物語が好きです。
「フィルムの中の少女」は文体の影響もあり、ホラー展開かと予想して読み始めましたが…どうにも切ないです。やり切れないけど、誰かに気付いて欲しくて、主人公が引き寄せられた…主人公は少女と似ていて共鳴しやすいのかもしれません。
「失はれた物語」は辛いですね…閉じ込め症候群の方は同じように感じ、生きているのだろうかと思いました。中には主人公のような選択をする人もいるかもしれません。
この完全な孤独に人は耐えられるのだろうか…人は繋がりがないと絶望してしまうのではないかと感じたお話でした。生きていると -
Posted by ブクログ
「しあわせは子猫のかたち」は、『失はれる物語』で読んだことがあるので飛ばした。
こちらは「しあわせは子猫のかたち~HAPPINESS IS A WARM KITTY~」という副題がついているが、内容は変わらないみたいだ。
「失踪HOLIDAY~しっそう×ホリデイ」は、乙一にしてはあまり心をつかまれない、ダレた展開が続くなーと思っていたら、ラストはさすがだった。
全く疑いもせずに読んでいたから、ほとんどなににも気づかなかった。
狂言誘拐を演じた主人公の女子中学生が、事件を機に家族関係を見直す話かと思っていたら、確かにそのような展開にはなるのだが、実はいろんなことが起こっている。
切なさの乙 -
Posted by ブクログ
ネタバレタイムトラベルに伴うタイムパラドックスをネタにした話。女性Aと彼女の許嫁B(親が勝手に決めた)と恋人Cの三角関係を現在と50年前(主人公たちの祖父母の世代)とでかぶるような設定にしてある。許嫁Bの企みによって50年前に飛ばされた恋人Cは女性Aの祖母と思しき女性と結ばれそうになるのだが、それで正解なのか。
バックトゥザフューチャーとターミネーターが混ざったような話だけども、絵に描いたような悪人の許嫁Bとか、やけに押しの強い女性Aとか、どこかすっとぼけた恋人Cとか、登場人物のやりとりがまるで新喜劇を見ているようなコミカルさ。イラストがシリアス系なので、ちよっと騙された感じ。