安達誠司のレビュー一覧
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大統領選後に緊急出版という趣で書いたものと思われ、日本語がこなれていないところもあるが、そこは気にしないでさくさく読み進めたい。
「~だったと思うので」とか「何かのドキュメンタリーで~」といったあたりは、編集者が確認してあげれば良いのにな、と思ったりしたが。
ほぼ二年前の本になるが、概ね筆者の予想していたとおりに事態は推移している。
トランプの経済政策は、レーガンのそれと同一視すると状況を見誤るだろうこと、経済政策と安全保障政策が一体化していること、主敵は中国であること。
想定外だったのは、2018年末の今に至っても、FRBは引き締め路線を続けていること、というより続けられるほどに経済環境も良く、マーケットも調整ははさみつつも「トランプ・ラリー」が続いている点か。
淡々と利上げを続けるパウエルFRB議長については、そもそも彼が指名される前の書なので記載はない。
しかし、トランプの経済政策が効果を上げるには、FRBが利上げ路線を放棄しなければならないとの指摘とその論拠は、現在のトランプによるパウエルへの口撃の背景を知るのに有用である。
ただ、著者はFTPL(物価の財政理論)なる論を紹介しながら進めているが、トランプのツイートなどを読むに、実際はもっと単純に適切な経済成長率をどこに見るかの差異を巡る衝突のような気もする。
具体的には、リーマンショック以前の3%弱あたりを見るのか、Make America Great Againなのだからと3%台後半、欲を言えば4%あたりまで期待するのか。
FRBは前者の立場で、足下4%台に達した今のアメリカの経済成長率は、放っておけばインフレが加速して然るべき状況なのだから今利上げしなくてどうする、となる一方、トランプからすると減税・インフラ投資でこちらが頑張っているのだから足を引っ張るな、と。
証券会社のエコノミストでありながら、市場の動きを国際政治の舞台での覇権争いと絡めて語ることができる人は意外と少ない。
直近10年とか15年くらいの動きは、まだ歴史化されていないことも多く、評価・切り口が固まっていないものも含めて、説得力のある解説に感嘆。
世界のアカデミズムの論文にも、市場にも精通している稀有な方と思う。 -
Posted by ブクログ
中国のバブルは いつからはじまり、いつ頃に崩壊したのか?
バブルとは そもそも なにか?
アメリカのバブル
日本のバブル
アメリカのITバブル
そして、現在 中国のバブル。
バトンは 次は 誰に受け継がれるのか?
『資源国の不動産』オーストラリア、カナダ、ノルウェー。
バブルとは、『常識的な水準を超えた上昇』のこと。
では 『常識的な水準』とは?
PER。
上場株式の時価総額を名目GDPでわる。→バフェット指標
BRICS とは、誰がいったのか?
Brazil, Russia, India, China, and South Africa
投資銀行 ゴールドマンサックスのエコノミスト
ジムオニールが 2001年にいうことで広まった。
中国人 一人当たりのGDP が 9000ドルとなっている。
これから、更に伸びるのか?落込むのか?
中所得国のワナに 入るのではないか?
人民元の通貨が 安くなっている現状で
人民元の価値安定に 政府は動くと
人民元を買いささえて アメリカの国債などの外貨準備高を切り崩す。
それは、人民元が 海外に流出しないために必要である。
しかし、金融緩和措置をしないと 産業は育たない。
→不透明な中国経済の見通し。
その矛盾に 財政政策のジレンマがある。
人民元を安くすることで。国内の過剰在庫をダンピング輸出する。
アメリカの『新関税法』にオバマはサインした。
意図的な人民元安政策をとると アメリカを刺激する。
アメリカは 保護貿易的な政策に移動しつつある。
1つ目は「変動相場制の採用により、対外開放路線へ」
(安定成長シナリオ、名目5%程度の成長)、
2つ目は「「中所得国の罠」による長期停滞」
(低成長シナリオ、名目1〜2%程度の成長)、
3つ目は「統制経済の強化と対外強硬路線」
(対外戦争の可能性が浮上し経済成長率を語る意味がなくなる)。
筆者の主観的な見方としてそれぞれが起こる確率は
1つ目のシナリオが40%、2つ目のシナリオが55%、3つ目のシナリオが5%(158p)。
今後の中国の展開として、
人民元の変動相場制とすることで、市場開放をする。
会社の会計制度を 国際基準とする。
習近平は かくも 官僚の腐敗追及に チカラをそそぐのか?
どのような 思想が 背景にあるのか?
儒教と法家の2重的思考が これを支える。
この安達誠司という人は、中国経済をフレームの枠で
冷静に理解しようとしていることに 共感が持てる。
今の中国がどこへ向かうのか がシャープに見えて
面白い論調だった。 -
購入済み
社会人の教養を磨ける良書である
アベノミクスの効用を非常に分かり易く書かれている。左派系マスコミや野党議員の感情的な反対論をデータとロジックで見事撥ね付けている。勉強になった一冊であった。
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Posted by ブクログ
ユーロ危機の本質はEMS時代に埋め込まれていた
EMSでは参加国の為替相場ごとに中心相場を決め、為替介入を行い変動幅を2.25%以内に押さえていた。
しかし固定相場を維持するためには各国の経済状態に合わせた独自の金融政策を実施できず、1979-1992の間に中心レートの変更や離脱が発生している。
ユーロ危機の本質はユーロ導入にもかかわらず、不均衡がいっこうに是正されなかったこと。
ユーロ導入により、1)貿易収支と財政収支の収斂は起きなかった、2)経済格差は改善されなかった、しかし、3)長期金利は低下し収斂した。ユーロ導入の理念である1)、2)の格差改善がなされると考え、経済発展の遅れている南欧に投資が集まった。しかし、産業の乏しい南欧は不動産バブルが発生し、収めるための金融引き締めで不況になった。南欧諸国は独自の金融政策を実施出来ず、不況が長引いている。経済状況のよい国からの補助金で成り立っているが、ドイツの発展のために使われるべき資金が回らないのだから早晩発展が遅くなる。
金融引き締めはデフレを誘発し、一時的な通貨高になる。金融引き締めは通貨量の現象であり、希少性により通貨高になる、実効金利が下がることにより通貨が相対的に強くなる等の理由である。バブル後の日本、リーマンショック後のアメリカで発生している。
欧州での金融引き締めは通貨高、輸出産業の低迷を誘発する可能性が高い。
ユーロ圏は単一の財政政策しかとることが出来ない。南欧の放漫財政に対する懲罰的な考え方から、積極財政に舵を切るに現状の理解と政治判断が必要。しばらく時間がかかるだろう。
ユーロ圏の景気を占うにはECBの金利を見る。
ユーロ圏の危機は銀行の融資先である南米やアジアに波及する可能性が高い。
日本は緩やかなインフレ状態を作り出し、円安を誘導し、税収を確保してから財政改革に取り組むべき。いんふれに関しては、オイルショックの収入増加なしのものを念頭に反対者が多いが、金を回して緩やかなインフレを作るのは別。
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メモ
財政危機は財政赤字の残高がその国の経済力の規模を大きく越えて返済可能性が疑問視され、長期金利が上昇することにより起こる
不均衡の是正には雇用制度や社会保障制度の統一まで必要。労働規制の強さと経済力は反比例の関係にある。
EMSの頃は各国の財政政策があったが、ユーロ導入後は長年なにもないので対応が出来ない。 -
Posted by ブクログ
本書は2012年に顕著となった「ユーロ危機」を歴史的史実と経済学的なロジックによって明解に分析したものである。
そもそもなぜユーロ危機が発生したのか。それを説明するにはEU成立以前の歴史を踏まえる必要があると筆者は主張する。まずはEUの土台となった欧州経済共同体(EEC)である。EECにはEMSという加盟国間の為替レート変動を一定に抑えることで、これらの国同士の取引における為替変動によるロスを最小限に抑えるために作られた制度があった。言うまでもないが、この発想は現在のユーロ貨幣と欧州中央銀行という「一つの中央銀行、一つの貨幣」という考えの土台になっているものである。
このように、為替変動の影響を抑え込むために作られたEMSは期待しうる効果を発揮したかといえば、そうではなかった。それどころか、EMSは欧州の経済に大きなダメージを与えたのである。本来変動相場制によって作られる為替レートに対して、EMSによる為替レートが他国通貨に対して高い場合、これは円高となり、輸出産業に大きなダメージを与えるとともに、貿易赤字が拡大する。この影響による自国産業の衰退を防ぐために、ケインズ的な公共事業政策によって需要を創出する必要があるが、これは即ち財政赤時を拡大することに繋がる。つまり、EMSの為替レートが本来的に間違っている場合、財政赤字と貿易赤字が両立する「双子の赤字」が成立する。筆者によれば、このようなEMSの為替レートの本来的な間違いにより、やがて通貨高にある国は頻繁に為替レートを変更せざるをえなくなり、このような国は通貨危機に見舞われたのであった。
EMSの失敗を踏まえて成立したのがユーロの経済制度である。既に述べたようにこの制度は「一つの通貨、一つの中央銀行」という言葉に集約されるものだが、これはEMSが加盟国間の通貨高・安によって崩壊したことを踏まえたものであった。つまり、通貨が一つであれば通貨問題はないということである。一方で重要なことは、中央銀行が一つになったことで、加盟国が独自に金融政策による通貨安を作ることができなくなったということであった。
では、ユーロは成功したのか。その答えは現状を見ると分かるだろう。加盟国の思惑は、経済システムの統一により所得が高い国と低い国が平準化され、最適な経済水準に収斂するということであった。しかし、実際に変動したのはギリシャ・スペインなどの慢性的財政赤時国における国債の金利低下であった。これは財政赤時を減少させ、国内経済を活発化させた。加えて、それらの国では過剰資本が不動産などに向かい、資産バブルを形成させた。
過剰に加熱した経済を冷ますためには資本の引き上げを行う必要がある。中央銀行であるECBは金融引き締め政策を行い、バブルは崩壊した。バブルが崩壊した国々は不良債券を抱えることになり、それによって財政赤字はどんどん拡大していくが、ユーロ経済制度の縛りによって、独自の金融政策をとることができない。各国は財政政策を推進することはできるが、外貨準備高がなくなり、国債の償還ができなくなれば、当然その国はデフォルトするしかない。筆者によればこれがユーロ危機の本質である。つまり、ユーロ経済制度という強力な縛りをかけたがゆえに財政赤字という問題が表面化しているのであり、財政赤字をユーロ危機の原因とするのは適切ではない。
このような一連の流れをわかりやすく解説しており、本書の価値は非常に高いと考える。 -
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「第1章 為替とは何か?」「第2章 円高・円安とは何か?」はきわめて常識的な知識の確認。まったく経済の知識がない人でもわかりやすく読めるかと思う。また第3章はちまたに垂れ流されている俗説を痛烈に批判。「第4章 為替レートはどのように動くのか?」「第5章 為替レートは何が動かすのか?」は為替レートの変動について、修正ソロスチャート、予想インフレ率などのグラフを用いて説得的に持論を展開。そして、最後の「第6章 円高の正体、そしてデフレの“真の”正体」において、日銀のさらなる金融緩和の必要性が示される。
安達氏の切れ味鋭い論法はいつもながらだが、誰もが理解できる平易な文章で読みやすい。万人にオススメしたい。
ところで、昨日、勤務先の組合ニュースが来年の春闘目標として、ベアアップを目指す旨が書かれていた。組合だから、ベアのアップを要求するのは良いとして、その理屈として「賃金が上がれば消費が増え、景気の回復にもつながる」云々の記述があった。……orz
是非、本書を熟読し、正しい理論武装でもって、「敵」は誰かを見定めていただきたいと切に願った次第である。 -
Posted by ブクログ
日本経済の現状分析を目的としており主張に華やかさはない。
セルサイドのエコノミスト・レポートを読んでいるような感じだが、実際著者はエコノミストです。
それにしては長いかなーと思いつつ、経済学のアカデミックの世界での潮流なども知れるお得な一冊。
2019年8~9月あたりの足下での分析なので、金融庁の2000万円問題など、数ヶ月経っただけの現在(2019年11月)でも、誰も話題にもしておらず古くなっているものもあるが、そういったものも含めて、季刊のエコノミスト・レポートのように読みこなせば良さそう。
昔、ソロスファンドの下請けをしていた、とか、『国家は破綻する』の検証結果への疑義は、マサチューセッツ大学(≠MIT)という二流の大学の院生によるものだったから、真面目に取り合ってもらえなかったんじゃないか、とか、あまり表だっては出てこなさそうな話が面白かった。
消費税の「延期」というだけでは、将来の増税への事前の対処から家計は財布の紐を締めがちで、かえって消費意欲を減退させたかも、という指摘はなるほどと思う。
だからこそ、次の増税を行うならその条件をはっきりと言明し、コミットするべき、という主張はそのとおりなのですが、任期の終わりが見えている安倍さんにそこまでは求められないか、とも感じる。
それにしても、段階的に消費税率を上げることを法律に明記までしてしまった三党合意なんてものは、つくづく罪だったのですね。
そういったあたりも含めての民主党政権への不満は、各所の行間からも十分に感じられ、著者の真面目な人柄が伺える。
税制には国家の思想が反映されるもので、それを踏まえれば世界的な法人減税レースにも勝ちつつ、多少の格差は是として直間比率を是正する、という方針のもとでの消費増税は有り得べき姿との著者の見解に同意したい。
個人的にはもう少し資産課税は強くても良いかな、とは思いますが。
というより、抜け道をもう少し塞げないものか。
相続税を減らすためにアパートを建てましょう、で、質の低い住宅が需給バランスも無視して建ちまくり、儲かるのはレオパレスだけ、みたいなの誰も幸せにしてないような。
それで苦しむのは地主だけだから別に問題なく、それによって地主の富が移転するなら、という見方もありますが、そんな経路を経ないでも世の中が潤う仕組みは他に考えられるでしょう、と。
もし考えられなくても、寄付税制を充実させるだけでも違うんじゃなかろうか、とか。
それから、20代・30代の消費活動が住宅ローンを抱えているか否かで消費活動がまるっきり違うというデータが本書でも示されているが、住宅投資がGDPに一番効くからそこを刺激する、という施策自体に問題が出てきているような気がする。
そもそも、正規社員に新築戸建てを購入させるための住宅ローン減税とか、地方政府が率先して債券を発行し、鬼城を建設してGDP嵩上げを図っている某国と、主体が違うだけであまり構造は変わらないような気が。
とまあ、いろいろと考える材料をくれる良書。