中勘助のレビュー一覧

  • 銀の匙

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    古い木箱から見つけた銀の匙をきっかけに、幼い頃の記憶が語られる。
    子どものころの世界の見え方、考え方が、大人が思い出しながら話すそれとは違い、本当に子ども心に語られているよう。
    前に読んだ『センス・オブ・ワンダー』に近い印象を持った。
    子どものころには、子どもにしか感じられない世界がある。
    周りのものに一々感動したり、悲しんだり、驚いたり。
    大人になるにつれ、色々なものを知る中で、そうした感動は薄れていく。
    私は息子と度々山登りをするが、いかに大人の私とは見ているものが違うかを実感する。
    変わった形の枝、街では見かけない虫。
    そうしたものに逐一足を止め、「パパ見て!」と呼ぶ。
    大人であっても、

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    2025年07月29日
  • 銀の匙

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    「銀の匙」は、以前からいつかは読みたいと思っていた作品です。しかし、他に読みたい現代小説がたくさんあって、なかなか手にすることはありませんでした。ところが、教育学者の齋藤孝さんが書かれた本に、読むべき名著として「銀の匙」が推薦されていたことから、背中を押されたように、この度ようやくこの作品を手にして、時代や環境は違うけれど、自分の子供の頃を思い出すような優しい世界に浸ることが出来ました。

    「銀の匙」は、岩波文庫、新潮文庫、角川文庫などから出版されていますが、調べたところ、本書は巻末ではなく同じページに注釈が書かれており、何より画家「安野光雅」さんの挿絵も描かれているということで、いちばん読み

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    2025年05月23日
  • 銀の匙

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    120年前ほど前の東京で暮らしていた筆者が子供の頃に経験したことなどを日記風にまとめたもの。
    やや癇癪持ちであった子供の頃の筆者と、その面倒を見てくれた伯母さんとのやり取りが主軸に据えられていて、筆者が成長して伯母さんが亡くなったあたりまでが書かれる。
    当時の物事が子供目線でかつ細かに書かれていて、解像度が高く面白かった。

    話に出てくる筆者の家は文京区の小日向辺りのにあったようだ。あの住宅しかない地域が自然に溢れていた時期に書かれていることもあり、少しギャップを感じた。
    小高い台地の上にやたらでかい家が多く建っている印象だったのだが、当時の区画がそのまま今まで残っているのかもななども思った。

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    2025年04月13日
  • 銀の匙

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    読んでいる間、幸福な時間でした。

    春夏秋冬の一場面を映し出す、芸術的な日本語。
    息を飲む表現の数々に酔いしれました。

    静かな空間、想像力と集中力を用意して読む本。
    小説というより芸術作品、映像、絵画を見る感覚に近い。

    唯一無二の日本文学、一番好きな本のひとつ。

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    2024年08月29日
  • 銀の匙

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    前篇で特におもしろかったのは「お蕙ちゃん」との顛末で、後篇では伯母との再会や、友人の「姉様」との経緯が心惹かれた。

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    2024年05月18日
  • 銀の匙

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    幼少期から思春期までよくこんな細密な描写ができるなと感嘆ばかり。内容は、子供の遊びひとつとっても、現代と比べなんと豊かなことか。まだまだ自然とたくさん接点のあった時代かな。

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    2024年04月17日
  • 銀の匙

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    病弱で祖母にかじりつきの中勘助の幼少期から青年までの自伝的エッセイということになるのかな。

    本当に小さな頃からの話を事細かに、その時の自身の気持ちを主軸に書かれているんだが、それがすごいのなんの。
    記憶をその時その時にわけて真空パックにでもしているのかというほどありありと書かれてらっしゃる。

    ずっとただの日常の話なんだけど人間味というか生活感というか…それが溢れていてとても好きな1冊になりました。

    解説にも書かれてたことになりますが、他の作家の影響がなく世界観が無二だそうで、なるほど新鮮に読めた気がしたのもあながち間違いではなかったかと思いました。

    そういう事なのでもしかしたら好き嫌い

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    2023年11月17日
  • 銀の匙

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    ただ、起承転結なストーリーではなく、少年の日常がかかれてるだけですが、惹き込まれていきました!心理描写、情景描写を綺麗に表現されてて、ずっと読んでいたい気持ちにさせられました。

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    2023年10月22日
  • 銀の匙

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    ネタバレ

    記憶力の化け物か感受性の化け物かその両方っていう本。

    27歳の成人がこれだけ細かい描写で子供の心情を語れるというのが凄まじい。




    p. 153あはれな人よ。なにかの縁あつて地獄の道づれとなつたこの人を 兄さん と呼ぶやうに、子供の憧憬が空をめぐる冷たい石を お星さん と呼ぶのがそんなに悪いことであつたらうか。

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    2023年10月02日
  • 銀の匙

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     美しすぎる日本語。
     主人公が子供の頃から大切にしている小箱。

    (抜粋)
    なにもとりたてて美しいのではないけれど、木の色合いがくすんで手ざわりの柔らかいこと、ふたをするとき ぱん とふっくらした音のすることなどのために今でもお気に入りのもののひとつになっている。なかには子安貝や、椿の実や小さいときの玩びであったこまごましたものがいっぱいつめてあるが、そのうちにひとつ珍しい形の銀の小匙のあることをかつて忘れたことはない。

     主人公の宝物ばかりをしまった小箱の中にある“銀の匙“。そこから、小さい頃、病弱であった自分を母親代わりに大切に育ててくれた叔母さんの思い出、繊細な“私“が見てきたもの、

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    2023年09月18日
  • 銀の匙

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    美しい日本語に触れられる作品。「一つの表現に感動する」という体験が出来る。女の子との友情が芽生えていく様子を、牡丹のつぼみのほころびに例えた文章が、美し過ぎて、個人的に忘れられない。

    明治時代の主人公の幼少期の何気ない日常の一コマ一コマなんだけど、時代を超えて現代にも通ずる懐かしさをも感じた。読み継がれる理由が分かる。

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    2023年03月26日
  • 銀の匙

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    何が起こると言うわけでもなく、確かに変化していく少年の日々が描かれている。
    流れる水を見ているようにぼんやり読んだ。

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    2022年01月10日
  • 銀の匙

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    読み始めると読み耽ってしまう幼少期の細かく綺麗な心理描写。
    いま咲くばかり薫をふくんでふくらんでる牡丹の蕾がこそぐるほどの蝶の羽風にさえほころびるように、ふたりの友情はやがてうちとけてむつびあうようになった。

    私はまた唱歌が大好きだった。これも兄のいる時には歌うことを許されなかったのでその留守のまをぬすんでは、ことに晴れた夜など澄みわたる月の面をじっと見つめながら静な静な歌をうたうといつか涙が瞼にたまって月からちかちかと後光がさしはじめる。

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    2021年09月12日
  • 銀の匙

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    子供の頃の思い出を子供そのままの瑞々しい感性で綴った私小説。病弱な幼少時代の前編と就学後の後編からなるが、いずれも人見知りで感受性豊かな筆者の体験は何処か懐かしい。毎年読み返すたびに「すべてのものはみな若く楽しくいきいきとして、憎むべきものはひとつもない。」そんな風景が当たり前であった過去を思い出し、大人になって失ったものの大きさを振り返る。

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    2021年08月28日
  • 銀の匙

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    この世界観が大好きで何度も読み返す。

    昭和をまったく知らない世代にはなかなか想像し難いかもしれないけれど、こんなふうに育てられた子供が豊かな情緒をもち、味のある大人になるのだなと思う。

    このような幼少期を過ごしたからこそ、『蜜蜂』他数々の名随筆が生まれたのだと思うと、中勘助を育ててくれた伯母さんに感謝、感謝。。

    日常の描写
    微笑ましい光景

    幼き日の中勘助が可愛くて可愛くて。。

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    2020年10月07日
  • 銀の匙

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    2020.7.22
    体が弱いことからこの時代にしては甘やかされて(実際にしょっちゅうお菓子やらおもちゃやらを買ってもらえているのでそれなりにお金がある家と思われる)育ったのに、そんなに傲慢にならず感受性豊かに育った主人公の話。
    前半は子どものころ面倒を見てくれた伯母とのやりとりがほとんどだが、文体が流麗で景色がありありと浮かぶ。現代語訳ではないけれど昔すぎないのでよく読めば意味は十分わかる。当時の流行り物やかけあいもおもしろく笑ってしまうところも多々あり、原文だからこそ伝わるものもあると思った。
    日清戦争あたりの描写や「兄」に代表される、画一的でダイバーシティを良しとしない、「戦時下の日本

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    2020年07月22日
  • 銀の匙

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    銀の匙は中勘助が書いた小説。中勘助の自伝的小説だそうだ。
    明治43年に前編が執筆され後編は大正2年1913年に執筆された。
    文章が美しく、当時をしらない自分にも郷愁を抱かせる描写がすばらしい。

    東京の神田で生まれた主人公は、やがて緑豊かな小石川に引っ越す。
    その土地でであった子どもたちとの交流や、自然描写、淡い恋心などが綴られていく。
    病弱だった主人公が、世界を見る視点は、生き生きとしていて驚きや恐怖に満ちている。

    小学校に上がってしばらくすると、主人公は勉強に追いつかず、苦労して遅れを取り戻す。
    体が大きくなり、ガキ大将となる。
    やがて近所に越してきたおけいちゃんという女の子と親しくなり

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    2020年05月22日
  • 銀の匙

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    素晴らしかった。大正時代の終わりに書かれた本。知ってはいましたが初めて読みました。日本語が美しい。描写が沁みる。描かれている世界に心温まる…現代と比べてなんと豊かな世界が広がっているのだろうと、胸が詰まりました。”美しい国”とはこういうことを言うのですよ、偽造、捏造しか術のない醜い安倍晋三さんとその一派の皆さん。

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    2018年10月22日
  • 銀の匙

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    もうこれは私にとって忘れられない、何度も読み返したい1冊になりました。幼少期の話が好きだけど、青年期〜終盤にかけてのなんとも言えない、胸を締めつける切ない感じもよい。
    川上弘美の解説含め、心に残る作品。

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    2025年12月02日
  • 銀の匙

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    文学として素晴らしい。
    昔の日本の暮らしや幸せを描きつつ、今と変わらない部分も感じられる。おばさんの子煩悩さに頭が下がる思いがした。

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    2024年10月23日