中勘助のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
1935年、およそ100年くらい前に岩波文庫から出版された本です。どこでこの本の情報を手に入れたのか?もう定かではありませんが、1930年代のこの国の原風景をとても細やかに描写していて当時の日本の文化や空気に触れられた気がしました。
ちょっと繊細で弱虫な少年の幼少期の成長譚なんですが、読むほどに情景が浮かんでは消えて、泣き虫少年の胸の内に湧き出す喜怒哀楽がとても芳醇な描写や表現で綴られていて日本語自体の響きの柔らかさ、語彙の豊かさを感じます。
本作のように主人公が日常で感じる悲喜こもごもの心理描写を詳細に描いた物語って、読んでいてカズオイシグロ先生の「私を離さないで」を思い出しました。物語では -
Posted by ブクログ
はじめて読むタイプの文章だった。
子どもの頃の思い出を「こんなことがあったな〜懐かしいな〜」という目線で書くのではなく、その思い出を、そのときの自分の目で見たものや心の感じ方をそのまま美しい文章にしているような…
思い出を振り返ると必ず記憶が曖昧な部分が出てくると思うが、そういう言い訳のような文は一切出てこない。「この文章を書いている現在の自分」の存在を排除しているように感じる。
風景や人物描写も含めて、すべて実写映像ではなく、色鉛筆やクレヨンでスケッチブックに描いた絵のような印象というか…「現在の自分」は排除しているのに、文章から立ちあがるイメージが、子どもの頃こんなことあったな、という輪 -
Posted by ブクログ
風景描写がすごい。後編の十四の冒頭「地上の花を暖い夢につつんでとろとろとほほえましめる銀色の陽炎のなかにその夢の国の女王のごとく花にはここかしこに牡丹がさく」なんか、難しい単語は使ってないのにどうしたらこんなうつくしい文章が書けるんだ…
ただ四三のお蕙さんと仲直りした場面の
「長いまつ毛が濡れて大きな眼が美しく染まっていた。そののち二人の友情は、いま咲くばかり薫をふくんでふくらんでる牡丹の蕾がこそぐるほどの蝶の羽風にさえほころびるように、ふたりの友情はやがてうちとけてむつびあうようになった」
とか、終盤の友達のお姉さんが出てくるとことか、女性が関わる場面の文章が他より甘い(?)気がしてな -
Posted by ブクログ
書斎の引き出しに昔からしまってある一つの小箱。子安貝や椿の実・・・こまごましたものがいっぱい詰めてあるが、そのうちに一つの珍しい形の銀の匙のあることを、かつて忘たことはない。
病弱で臆病だった幼少期から、多感な青年に成長する日常を、細やかに描写した自伝的小説。
創作ではあるのだろうが、かなり著者の人生が投影されている小説なのだろう。
とくに起伏もなく、この主人公、特に幼少期はぐずぐずと泣いてばかりだし、時代的なこともあるかもしれないが、青年期の女性への態度も自意識が高すぎて、どうも好きになれない。
でも、情景描写はとても微細で、特に『お恵ちゃん』との件などは面白く読めた。 -
Posted by ブクログ
ネタバレそもそもこの小説に興味を持ったのは、ある私立難関校で教材として使用されており、3年間で1冊を読むという名物授業があるというのを知ったからだった。
3年間で読むような本とはどんなものなのだろうという興味があった。
購入したのはもうはるか昔のことで、それからまったく読む気にならず、ずっと積読状態だったが、ふと読んでみようという気が起こり購入から約10年経ってやっと手に取った。
なお、私が読んだのは本当は角川文庫から出ているものなのだが、検索したところ電子書籍版しかヒットしなかったので、仕方なくこちらに感想を書く。
何せ大正時代に書かれたものであるから、言葉も今とは異なっており、非常に読みづらい