ギ・ド・モーパッサンのレビュー一覧
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自ら人生を切り開いて自由に生きている人間なんて、本当にいるのでしょうか。ほとんどの(本当はすべてと言いたいところですが…それは断定できないので)人間は、周りの環境や他人の影響によって、常に影響され、流されながら生きているのではないでしょうか。
だからと言って、人生というものがなんてつまらないのだろう、とか、生きる意味なんてないのではないか、と言いたいのでありません。おそらくモーパッサンも、この長編小説を書きながら、彼自身はたいへんなペシミストではあると思いますが、人生の意味や、自分の中にある生きたいという気持ちの理由を見つけようとしていたのではないかと感じるのです。
僕はむしろ、人生のそう -
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昔、更生用の動画(私が更生の対象だった訳ではない)に被害に遭った女性がどれだけ深刻な状態にあるかを理解させるようなシーンがあった。そこでの女性の一言に「彼らは女性を肉の塊としか見ていない!」。それを見ていた学生が噴き出してしまい、動画の意に反しそれから暫く「肉の塊」というワードが流行っていた。ユーモアには知性が必要だが、シリアスにも知性や品性が必要だった。
で、本書は短編集で、上記を思い出したのは「脂肪の塊」というタイトルがきっかけ。調べると、おデブちゃんくらいのニュアンス。このおデブちゃんはプリティな娼婦だが、プロイセンの士官に身体を求められる。それに応じなければ、前には進めないよ、という -
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あまり人生をつんでいないからわからないけど、人生ってこんなものだよな。
ジャンヌの描写が、時を経るにつれて、すぐ数年後とかになって時間的な解像度が減ったり、過去を振り返るシーンが増えていったり、またジャンヌの目に映る景色や日常の風景も暗く薄いものとなっていくのが印象的だった。逆に、前半部分の無垢なジャンヌが人間の悪意や俗っぽさに触れていくにつれて失望していくシーンが読んでて辛くなったりすることもあったが、逆に自分がこの先こういった体験をしていくのかなとも思った。
一般的に歳をとると人間は錆びついてきて、空虚な日々を過ごすのだなということは分かっていたが、そういった認識に現実感を与えてくれるよう -
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学校卒業からの、夢の人生の始まり、自分の人生の始まり、と思いきや、あっけなく出会い結婚、人生に翻弄される貴族女性の話。
原初のタイトルは Une vieということ。
本当にいろいろ起きて、場面によって喜劇であり悲劇。
主人公の女性の周りにもさまざまな登場人物がいて、その女性はそのうちの一つの生き方、そのような一つの人生についての視点として読めるのかなと思う。
多分楽しんでいるときもあるけど、割と一貫して悲劇が印象的。女性を翻弄する人間関係とは対照的に、自然や情景の描写は、読者にも少し安らぎを与える。
解釈によって人生は悲劇になり喜劇になり、重要なのはその人自身の解釈なのではないかと。 -
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この著作を端的に表すなら、独身の人が周りの人からなんで結婚しないの?って聞かれてうざいなと思ったら「結婚したって『女の一生』みたいになるだけだから。」と答えてもいいくらいの、暗い作品。最後のオチだって、一応絶望エンドではないけれども、いい方向に向かうのかこれ…?と疑問に思わざるを得ないような終わり方だ。
最初の段階で、両親(特に父親)に純粋純潔に育てられて修道院を出たお嬢様、という描写でもう悪い予感しか無いと思ったが事実そのとおりに。
だが皮肉にも、主人公の状況がひたすら暗いほうに転がっていくに従って話の内容としては面白くなっていくと個人的には思う。この当時では女の人生なんて生まれた家と配偶者 -
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ネタバレ積ん読になってて、映画化されたので、読もうと思った。
どちらかというと★2つ寄り。
女の一生じゃない。原題とは異なる。
寄宿学校を出てから、40代半ばまでのジャンヌの話。
結婚とは何なのか。
出会ってすぐに恋に落ち、瞬く間に結婚。
何の知識もなく、初夜で失望。
夫の不倫。
この夫は酷いな。最後はざまあって思ったけど。
あの転がるところの描写は凄惨さが伝わる。一番印象に残った。
子供への甘やかし。過干渉。親を利用する大人の出来上がり。
子育ての失敗が跳ね返ってくる。
不幸なジャンヌ。
夫については同情したけど、子供についてはそりゃあ仕方ないなと思えた。明らかに甘やかしだもの。
生き -
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田舎出のデュロアは元アフリカの騎兵隊下士官だったが、一旗挙げようと軍隊を辞めフランスに。しかし鉄道会社勤めでお金がなく、日々を窮していた。ある日、アフリカでの騎兵隊仲間だった新聞記者フォレストに会い、チャンスをつかむ。人一倍ハンサムなディロアは、フォレスト家に集まる上流社会の女性達に愛されて、その助けを受けながらチャンスを広げてゆく。愛と資産と名誉を求め、次々と成功の階段を上ってゆく。そのたびに女性の愛を裏切り、別の愛に求め、移ってゆく。//愛人たちとそれらの夫とデュロアの関係がとても面白い。新聞業界やフランスの上流社会のモラルと倫理のなさがリアルに描かれていて興味深い。でも、物語としては面白