感情タグBEST3
Posted by ブクログ 2023年10月02日
記憶力の化け物か感受性の化け物かその両方っていう本。
27歳の成人がこれだけ細かい描写で子供の心情を語れるというのが凄まじい。
p. 153あはれな人よ。なにかの縁あつて地獄の道づれとなつたこの人を 兄さん と呼ぶやうに、子供の憧憬が空をめぐる冷たい石を お星さん と呼ぶのがそんなに悪いこ...続きを読むとであつたらうか。
Posted by ブクログ 2021年09月12日
読み始めると読み耽ってしまう幼少期の細かく綺麗な心理描写。
いま咲くばかり薫をふくんでふくらんでる牡丹の蕾がこそぐるほどの蝶の羽風にさえほころびるように、ふたりの友情はやがてうちとけてむつびあうようになった。
私はまた唱歌が大好きだった。これも兄のいる時には歌うことを許されなかったのでその留守のま...続きを読むをぬすんでは、ことに晴れた夜など澄みわたる月の面をじっと見つめながら静な静な歌をうたうといつか涙が瞼にたまって月からちかちかと後光がさしはじめる。
Posted by ブクログ 2021年08月28日
子供の頃の思い出を子供そのままの瑞々しい感性で綴った私小説。病弱な幼少時代の前編と就学後の後編からなるが、いずれも人見知りで感受性豊かな筆者の体験は何処か懐かしい。毎年読み返すたびに「すべてのものはみな若く楽しくいきいきとして、憎むべきものはひとつもない。」そんな風景が当たり前であった過去を思い出し...続きを読む、大人になって失ったものの大きさを振り返る。
Posted by ブクログ 2020年07月22日
2020.7.22
体が弱いことからこの時代にしては甘やかされて(実際にしょっちゅうお菓子やらおもちゃやらを買ってもらえているのでそれなりにお金がある家と思われる)育ったのに、そんなに傲慢にならず感受性豊かに育った主人公の話。
前半は子どものころ面倒を見てくれた伯母とのやりとりがほとんどだが、文...続きを読む体が流麗で景色がありありと浮かぶ。現代語訳ではないけれど昔すぎないのでよく読めば意味は十分わかる。当時の流行り物やかけあいもおもしろく笑ってしまうところも多々あり、原文だからこそ伝わるものもあると思った。
日清戦争あたりの描写や「兄」に代表される、画一的でダイバーシティを良しとしない、「戦時下の日本」のような日常にたいして、男なのに星を見たりきれいな貝を拾ったり仏教的な慈しみに関心を示してしまう主人公。生まれた時代が遅すぎたか(平安時代だったら良かったのに)、または早すぎたか(2015年以降なら良かったのに)と思った。
とくに「あらすじ」はないけれど、読むとはまってしまいほろりとする、不思議な作品だった。
Posted by ブクログ 2020年05月10日
私は平成生まれで、当然この物語で
描かれている時代については無知である。
しかし、懐かしい。
描かれる人々、風景、モノ、会話、その全てに
懐かしさを感じた。
おそらく、強く日本を感じるのであろうと
思われる。
自伝的な内容で、主人公の幼少から青年期までが
描かれている。
自分に重ね合わせながら、...続きを読む淡い心象描写や
美しい文体に惚れ惚れとする。
力強さはないが、日本文学の良いところ
がありありと感じられる、素晴らしい本だと思う。
読むべき。
Posted by ブクログ 2019年01月16日
特に前半、子供の時の感覚をそのまま文章が体現しているのに驚くほかない。
散文の形はとっていても、これは詩そのもの。映画でいうなら「ミツバチのささやき」のようなもの。
Posted by ブクログ 2023年12月11日
著者が幼少の頃の思い出が書き綴られている。本書はストーリー性、哀愁、教訓といったものを期待して読むものではなく、美しいものを鑑賞するように読むべきものである。
解説でも書かれているように、本書に描かれているのは著者が幼少の頃の視点の記憶でもなく、大人が想像した少年の視点でもない、少年の視点そのもので...続きを読むある。子供がもつ目一杯に開かれた感受性が捉えた花鳥風月の描写が美しい。主人公の繊細な気質が相俟った子供の内面の描写も美しい。
Posted by ブクログ 2022年05月12日
大人になっても捨てられない銀の匙
虚弱な赤ん坊だった彼は
それを用いて漢方薬を飲まされていた
母から聞いたその頃のエピソードをとっかかりに
幸福な少年時代が回想される
虚弱だったもんで伯母さんに甘やかされており
乱暴な男の子たちのことは憎んでいた
それで、よその遊び相手といえば専ら女の子であった
し...続きを読むかし成長するにつれ
虚弱なままでは女の子にも相手されないということに気づく
それでだんだん活発な子供へと自分を変えていった
他の男の子と喧嘩もできるようになった
ところが時は流れて奇妙なことに
いつしか女性とまともに喋ることもできない若者となっていた
そんな皮肉でこの話は終わる
Posted by ブクログ 2022年04月29日
前篇が1911(明治44)年、後篇が1913(大正2)年の作。
当時夏目漱石がいたく賞賛した作品とのこと。確かに子どもの心、子どもの世界をよくとらえており、自分とは全く違う環境・違う経験のプロセスにいるのに、読んでいるとどこか懐かしい感じに囚われるのは、やはり「子ども」の普遍を掴んでいるからだろ...続きを読むう。大人から見れば「ほほえましい」のかもしれないが、子どもは子どもで真剣に悩んだりしているものである。しかしその頃世界はまだ自分とつながっていて、全体はふんわりと包まれているような優しさだ。そんな幼年時代の、守られている幸福。
後篇でかつて長いこと可愛がってくれた叔母さんが亡くなるところが、悲しい。
文体はとても滋味があって良い。
Posted by ブクログ 2022年03月03日
導入で引き出しの中の銀の匙、というアイテムから子供時代の回想に入っていって、あとはもうひたすらに、子供時代が描かれていく。
描かれている時代に懷かしさを感じる、というわけではないのだけれど、
あぁ、こんな事に喜んでいたな、とか、ああ、こんな感じだったかもしれないな、と、自分の子供の時分にも思いを馳せ...続きを読むる。
この鮮やかさはどこにいってしまったんだろうか。ノスタルジー。開けば出会える子供時代。
Posted by ブクログ 2022年01月28日
伯母と私の物語。前編は伯母の主人公への優しさが溢れる。病気がちだったこともあり、自分の中に閉じこもりがちだった私を、上手く子供社会になじめるようにしたり、ぐずる主人公をあやす伯母の優しさがギュッと迫る。
後編は、伯母の元から離れて、別の人達と関わりをもつけれど伯母の影響がある
もう一度読みたいです
Posted by ブクログ 2021年05月01日
子どもの公文国語に銀の匙が出題されていたことがきっかけで読んだ。橋本武先生が灘中で3年かけて教えたことは有名なエピソードであるが、それだけ深みのある作品なのだろう。幼少期の男の子の成長物語が明治の子供達の状況と合わせて丁寧に描写されている。美しく郷愁を誘う文体。主人公の男の子は、少し泣きすぎで、喝を...続きを読む入れるお兄さんの気持ちもわかる。伯母さんの最後は可哀想に思った。
Posted by ブクログ 2020年04月27日
1度途中で挫折したけど
なんだか急に読みたくなって再読した。
伯母にずっとくっついていた事や、いくじがない性格が自分と似ていて共感する部分が多かった。
駄菓子を売っているじじばばが近所にいたり、
初めて学校に行く日の事を思い出し子供心を取り戻したような気持ちに。
ずっと手元に置いていたい一冊になっ...続きを読むた。
Posted by ブクログ 2020年02月04日
1935年、およそ100年くらい前に岩波文庫から出版された本です。どこでこの本の情報を手に入れたのか?もう定かではありませんが、1930年代のこの国の原風景をとても細やかに描写していて当時の日本の文化や空気に触れられた気がしました。
ちょっと繊細で弱虫な少年の幼少期の成長譚なんですが、読むほどに情景...続きを読むが浮かんでは消えて、泣き虫少年の胸の内に湧き出す喜怒哀楽がとても芳醇な描写や表現で綴られていて日本語自体の響きの柔らかさ、語彙の豊かさを感じます。
本作のように主人公が日常で感じる悲喜こもごもの心理描写を詳細に描いた物語って、読んでいてカズオイシグロ先生の「私を離さないで」を思い出しました。物語ではなく、少年期の日常エピソード集って作りです。読んでいて面白さもありますが、なんか「ほわっ」となる読後感です。
Posted by ブクログ 2020年01月04日
これは自伝なのか小説なのか。
多分小説だな。
美しい言葉選びに昔ながらの情景を容易に想像できる。子供の純粋な心情を、格好つけることなく有りのままに綴る。夏目漱石も褒めたらしいですね。
少し癖に育ったように感じる主人公であるが、出会い別れを通して逞しく育っていく未来も感じる。
ケイちゃんが可愛ら...続きを読むしかった。
Posted by ブクログ 2019年08月09日
"灘高で1年間かけて読み費やす授業"
このフレーズだけにとらわれて読みました。
昔と呼べる時代の話で、背景・文化・言葉など現代とは大きく違うものの、少年の核なる心がしっかりと存在するままでの心情的変化と成長は、懐かしくも心苦しくもあった。
この作品を題材に1年間学ぶというのを素晴...続きを読むらしいと感じた。
Posted by ブクログ 2019年06月09日
灘校の現国授業の教材としても知られる本書。中高の時期に3年かけて読み解き追体験する文学として確かに、多方面の取っ掛かりがある様に感じた。立場、環境とともに価値観がいかに移ろっていくものかというのがよく分かる。
Posted by ブクログ 2019年02月04日
作者の少年時代(特に小学生)が描かれた話。
文字が小さくて読みきるには根気のいる作品に思えるが、読み始めると、近所の女の子と遊んでいる描写や担任の先生との会話や感情表現が具体的で面白く、明治時代にスッとタイムスリップできたような臨場感を味わえる。
自分が小学生の時に遊んだ "かごめかごめ"や"あやと...続きを読むり"でこの時代の子供も遊んでいたのだと思えるのも楽しい。
また、季節の移り変わりや、昼 夕 夜の表現がとても綺麗。
随所で 花 木 鳥 月の変化が書かれており、それがくどくなく自然と時の流れを感じられる。現代の喧騒とは離れ、静かで落ち着いた気持ちで読める作品。
一章ごとが短いのも読みやすさの一つ。
山手線一駅で一章読める程なので、ながら読書にもとてもおすすめ。
Posted by ブクログ 2017年10月20日
誰もが持っている記憶の中の少年時代を、美しい文章で蘇らせてくれる一冊。何度か読み返しているが、その度に、ある種の清涼感を心に与えてくれる。
銀の匙によって呼び起こされる情景は、波の音や、炎の揺らめきのような、気持ちを落ち着かせてくれる不思議な力を持っているように感じた。
Posted by ブクログ 2022年09月12日
やっとこさ読む事が出来た。
某進学校では3年間でこの本一冊を読む授業があったとか。
とにかく日本語の表現が独特。
嫌みのない表現と言えばいいのだろうか。
物語自体はどこか物悲しさを感じさせるラストではあるが、育ての親である叔母の優しさを事細かに、思い出すように描いている。
Posted by ブクログ 2022年03月11日
主人公と叔母の話
国語の教科書にのってそうな、綺麗な表現ってかんじ。ひらがなっていいなってなる。
内容はあんまり面白くなかったかなぁ、。
恋実らずずっと泣いてたしな
Posted by ブクログ 2022年01月14日
書斎の引き出しに昔からしまってある一つの小箱。子安貝や椿の実・・・こまごましたものがいっぱい詰めてあるが、そのうちに一つの珍しい形の銀の匙のあることを、かつて忘たことはない。
病弱で臆病だった幼少期から、多感な青年に成長する日常を、細やかに描写した自伝的小説。
創作ではあるのだろうが、かなり著者の...続きを読む人生が投影されている小説なのだろう。
とくに起伏もなく、この主人公、特に幼少期はぐずぐずと泣いてばかりだし、時代的なこともあるかもしれないが、青年期の女性への態度も自意識が高すぎて、どうも好きになれない。
でも、情景描写はとても微細で、特に『お恵ちゃん』との件などは面白く読めた。
Posted by ブクログ 2020年11月29日
灘校で中学3年間をかけて『銀の匙』1冊を読みこむという授業
ということで読んだのだが正直よく分からなかった私には
きれいな日本語ということだろうなのだろうけど
昔の日本の風景ということ以外入ってこなかった
Posted by ブクログ 2020年04月26日
著者の明治初期の幼少期から青年期にかけての思い出話なんかな。
時代は違えど、身の回りにあるもので何やかんやと趣向を凝らし遊ぶさまはどの時代もおんなし。
すごくちっちゃなもん、すごくおっきなもん、全然とどかへんもん、行ったことないとこ、子供はいろんな角度で世界を見つめ遊びを発掘するんやと、感心するし、...続きを読む自分もそうやったのに、どんだけ平べったくなってしもたんやとおちこむ。
ただまだ、ちょっとは感じれて、時々「ふふっ」と笑える。
Posted by ブクログ 2019年02月10日
一章ごとが短いのでとても読みやすい。
ただ、使われる表現や、内容が今と違うためストンと心に落ちにくい。
落ちにくいけど、スラスラと読める。そんな作品。
私にもう少し想像力があればもう少し楽しめたのかもしれない…残念…
Posted by ブクログ 2019年05月17日
四季折々の描写が美しくて心が洗われました。なんとなく、春はあけぼの…の枕草子を思い出した。子供の目を通して見る世界は色鮮やかで驚きに満ちていて、一日一日が輝いていた。もうほとんど忘れてしまったけど、確かに自分もこんな世界で生きていた…と、しみじみ読みました。
病弱で、あかんたれで、感受性豊かすぎる主...続きを読む人公を、優しく見守る叔母さんの愛情に心打たれた。また、お国さん、お蕙ちゃん、友達の姉様という3人の女の子たちに対する淡い恋心のような描写も微笑ましくてよかった。
特に何が起こるわけでもなく、少年の日を淡々とつづった物語ですが、日本語の美しさを堪能できる一冊でした。