沢村貞子のレビュー一覧

  • わたしの献立日記

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    食はその人の生き様を表す。堂々26年間の記録は、1日たりとて食を疎かににしなかった歴史であり、その豊かさに驚かされた。特に、献立一口メモのレシピは生活の知恵の報告だ。凛とした著者の姿と重なった。

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    2026年04月28日
  • わたしの献立日記

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    大変失礼ながら女優としての沢村貞子さんをわたしは知らない
    黒柳徹子さんのエッセイ(オススメです!!)で愛する夫のために献立を考えていた、料理上手だったと記されていたから興味が湧き…

    明治生まれで戦前・戦後を生き抜き、女優として活躍された作者さまだけれど
    台所仕事にたつ作者さまは、季節を感じ、自分と夫の身体や好みを考える愛あふれる品の良い女性

    作中にある献立をみると
    気温やお天気まで記されているし、アプリなんて存在しない時代におやつに至るまで記されていて…あ〜なんて素敵な感性✨

    時代は違うけれど、物価高に嘆かれていて、遠い存在の方なのに、身近に感じてしまった

    素朴で愛らしい、安野光雅さんの表紙カバーも沢村貞子さんの人柄をあらわしている
    素敵

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    2025年10月31日
  • わたしの献立日記

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    ほぼ、日々の献立が書いてある。
    小話が少し。
    丁寧な日々の献立。のり、とかかまぼことか、あぁそれだけでも一品か。むしろ品が良い感じがするなとか、この料理はどんな料理だろう。とか、作ってみようかな、とか。
    昭和の時代はこういうのを多く食べていたんだなとか、天気や、気温・・
    几帳面に綴られる確かな情報?で、想像が掻き立てられます。
    健康的な献立。
    時代(それとも沢村貞子さんのお宅だけ?)の空気感が感じられるのがいい。
    料理が出てくる本と、昭和が好きな私(平成生まれ)にぴったりでした。
    今で言う丁寧な暮らし、昔の人は自然にしていたのかな。

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    2025年05月18日
  • わたしの台所

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    女優の沢村貞子さんの73歳頃のエッセイ。
    疲れた体で家事をする時も美容体操と思えば楽しい
    ものよ、と。
    毎食事の献立をかいたノートも18冊。
    毎日を丁寧に生きた下町の真面目でおちゃめな女性。
    見習いたいです。

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    2025年02月02日
  • わたしの台所

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    一人暮らしを始めてからというもの、生活が疎かになりがちだ。
    朝から夜まで働いていると、生活の質にまで気を配る余裕は失われていくし、不便も不健康も不愉快も、自分一人さえ諦めてしまえば、問題になることはない。

    だけど、そんな私も手間暇をかけて作った出来立ての料理を、ゆっくり味わって食べる時間には確かな価値を見出している。
    健康にいいとか、美容にいいとか、そういうことではないのだ。
    身体の内側がぽっと温かくなり、その熱がみるみる手足の指先まで伝わって、全身が綻んでいくあの感覚。
    コンビニ弁当や冷えた惣菜の温め直しばかり食べていたのでは、決して満たされることのない何かが確かにある。

    著者は、自分自身の手で心地よい生活をつくれる人だ。つまり、他人に惑わされることなく、自分自身の快・不快を理解して調整できる優れた人だ。
    読み終えた作品の多くは手放してしまう中で、この作品は本棚にずっと立て掛けてある。挫けそうになったとき、手間を惜しむことで失われる確かな価値の存在に気づくことができるように。
    忘れたくないのだ。私が本当に愛しているのは、仕事じゃなくて生活だ、ということを。

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    2024年07月10日
  • わたしの台所

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    数年前に購入した本ですが、読み始めてピンと来なくて積読になっていました。でもこの冬読み出して、時代や若い人と自分の乖離について描かれた部分に共感し、ぐんぐん読み進めることが出来たのは、良いことなのか寂しいことなのか…(苦笑)
    元々料理の描写が大好きであるから、この本が気に入らないわけはなく、五目豆や糠漬けなど、できそうなものはやってみよう、と誓った新春でした。

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    2024年01月02日
  • わたしの献立日記

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    衣食住に関することがどんどん便利に手軽になっていく時代だからこそ手間暇かけて、それすら楽しんで自分のこだわりを確立できたらいいなとこの本を読んで思った。

    本の中に出てきた梅酢がとても美味しそうだった

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    2023年02月04日
  • わたしの台所

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    人生を上手に生きてく為の手引きのような一冊。
    お料理の心得、身だしなみを整える心得、人付き合いの心得、休むこと、歳をとるということ、一所懸命幸せを掴むこと。
    いつの時代も「これだから若い人は……」って言われるてるのがおかしかった笑。
    とてもおすすめ。

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    2023年01月19日
  • わたしの献立日記

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    食の大切さ。食卓の大切さがしみじみ感じる一冊。
    「住むところはこぎれいなら結構。着るものはこざっぱりしていれば、それで満足。(中略)いわばごく普通のつつましい暮らしをしている。ただ─食物だけは、多少ぜいたくをさせてもらっている。」

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    2023年01月14日
  • わたしの茶の間 新装版

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    沢村さんや、そのお母さんたちがいまの世界を見たら、卒倒ものだろうな…
    拍車がかかった大量生産に大量消費。人情の欠けらもない冷たい人々。
    昔はよかった…じゃないけど、もう少し温かみが戻ってきたらいいのになと思う。
    わたしも沢村さんやお母さまのように、日々の幸せといっしょに暮らしている人への心遣い、持ちすぎないように生きていこう。
    この本を読みながら、とりあえずは本棚の整理をして、蔵書をかなり減らした。
    滞留させずに回していこう。

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    2022年10月06日
  • わたしの台所

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    懐古主義になってしまうんだろうか、
    でも、沢村さんみたいな考えで生きる人が増えれば、世界はもっと温かい場所になる気がする。

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    2022年08月05日
  • 貝のうた

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     沢村貞子(1908~1996)「貝のうた」、1969.11刊行、1983文庫化、2014.3再刊。半生記です。昭6年今村氏と結婚し、昭7年、共産青年同盟の一員(赤)として特高に逮捕され、留置所29日間を2回、起訴され護送車で刑務所に。23歳の初夏から24歳の春まで政治犯として10ヶ月、独房で過ごしたそうです。反省文(上申書)を書いて半月後保釈されたとか。府立第一高女の受験番号は136、服の襟に書かれた番号は135、一生この二つの番号を忘れないと。受験番号を記憶していたとは・・・、すごい記憶力ですね!

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    2021年06月12日
  • わたしの献立日記

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    「おいしいものとまずいものーー 人によって好みは違うが、口に入れた食物の値打ちを決めるのは、それぞれの味蕾だという」

    食物の価値や美味しいかどうか、どれだけお金を掛けるか、そんなのは人それぞれ。感覚が合えば同調すればいいし、合わなければわざわざ否定する必要もなく、無視すれば良い。

    沢村さんのこだわりの(決して高級品ばかりでない)献立が見られます。ゴールデンウィークに良い本を読むことができました。

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    2021年05月06日
  • わたしの献立日記

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    明治生まれの名女優の献立日記。鰹節削ってお出汁をとる…、ほかの女優さんが揚げ物は台所が汚れるから作らないと言ったのを、使わない台所なんてねえ、と思う貞子さん。
    全てが素敵でため息ものだった。
    出てくる料理で、食べてみたいのは、色々あるが、特に食べたいのは…うにと玉子を根気よく煎り上げて作ったものを混ぜた御飯…。

    日本の芯のある一度決めたことはやり通す凛とした女性の姿はこれから何年も先に私の、
    この本を読んだ人々の心にに永遠に刻まれることだろう。
    到底真似は出来ないが、見習いたいと強く思った。

    途中、黒柳徹子さんの著書「トットひとり」の沢村さんの章を再読、号泣。

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    2021年01月06日
  • わたしのおせっかい談義 新装版

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    ネタバレ

    ご本人は「自分には華がない」、脇役人生と仰ってますが、なかなかどうしてと思いますw。沢村貞子さん(1908~1996)「わたしのおせっかい談義」、1986年刊行、2017年新装版文庫。読みやすくて小気味よいエッセイ、もうお亡くなりになりましたが、ファンになりました!野次馬根性(何にでも興味を持つ)は大事。そして、クモの巣など何にでも感心してしまう感心魔。惚れ惚れします(^-^) 台所の後始末をするのは、次に美味しいもの作るための準備、着物もちゃんと後始末して手入れしてこそ着物を着る楽しみがある。出船の精神、大切ですね! なお、弟さんは加東大介氏(1911~1975、享年64)早逝でした。
     沢村貞子さん(1908~1996)のお人柄がわかるとても楽しいエッセイ。「わたしのおせっかい談義」、2017.9発行。野次馬根性、感心魔、時間厳守だそうです。献立日記は昭和41年から、今26冊。台所に包丁15本、まな板4枚。

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    2020年12月02日
  • わたしの茶の間 新装版

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    大好きな作家さんの文庫が
    新装版で出た時は
    再読(再再読)のチャンスですよね

    沢村貞子さんのエッセイを読んだあとに
    「男はつらいよ」を楽しむ
    寅さんの科白を堪能したあとに
    お貞さんのエッセイを楽しむ

    どちらも 極上の一日に
    してもらえます

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    2020年05月09日
  • わたしの献立日記

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    新潮文庫版で読みました。人の家の本当の毎日の献立なんて、実際はなかなか見ることができないものだけど、飾らない性格の沢村貞子さんだからこそ、また、毎日のお料理を大事にされていてそのままでも素晴らしい献立たちだからこそ、読んでいるだけで楽しかったです。料理が苦手だけど、いつかこんな風に食事と向き合えたらいいなーと思い、最近刊行された飯島奈美さんが再現されたレシピ集も買いたくなっています。

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    2020年04月17日
  • わたしの台所

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    日常を押し付けない優しさとユーモアで彩る。がっつかない生活は季節という移ろう時間に身をまかせる言葉で綴られていく。"便利" とは距離を置いたところに "喜び" や "楽しさ" は佇んでいるのではないだろうか。そんなにあくせくせずとも時間は未来へと確実に歩んでいる。その瞬間を興じる事が生きている実感であろう。大切な時間を焦って見過ごしてませんか、勿体ない、これも貧乏性かしらん。

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    2020年02月12日
  • わたしの献立日記

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    普段ぬか漬けをまったく食べないのだけれど、沢村さんの本を読むときれいな青い茄子やパリンとした小かぶのぬか漬けがすごく食べたくなる。

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    2019年08月19日
  • わたしの台所

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    ネタバレ

    い図。トットちゃん!をみて以来、沢村さんの著作が気になって。朝起きて夕飯の献立を考えるのが日課だなんて、食事は大好きだけれど、食事を大切にしようという気持ちはその日その時でまちまちの自分には、すごいなぁと思えた。天ぷらの話が一番好き。夏の夕方の風がそよぐ台所で、サクサクの天ぷらをご主人が気持ちよさそうにほおばる様子を、沢村さんも微笑んで見つつてんぷらを上品に食べていられる様子が、その温かい爽やかな空気が、眼に浮かぶよう。里帰りが終わったら、おチビもいるけどてんぷら揚げたいものだ。2018/2/13
    ◆引用
    p18…そう言われてみれば、家事は私にとって、ちょうどいい運動になっているのかも知れない。(中略)家の中で母に仕込まれた掃除、洗濯、水仕事は、いっこう苦にならなかった。はげしい運動は出来なかったけれど、こまめに身体を動かすことは、辛いどころか気持がい、ということを、小さい時から知っていた。
    おかげで、いまだに腰が軽い。雨戸をあける途中で、桟にホコリが溜っている、と気がっけば、すぐ台所へかけ出して雑巾バケツをもってくる。ついでに桟おとしの小さい穴のホコリをピンセットでつまみ出す。(中略)病気らしい病気をしないで今日までなんとか働いていられるのは、多分そのせいかも知れない。〈家事こそ、私の美容体操〉ハッキリそう思うようになってからは、家の中の仕事が、前よりもっと楽しくなった「美容、美容,美容」口の中で三度唱えれば、たちまち身体が動くからおもしろい。

    →これ、いい。やってみよう。

    p91…大ぜいの人にまじって仕事をすれば、とかく心にしこりが出来やすい。そんなとき、帰るとすぐ着物をきかえ、タスキ前かけ姿で台所に立つ。庖丁を握るのは私の気晴らしのひとつである。

    p146…夏まけには……
    額に汗の吹きでるような真夏の夕方、うちではよくてんぷらを揚げる。
    ぬるめのお風呂でサッパリ身体を洗ったあと、気軽な浴衣がけで揚げたての車えびやきすなど口にしたときのしあわせ……一日の疲れがスッととれるような気がする、と家人は機嫌がいい。魚ばかりとはかぎらない。あり合わせの野菜——さつま芋、にんじん、ごぼう、青紫蘇、茄子にピーマン、新しょうがなど、いろとりどりの精進揚げも喜ばれる。
    (中略)油は市販のてんぷら油にゴマ油をまぜている。好みやその日の材料にもよるけれど、三分の一から四分の一ほど合わせると、味も香りもいいような気がする。油の量は五人分でカップ二杯半——それより少ないとうまく揚がらない。てんぷら鍋がなければ、中華鍋でもフライパンでもいいけれど、なるべく厚手のものがいい。
    大切なのは油の温度である。煙が出るほど熱くしてはいけない。百五十度から百八十度ぐらいが適温とされているが、温度計で計ってもいられない。(中略)豆粒ほどのころもを菜箸の先きにつけて落とす方が分りやすい。すぐにきつね色に変ってパッと拡がるようでは熱すぎるし、そのままスーッと底の方へ沈むようではぬるすぎる。半分ほど沈みかけて、すぐ浮きあがるくらいが丁度いいようである。
    ころもはなるべく薄くすること。(中略)透きとおって中味がホンノリ見えるくらいの方が、軽くて口あたりがよく,たくさん食べられる。
    材料の魚や野菜は形よく食べやすく切って用意しておく。その前に、玉子1個をボールに割り、二、三倍(揚げる量によって)の水でよくといて、冷蔵庫で冷やしておく。冷たい水でといたころもは、軽く揚がる。
    いざ揚げるときにその玉子水を三分の一ほど他のボールにとりわけ、その中へ薄力粉を篩(ふるい)でふりいれ、箸の先きで十という字を五度描く——つまり、それほど荒っぽいまぜ方をするということである。白い粉が残っていてもかまわない。どっちみち油で揚げるのだから。粉の量はなんとか材料をくるんで、流れ落ちない程度がいい。ころもを一度にまぜておくとネバリが出てしまう。面倒でも冷蔵庫の玉子水は三、四回ぐらいにわけて使うと、あんまり失敗しない。
    材料の魚をきれいな布巾にのせて丁寧に水気をとり、薄いころもをまとわせて、鍋のフチからそっとすべりこませ,箸で中央へ送り出す。一つか二つずつ、油の中でゆうゆうと泳がせる気持である。素人のかなしさ、何だか油がもったいないような気がして、あとからあとから鍋を満員にしたら、
    たちまち油の温度がさがり、グシャッとした出来損ないばかりで困ったことがあった。
    といって、泳がしすぎ、揚げすぎると味もそっけもない干物のてんぷらになる。えびや白身の魚は、鍋のフチから入れて、真中までおくり出したら、もう揚がったと思え、と腕のいい板前さんが教えてくれた。たしかに、そのくらいの気持で、ころもの色によく気をつけて、一つ揚げたらまた一つ、と手順よく鍋におくりこめば、素人にしてはマアマアのてんぷらが出来上る。冷凍のえびもなかなか美味しい。
    (揚げながら、鍋の中に散ったころもの屑を網杓子でこまめにすくえば仕上りもきれいだし、揚げだまはまたの日に、うどんの汁や味噌汁に一つまみ入れたり、ほうれん草や小松菜とうす味で煮びたしにしたり、けっこう役に立つ)
    かき揚げも、ときには気が変って歓迎される。貝柱とみつ葉、芝えびとさつま芋、いかとねぎなどそれぞれ合性のいいものを、同じくらいの大きさに切って、まぜ合わせて揚げる。手近かの玉ねぎと桜えびも、パリッと揚げれば、洒落たおそうざいになる。
    かき揚げのときの油の温度は、てんぷらの時よりほんのすこし高めの方がうまくゆくようである。薄いころもをつなぎにして、一個分ずつたま杓子で鍋のすみから静かに入れ、菜箸でまわりのかたちをととのえながら真中へおくり出し、まわりが固まったらすぐ裏返して油の温度をすこしさげ、網杓子でおさえながらまわりを折るか、それともところどころ箸の先きで、小さい穴をあけると、火がよく通って、カラッと揚がる。たきたての丼ご飯にのせて天つゆをかければ、手軽な天丼が出来上る。
    天つゆ——てんぷらのつけ汁は、たっぷりの鰹節でとっただしカップ1杯につき、醬油とみりん、それぞれカップ四分の一をあわせて煮たたせる。大根おろしやすりしょうがを添えるのが普通だけれど、精進揚げは生醬油と大根おろしだけの方がサッパリするという人もいる。えびや魚など、塩とレモンで食べるのもいい。
    家庭のてんぷらは、毎日するわけではないから油を上手にもたせなくてはならない。揚げ終って火を消したら、すぐにたま杓子で油こし器にすこしずつすくいとり、キッチリ蓋をしめる。さめるまで放っておくと空気中で変質してしまうが、こうして熱いうちに始末しておけば、次に使うとき、半分から三分の一ほど新しい油を足せばいい。いためものには、そのまま用いる方が美味しいし、じゃが芋や茄子のから揚げ、トンカツ、コロッケの肉料理には、五度も六度もくり返し使える。わが家では二つの油こし器に、一度か二度使ったものと、何べんも用いたものをそれぞれ別に保存している。よくよく疲れたと思う油は、庭の隅の土に少しずつ沁み込ませている。下水に流さない方がいいような気がするけれ
    ど、どうかしら。
    それにしてもてんぷらはたしかにむずかしい。素人がどう工夫してみても有名店のようにはゆかない。けれど、好きなときに、誰に遠慮もない気軽な格好で、安直に揚げたてが食べられるところに、素人てんぷらの値打ちがある。多少のことは我慢しなければ......。
    食べる人が、「うん、うまい、この頃上手になったね」などと一言やさしくいたわってくれれば、作る人は、この次はもっとうまく、などといじらしい気持になり、面倒なことも忘れてしまう。料理好きは他愛がない。まあお互いにおだてたり、自慢をしたりしながら、せいぜいてんぷらを揚げて、今年も夏まけを防ぐことに致しましょう。

    p260…「さあさあ、もう勉強はそのくらいにして,台所を手伝って頂戴な、太郎も花子も。これは頭もやすまるし、丁度いい運動にもなるのだからね」
    お母さん方、どうぞそうおっしゃって下さいな。
    そういうふうに育てられた子供さんたちは、大人になって家庭をもっても、サッサと二人で料理をこしらえて、セッセとお互いの仕事に打ちこんで、人間らしく明るい暮しが出来るだろう、と私は思うのだけれど……どうかしら。

    →好き。

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    2018年02月13日